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2021年10月29日 (金)

観劇感想精選(415) 安部公房原作 シス・カンパニー公演「友達」

2021年10月4日 大阪・西梅田のサンケイホールブリーゼにて観劇

午後6時から、西梅田のサンケイホールブリーズで、シス・カンパニー公演「友達」を観る。作:安部公房、演出・上演台本:加藤拓也。出演:浅野和之、山崎一、キムラ緑子、林遣都、岩男海史、大窪人衛、富山えり子、有村架純、伊原六花(いはら・りっか)、鈴木浩介、西尾まり、内藤裕志(ないとう・ひろし)、長友郁真、手塚祐介、鷲尾真知子。なかなかの豪華キャストである。

安部公房の「友達」は、自身の短編小説「闖入者」を基にした戯曲で、1967年に青年座で初演されている。三島由紀夫が絶賛する一方で、不条理演劇の第一人者であった別役実は「文学性と演劇性」について疑問を呈していたりする。
ある男のところに突然、「家族」を名乗る人々が押しかけるという内容で不気味でもあり、正直、観ていて気持ちのよくなる舞台ではない。

安部公房の原作は、基本ラインとしては「連帯に押しつぶされる『個』」を描いている。その背後には広がりつつあった都市と地方の文化的距離(何度も繰り返し歌われるテーマソング「友達のブルース」の歌い出しが“夜の都会は”であることは象徴的である)や皆が同じ方向を向いていた高度成長期の中で埋もれていく「個人」の問題などが横たわっているのだが、加藤拓也は主題をインターネット時代の「無自覚の暴力」に変更し、「闖入者」で描かれた部分を多く取り入れている。ただそれが期せずして加藤が意図したものとは異なる「友達」の一面を浮かび上がらせることになった。

主人公の男(鈴木浩介が演じている。眼鏡がトレードマークの鈴木だが、今回は眼鏡なしでの出演である)は、独身だが婚約者(西尾まりが演じている)もおり、特に不自由なく暮らしていたのだが、ある日突然、9人の「家族」が押しかけ、男の家で勝手に生活を始めたばかりか、男の役割=仕事も多数決で決めてしまう。多数決といっても押しかけた家族9人が全員賛成で、反対するのは部屋の主である男だけということで、「家族」達のわがままが全て通ってしまう。朝食を作ったりといった「家族」のための仕事を押しつけられた男は仕事を辞めざるを得なくなり、婚約者とも別れる。そして元となった婚約者は「家族」の長男(林遣都)と付き合うようになる。そんな目に遭いながらも男が「家族」を受け入れていたのは、思わせぶりな態度を取る次女(有村架純)に惚れていたからでもあり……。

「孤独」はいけないことと言って押し寄せ、「連帯」を押しつけてくる「家族」のやり口の陰湿さには見ていて嫌悪を感じるのだが、実は男と「家族」とは合わせ鏡のような存在にも見えてくる。「家族」のうち、長男は探偵として働いたことがあり、次男(岩男海史)も警察学校を出ているようなのだが、今は共に職についておらず、父親(山崎一)は「犬に言葉を教える研究家」であるが、生活のための糧は得られていない。ということで、寄生主を探して彷徨っているという根無し草のような存在である。なお、男と「家族」以外の登場人物、婚約者、警官(長友郁真と手塚祐介)、アパートの管理者(鷲尾真知子)は腰に縄を巻いており、世界と結びついていることが分かる。男と「家族」にはそれがなく、世界を当て所なく彷徨う存在であることが暗示されている。

「家族」の人々は、ありのままの自分を受け入れてくれる誰かを求めているが、そんな人も場所も見つかる訳はない。集団ではあるが、あるいは集団であるが故に彼らは怖ろしく孤独な存在だ。そんな孤独な集団を引き受けることになった男は、次女の存在を欲しており、得られないことで元々意識していなかった孤独を深めていく。欲するがために受け入れ、依存し、互いが孤独を深めていくという不幸な関係は、実際のこの世界でもありふれた構図である。
結果として、こうした事態が実を結ぶことはなく、孤独な人々はいつまでも彷徨い続けることになる。


鈴木浩介と西尾まりは、私と同じ1974年生まれで、婚約者同士を演じるのにぴったりの関係である。実際には鈴木浩介は、一回り下の大塚千弘と結婚しているのであるが。

有村架純を舞台で観るのは初めてだが(7年ぶりの舞台となるらしい)、一目見て有村藍里と姉妹であることが実感される。見た目も似ているが、漂わせている雰囲気が同じである。

有村架純は、兵庫県出身だが、そのためにこちらの人は親しみを抱いているのか、終演後、感想などを語り合う人々はみな「架純ちゃん」と「ちゃん」付けで呼んでいた。

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