楽興の時(42) 「テラの音 Vol.30」 Duo Felicello(デュオ・フェリーチェロ)デビューライブ
2021年7月2日 真宗大谷派小野山浄慶寺にて
午後7時から、京都御苑の近くにある真宗大谷派小野山浄慶(じょうきょう)寺で、「テラの音 vol.30」を聴く。浄慶寺で「テラの音(ね)」が開催されるのは、1年ぶりとなる。コロナ禍に加えて、共同主宰である牧野貴佐栄の体調面での問題もあり、なかなか上演が出来ないでいた「テラの音」であるが、次回は10月にやはり浄慶寺で行われることが決まっている。
今回は、チェロデュオであるDuo Felicello(デュオ・フェリーチェロ)の出演。メンバーは、三井菜奈生と徳安芽里。実は今回がデビュー公演になるという。
三井菜奈生は、香川県出身。4歳でピアノ、8歳でチェロを始め、12歳から高校卒業まで、かがわジュニアニューフィルハーモニックオーケストラに所属。第20回札幌リスト音楽院セミナーでは、名チェリストとして知られるミクローシュ・ペレーニのレッスンを受けている。大阪教育大学教育学部教養学科芸術専攻音楽コース卒業。
徳安芽里は、奈良県出身。浄土真宗本願寺派の大学である相愛大学音楽学部を卒業。桐朋オーケストラ・アカデミー研修課程を修了している。第8回全日本芸術コンクール大学生部門で奨励賞を受賞。
曲目は、J・S・バッハの「G線上のアリア」(管弦楽組曲第3番より“エア”)、ボッケリーニの2本のチェロのためのソナタ、「日本の四季の歌メドレー」、クンマーの「ヘンデルの主題による変奏曲」、ドッツァーの「モーツァルトの主題による変奏曲」、モーツァルトの「鏡のカノン」、バリエールの2本のチェロのためのソナタ ト長調。
見慣れぬ名前の作曲家も多いが、多くはチェリスト兼作曲家だった人のようで、チェロのための練習曲なども書いており、チェロを習っている人にとってはお馴染みの作曲家のようである。
通常の「テラの音」は二部制で、間に住職による法話が入るが、今回は時短にする必要があるということで、最初に浄慶寺の中島浩彰住職による法話があり、来週は七夕ということで「五節句」の話や、仏教が「私」を巡る宗教であるということなどが語られる。
おなじみの「G線上のアリア」でスタート。
「メヌエット」でお馴染みのボッケリーニであるが、それ以外の曲は余り知られていなかったりする。生前は作曲家としてよりもチェロ奏者として有名だったようで、2本のチェロのためのソナタは、チェロデュオの定番とされているようである。スケール豊かで、伸びやかな歌が特徴。
「日本の四季の歌メドレー」は、季節を題材にした日本の童謡など12曲からなるメドレー。春に始まり冬に終わる。演奏されるのは、「春が来た」「花の街」「早春賦」「背比べ」「茶摘み」「紅葉」「里の秋」「手袋の歌」「雪」などで、断片のみが演奏される曲もある。
クンマーの「ヘンデルの主題による変奏曲」。ここで用いられているヘンデルの主題とは、「勝利の歌」としても知られる「見よ、勇者は帰る」である。
トークは主に徳安が受け持っており、「運動会などの表彰式で流れていた曲」と説明していた。
ドッツァーの「モーツァルトの主題による変奏曲」で用いられる「モーツァルトの主題」というのは、歌劇「ドン・ジョヴァンニ」のアリア“お手をどうぞ”のメロディーである。
“お手をどうぞ”の主題による変奏曲は、ショパンなども作曲しているが、チェロは「人間の声に最も近い楽器」と呼ばれることも多く、チェロのことを知り尽くし、教則本も書いたドッツァーが、ドン・ジョヴァンニの歌うアリアを基に書いた変奏曲も魅力的である。
モーツァルトの「鏡のカノン」は、2人の演奏家が1枚の楽譜を上からと下から、同時に弾いて演奏が成り立つという楽曲である。J・S・バッハがこうした作品を多く残したが、モーツァルトも作曲しているようだ。ただこの作品には偽作説があるらしい。
バリエールの2本のチェロのためのソナタ ト長調。バリエールはフランスの作曲家兼チェリストで、生前は名声を博したようだが、わずか40歳で他界している。
この曲もチェリストの間では人気があるようで、典雅な第1楽長、憂いを帯びた第2楽章、華やかな第3楽章のいずれもが魅力的な曲想を持っている。
アンコールとして、ベートーヴェンの「トルコ行進曲」より冒頭部分が演奏された。
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