NHKBSプレミアム「2K版いまよみがえる伝説の名演奏・名舞台 ベームのモーツァルト」 カール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 モーツァルト 交響曲第29番、第40番&第41番「ジュピター」
2021年4月6日
録画しておいた、NHKBSプレミアム「2K版いまよみがえる伝説の名演奏・名舞台 ベームのモーツァルト」を視聴。
カール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、モーツァルトの交響曲第29番、第40番、第41番「ジュピター」が演奏される。
20世紀を代表する名指揮者の一人であるカール・ベーム。晩年には日本でも大人気だったが、今現在は往事に比べると知名度を落とした感もある。
ベームは特にモーツァルトの名演奏で知られ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と交響曲全集も作成している。。モーツァルトのスペシャリストは、ブルーノ・ワルターからベームへと受け継がれたが、その後その伝統は絶えてしまっている。サー・チャールズ・マッケラスやアダム・フィッシャーのように交響曲全集を作成した指揮者もいるが、彼らは「モーツァルトも得意な指揮者」であって、十八番としているレパートリーは他にある(マッケラスならヤナーチェク、アダム・フィッシャーはハイドンやバルトークなど)。
近年はピリオド・スタイルによる刺激的なモーツァルト演奏が盛んになっているが、ベームとウィーン・フィルはそれとは対照的なロマンティックで音色の美しさを生かしたモーツァルトを奏でている。今となっては「生温い」と感じられないでもないが、こうしたスタイルによるモーツァルトにも良さはある。ベームのテンポは遅めで、モーツァルトの旋律のみならず構造の美点も明らかにしていく。指揮姿も派手ではないが安定していて、指示も分かりやすい。
交響曲第40番の第1楽章はゆったりとしたテンポであり、昨今の演奏で表される焦燥感は出ていないが、惻々とした趣の表現には優れたものがある。
今後は、ベームのようなスタイルのモーツァルト演奏はおそらく出てこないと思われるが、一時代を築いたモーツァルト演奏の記録として価値は大きい。勿論、ベームのような落ち着きの中から滲み出てくる悲哀や輝かしさを好む聴衆は今後も出てくるはずで、死去からすでに30年以上が経過しているが、新たなるファンも獲得してくことになると思われる。
「大学教授のような」と形容される温厚そうな風貌で、晩年は日本で「ベーム旋風」が起こったほどの人気指揮者であったが、性格的にはどちらかというと残忍で、ウィーン・フィルの楽団員にも嫌う人は多かったされる。若い奏者をいじめるという悪癖もあったそうだ。だがそれでもオーケストラを纏める手腕と表現力に長けたベームは、ウィーン・フィルのメンバーからも「性格はあれだけど、腕が良いから」と認められており、たびたび指揮台に上がった。
故人ということもあり、生前の性格については問うても仕方ないだろう。今は彼が残した演奏に耳を澄ますだけである。
| 固定リンク | 0
コメント