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2021年11月 6日 (土)

観劇感想精選(416) ブルーエゴナク 「眺め」

2021年10月9日 東九条のTHEATRE E9 KYOTOにて観劇

午後7時から、THEATRE E9 KYOTOで、ブルーエゴナクの「眺め」を観る。作・演出:穴迫信一。ブルーエゴナクは、福岡県北九州市を本拠地とする劇団である。出演:木之瀬雅貴、小関鈴音、野村明里、高山実花、平島恵璃香ほか。声のみの出演者が数名いる。

大きな観覧車のある街を舞台に、時間を前後する形で物語は進んでいく。
「過去編」と「未来編」に分かれているが、一族の四世代に渡る歴史と恋模様、将来の破滅または救済が描かれる。

背後にスクリーンがあり、ここに文字や映像が投影される。

日差し(木之瀬雅貴)と森ちゃん(小関鈴音)は、18歳。仲は良いのだが、「無視するゲーム」を行ったことから互いの関係にひびが入る。10年後、28歳になった日差しからのコメント(舞台の手前側にスタンドマイクが設置されており、ここでコメントが読まれる)で、森ちゃんとは別れてしまったことが確認出来るのだが、その後、二人は結婚し、女の子(名前は春望(はるの)。平島恵璃香)が生まれていることが分かる。
クモがコメントする場面(声:菅一馬)があり、これはノミ(野村明里)という女性の名前にも掛かっている可能性があるのだが、コメントに「クモが将来救済をもたらすことがある」というものもあり、おそらく芥川龍之介の童話「蜘蛛の糸」に掛かっているのだと思われる。

途中、タジマせかい(高山実花)という人物が登場し、子どもの頃に地元で行われた展覧会に有名な阿修羅像がやって来たこと、せかいが母親から「阿修羅像に似ている」と言われたことが語られる。その後、中学校の時に同級生のミカコが、アミノやヒガシタニという男子(これらの苗字も仏教絡みだろうか?)から「左側の阿修羅像に似ている」と言われるという話があり、せかいはミカコから「真ん中の阿修羅像に似ている」と言われる。
教科書にも載っている有名な阿修羅像ということで、興福寺阿修羅像のことだと思われ、この辺りが仏教的な救済に繋がっていそうだが、それは明示されることはない。


ところどころ日本語が妙なところがあったり、展開が複雑な割にそう特別なことが起こっている訳でもない(一応、「ディザスター(災害)」があって世界が危機に瀕していることにはなっているようだが)という難点があるが、あからさまに描かれない男女の物語と見た場合、なかなか愛らしい作品に仕上がっていたと思う。
なにはともあれ子どもという形で成就しているということは、親を始め多くの人の願いを叶えているという一つの希望である。少なくとも森ちゃんは父親の一番の望みを我が子にまで伝えている。

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