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2021年10月 1日 (金)

コンサートの記(746) クリスティアン・アルミンク指揮 京都市交響楽団第660回定期演奏会

2021年9月25日 京都コンサートホールにて

午後2時30分から、京都コンサートホールで京都市交響楽団の第660回定期演奏会を聴く。今日の指揮者は、新日本フィルハーモニー交響楽団の音楽監督を務めたことで日本でもお馴染みとなったクリスティアン・アルミンク。第25回京都の秋音楽祭のプログラムの一つとしての公演である。

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ドイツ・グラモフォン・レーベルの社長の息子という恵まれた境遇に生まれたアルミンク。ウィーン国立音楽大学でレオポルド・ハーガーに学んだ後、小澤征爾のアシスタントとして研鑽に励み、小澤の手兵であるボストン交響楽団や新日本フィルを指揮。その後、新日フィルやベルギー王立リエージュ・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を務め、現在は広島交響楽団の首席客演指揮者として日本にも拠点を持ち続けている。

今日のコンサートマスターは、京都市交響楽団特別客演コンサートマスターの会田莉凡(りぼん)。フォアシュピーラーに泉原隆志。今日はチェロが舞台寄りとなるアメリカ式の現代配置での演奏である。
8月定期の際は、松本市で行われていたサイトウ・キネン・オーケストラの無観客配信演奏会に出演していた特別首席チェロ奏者の「チェロ康」こと山本裕康が今日は首席のポジションに陣取り、同じくサイトウ・キネン・オーケストラのメンバーとして出演していたソロ首席ヴィオラ奏者の店村眞積が今日は出演する。

オール・ワーグナー・プログラムで、「ジークフリート牧歌」と、ヘンク・デ・フリーヘル編曲による楽劇「ニーベルングの指輪」オーケストラル・アドヴェンチャーが演奏される。フルート首席の上野博昭、ホルン首席の垣本昌芳らは「ニーベルングの指輪」のみの出演である。


午後2時頃から、アルミンクによるプレトークがある。通訳は小松みゆき。英語でのスピーチである。
ピンク色のカッターシャツで現れたアルミンク。「ニーベルングの指輪」を中心とした解説となる。「ニーベルングの指輪」のハイライト作品である今日の作品を振るに当たって、YouTubeで様々な映像を見たが、その中の「3分で分かる『ニーベルングの指輪』」というラジオ放送を元にした映像を見るも、「何一つ分からなかった」という笑い話に始まり、「ニーベルングの指輪」が、ワーグナーが35歳の時に作曲を始めた作品で、完成までに26年を費やしたこと、登場人物が多く内容が複雑であること(アルミンクは、「めちゃ難しい」と日本語で語る)などを語り、ライトモチーフが重要な役割を果たしていると説明する。
そんな込み入った内容の「ニーベルングの指輪」であるが、主題は、権力者との向き合い方であるとアルミンクは述べる。指輪は権力の象徴であり、それとの関わりが作品の根底にある。
楽劇「ニーベルングの指輪」は上演に4日、計16時間ほどを要するが、初めて「指輪」を聴くには、楽劇全編ではなくこうしたハイライト作品の方が向いているかも知れないとも語っていた。


今日明日と公演があるが、定期会員に当たる京響友の会の募集が停止中。更に新型コロナ感染者数が減ってはいるが、京都府の病床数確保が必ずしも十分とはいえないということもあって、入りはかなり悪い。


「ジークフリート牧歌」。リリカルにして透明感のある音をアルミンクは京響から引き出す。
京響のアンサンブルは緻密で表情はたおやか。理想的な響きである。


楽劇「ニーベルングの指輪」オーケストラル・アドヴェンチャー。演奏されるのは、「ラインの黄金」より前奏曲、ラインの黄金、ニーベルハイム、ヴァルハラ。「ワルキューレ」よりワルキューレたち(ワルキューレの騎行)、魔の炎。「ジークフリート」より森のささやき、ジークフリートの英雄的行為、ブリュンヒルデの目覚め。「神々の黄昏」よりジークフリートとブリュンヒルデ、ジークフリートのラインへの旅、ジークフリートの死、葬送行進曲(ジークフリートの葬送行進曲)、ブリュンヒルデの自己犠牲の計14曲である。


アルミンクは、京響から輝かしい音を引き出し、京響も時には痛切な音色でアルミンクの指揮に応え、ワーグナーの音楽に切り込む。
重厚感、スケールの豊かさ、瑞々しさなどいずれも印象的。ワーグナーの音楽の本質の一つであるドロドロとした部分や禍々しさは余り感じられない健康的な演奏であるが、オーケストラコンサートのための作品と考えた場合は、こうした一種の爽快感を伴う演奏も説得力があるように思う。
ニーベルハイムの、金属がハンマーで叩かれる場面では、打楽器奏者の他にトランペット首席のハラルド・ナエスも参加して鉄床を叩き、立体的な音響を生み出していた。

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