コンサートの記(740) 上方西洋古楽演奏会シリーズ2021夏「~フランス宮廷バレエと劇音楽~ コメディ・バレへの憧れⅡ」
2021年8月14日 大阪・中之島の大阪市中央公会堂中集会室にて
午後5時から、中之島にある大阪市中央公会堂中集会室で上方西洋古楽演奏会シリーズ2021夏「~フランス宮廷バレエと劇音楽~ コメディ・バレへの憧れⅡ」というコンサートを聴く
京都市左京区下鴨の楽器店兼音楽教室・月光堂の講師でもあるフルート・リコーダー奏者の森本英希(日本テレマン教会所属)が音楽監督を務める演奏会で、タイトル通りブルボン王朝最盛期のフランスの音楽家達が作曲したバレエと劇音楽が演奏される。
曲目は、シャンパンティエのコメディ・バレ「病は気から」より、リュリのコメディ・バレ「町人貴族(「超人気俗」と誤変換された)」より、ラモーの歌劇「ピグマリオン」より序曲、ラモーの歌劇「イポリトとアリシ」より、歌劇「優雅なインドの国々」より、歌劇「ピグマリオン」より。
前半がバレ(バレエ)、後半が歌劇の曲で構成されているが、前半にもアリアは歌われ、後半でもバレエは踊られる。今でこそバレエとオペラは別分野となっているが、元々は区別なく上演されており、歌あり踊りありが普通の姿であった。
演奏は、「コメディ・バレへの憧れ」特別アンサンブル。ピリオド楽器使用である。音楽監督の森本英希が曲によって、指揮、リコーダー弾き振り、フルート弾き振りを行い、「町人貴族」の“トルコ儀式の行進曲”では太鼓も叩く。
参加者は、戸田めぐみ・赤坂放笛(オーボエ)、中山裕一・大谷史子(ヴァイオリン)、中川敦史(ヴィオラ)、上田康雄(チェロ。エンドピンなし)、池内修二(ヴィオローネ=コントラバスの先祖のようなもの)、二口晴一(ファゴット)、吉竹百合子(チェンバロ)、樋口裕子・有門奈緒子(バロック・ダンス)、進元一美(ソプラノ)、眞木喜親(テノール)。
オーボエとリコーダーを吹く赤坂放笛は、このコンサートを主催する「そう楽舎」の主宰でもあるが、1988年から14年間、狂言を修行したこともあるそうで、前半は曲の演奏の前に、「この辺りの者でござる」と狂言の口調で自己紹介をして、「疫病退散」のために演奏を行うことを宣言したり、「町人貴族」のあらすじを紹介したりする(ここでは森本英希も参加)。
歌手やダンサーは当時の衣装に近いものを身に纏い、重要文化財に指定されている大阪市中央公会堂中集会室の内装も相まって、古雅にして絢爛豪華な世界が繰り広げられる。
マルカントワーヌ・シャンパンティエもジャン=バティスト・リュリも、フランスのバロック以前の作曲家としてはかなり有名な部類に入るが、リュリは、「床を杖で突いて指揮している最中に誤って自分の足を突き刺してしまい、それが元で亡くなった作曲家」としてのみ有名で作曲作品が知られている訳ではない。ただ、共に典雅で良い音楽を書いている。
ジャン=フィリップ・ラモーは、シャンパンティエやリュリより時代が下ったバロック期の作曲家であり、フランスのみならず、この時代の最重要作曲家の一人に数えても良いと思われる。音楽愛好家以外にも名前は知れ渡っていたようで、ラモーの死の約20年後に思想家のディドロが『ラモーの甥』という小説を書いて当時のベストセラーとなったりしている。ラモー自身も風変わりな経歴を持った人物で、若い頃は教会のオルガニストや音楽理論を専門とする学者として活躍しており、40歳を越えてから本格的に作曲家に転身。フランス楽壇の頂点まで上り詰めることになる。
ラモーはそれまでの作曲家とは違い、明らかに自身の個性を作品に刻印している。そのため部分部分ではあるが、モーツァルトの先達のように聞こえたり、凝った技巧が展開されるなど、我々が「クラシック音楽」としてイメージする像に近くなっている。フランスのバロック音楽入門には、やはりラモーの楽曲が最適であろう。
アンコール演奏として、リュリのコメディ・バレ「町人貴族」より“イタリア人の二重唱”が再度演奏され、続いてプログラムノートには載っているが本編では演奏されなかった、同じく「町人貴族」より“道化のシャコンヌ”が、樋口裕子と有門奈緒子のバロック・ダンス付で演奏された。
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