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2021年12月の9件の記事

2021年12月31日 (金)

観劇感想精選(418) 「當る寅歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」第3部 「雁のたより」「蜘蛛絲梓弦」 令和三年十二月十日

2021年12月10日 京都四條南座にて観劇

午後6時から、京都四條南座で、「當る寅歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」第3部を観る。今年も昨年同様、コロナ対策の密集緩和のため、顔見世は3部制で行われる。また、人間国宝であった四代目坂田藤十郎三回忌追善のため、第1部の「晒三番叟」と「曾根崎心中」が追善狂言と銘打たれた他、全編に渡って藤十郎が生前に得意としていた演目が並ぶ。1階では坂田藤十郎の写真展も開催されていた。

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第3部の演目は、「雁(かり)のたより」と「蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)」


「雁のたより」は、3年前の顔見世で、坂田藤十郎の息子である四代目中村鴈治郎が主役の三二五郎七を演じていたが、今回は十代目松本幸四郎が五郎七役を務める。
「雁のたより」は、上方歌舞伎の代表的演目で、昭和以降で五郎七を演じてきたのは、十三代目片岡仁左衛門、二代目中村扇雀=三代目中村鴈治郎=四代目坂田藤十郎、五代目中村翫雀=四代目中村鴈治郎と、全て上方系の役者であり、江戸の歌舞伎俳優が主役を務めるのは今回が初めてとなる。

このところ、上方演目への出演が目立つ十代目松本幸四郎。先代が「ザ・立役」という人だっただけに、同じ土俵では太刀打ち出来ないが、上方狂言への適性は明らかで、今後も父親とは別の分野での活躍も期待される。

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出演は、松本幸四郎、片岡愛之助、上村吉弥、片岡千壽、板東竹三郎、片岡進之介、中村錦之助ほか。

今回は、片岡仁左衛門の監修による松嶋屋型での上演。鴈治郎がやった成駒家型の上演とは内容が大きく異なる。

見た目が優男ということもあり、上方演目の主役にイメージがピタリとはまる幸四郎。だが、上方俳優の愛之助などとは動きが異なることに気付く。特に腕の動きなどは速く鋭く、愛之助のたおやかな手つきとは好対照で、幸四郎がやはり江戸の俳優であることがよく分かる。
江戸の俳優として初めて五郎七を演じることになった幸四郎。初役ということで、十分満足の行く出来とまでは行かなかったが、佇まいが良く、滑稽さの表出や動きのキレなどにはやはり光るものがある。「華」に関してはやはり上方芝居に慣れている愛之助の方が上のような気がしたが、初役であり、今後の伸びも期待される。


「蜘蛛絲梓弦」。愛之助が五変化を勤める。出演は愛之助の他に、大谷廣太郎、中村種之助、松本幸四郎ら。

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京都では壬生狂言の演目としても知られる「土蜘蛛」伝説を扱っており、源頼光の土蜘蛛退治に基づく演目であるが、妖怪などは古くから疫病と結びつけて考えられてきたため、今の世相に相応しい作品であると言える。
ちなみに壬生狂言の「土蜘蛛」で使われる蜘蛛の糸は、触ると厄除けになると言われているが、歌舞伎版でも同様なのかは分からない。

土蜘蛛というのは元々は大和朝廷にまつろわなかった豪族達の寓喩であり、葛城氏などが土蜘蛛に喩えられている。

源頼光(松本幸四郎)が原因不明の病に苦しんでおり、物の怪の仕業と見た頼光家臣の碓井貞光(大谷廣太郎)と坂田金時(中村種之助)が寝ずの番をしている。そこへ土蜘蛛(片岡愛之助)が小姓や太鼓持、座頭などに姿を変えて現れ、頼光とその家臣を幻惑していく。「羅生門の鬼」で知られる頼光四天王の一人、渡辺綱の話や鴻門の会の燓噲などの話も登場する。

華やかな演出が特徴的な演目であり、愛之助の達者ぶりも光る。

梓弦は、梓弓のことで、弓は「張る」ので「春」に掛かり、「歌舞伎界の正月」とも言われる南座での顔見世に相応しい。またコロナの冬を越えて春が来ることを祈念していると見ることも出来る。真意は分からないのだが、そう取ると梨園の意気のようなものが感じられる。

なお、今回の口上では、坂田藤十郎の屋号である「山城屋」が掛けられていたり、南座とコラボレーションを行った「鬼滅の刃」を思わせる一節が隠れていたりした。

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コンサートの記(755) ガエタノ・デスピノーサ指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団「第9シンフォニーの夕べ」2021

2021年12月29日 大阪・中之島のフェスティバルホールにて

午後5時から、大阪・中之島のフェスティバルホールで、大阪フィルハーモニー交響楽団「第9シンフォニーの夕べ」を聴く。昨年の「第9シンフォニーの夕べ」では、指揮台に立つ予定だったラルフ・ワイケルトがコロナ禍で来日不可となり、音楽監督の尾高忠明が代役を務めた。今年の「第9シンフォニーの夕べ」の指揮者にもワイケルトは再び指名されたが、オミクロン株の流行などによる外国人の入国規制強化によってまたも来日不可となり、入国規制が強化される前に来日して、日本滞在を続けているガエタノ・デスピノーサが代役として指揮台に立つことになった。なお、来年の大フィル「第9シンフォニーの夕べ」は尾高忠明の登壇が決まっており、ワイケルトの第九は流れてしまったようである


1978年生まれと、指揮者としてはまだ若いガエタノ・デスピノーサ。イタリア・パレルモに生まれ、2003年から2008年まで、名門・ドレスデン国立歌劇場のコンサートマスターを務めた、同時代にドレスレデン国立歌劇場の総監督であったファビオ・ルイージの影響を受けて指揮者に転向。2013年から2017年までミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団の首席客演指揮者を務めている。

独唱は、三宅理恵(ソプラノ)、清水華澄(メゾ・ソプラノ)、福井敬(テノール)、山下浩司(やました・こうじ。バリトン)。合唱は大阪フィルハーモニー合唱団。

今日のコンサートマスターは、須山暢大。フォアシュピーラーにはアシスタント・コンサートマスターの肩書きで客演の蓑田真理が入る。ドイツ式の現代配置での演奏だが、通常とは異なり、昨年同様ホルンが上手奥に位置し、通常ホルンが陣取ることが多い下手奥には打楽器群が入る。独唱者4人はステージ下手端に置かれた平台の上で歌うというスタイルである。


デスピノーサはフォルムを大切にするタイプのようで、先日聴いた広上淳一指揮京都市交響楽団の第九とは大きく異なり、古典的造形美の目立つスッキリとして見通しの良い演奏が行われる。
朝比奈隆時代に築かれた豊かな低弦の響き、俗に言う「大フィルサウンド」を特徴とする大阪フィルハーモニー交響楽団であるが、デスピノーサがイタリア人指揮者ということもあって音の重心は高め。通常のピラミッド型とは異なる摩天楼型に近いバランスでの演奏が行われる。大フィルならではの演奏とはやや異なるが、こうしたスタイルによる第九も耳に心地よい。
全編を通して軽やかな印象を受け、ラストなども軽快な足取りで楽園へと進んでいく人々の姿が目に見えるようであった。

大阪フィルハーモニー合唱団は、今年も「歌えるマスク」を付けての歌唱。ザ・シンフォニーホールでの大フィル第九では、指揮台に立つ予定だった井上道義が「歌えるマスク」での歌唱に反発して降板したが(井上さんはコロナでの音楽活動縮小やマスクを付けての歌唱に元々反対だった上に、「歌えるマスク」がKKKことクー・クラックス・クランに見えるということで、降板している。KKKは、白人至上主義暴力肯定団体で、映画「国民の創生」や、シャーロック・ホームズ・シリーズの「5つのオレンジの種」などに描かれている。現在も活動中であり、先日、公園で集会を開いて周囲の住民と揉み合いになった)、マスクを付けていても歌唱は充実。フェスティバルホールの響きも相俟って堂々たる歌声を響かせていた。

演奏終了後に照明が絞られ、福島章恭指揮によるキャンドルサービスでの「蛍の光」が歌われる。再三に渡るリモートワークを強いられるなど、去年以上に大変であった今年の様々な光景が脳裏をよぎった。

日本語詞の「蛍の光」は別れを歌ったものであり、寂しいが、第九同様に明日へと進む人々の幸せを願う内容であり、目の前に迫った来年への活力となるようにも感じられた。

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2021年12月30日 (木)

コンサートの記(754) 広上淳一指揮 京都市交響楽団特別演奏会「第九コンサート」2021

2021年12月26日 京都コンサートホールにて

午後2時30分から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団特別演奏会「第九コンサート」を聴く。指揮は、京都市交響楽団常任指揮者兼芸術顧問の広上淳一。

ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」がメインの曲目だが、その前に同じくベートーヴェンの序曲「レオノーレ」第3番が演奏される。

今日のコンサートマスターは京都市交響楽団特別客演コンサートマスターの会田莉凡(りぼん)。泉原隆志は降り番で、フォアシュピーラーは尾﨑平。ドイツ式現代配置での演奏で、管楽器の首席奏者はほぼ揃っている。

第九の独唱は、砂川涼子(ソプラノ)、谷口睦美(メゾ・ソプラノ)、ジョン・健・ヌッツォ(テノール)、甲斐栄次郎(バリトン)。合唱は京響コーラス。


序曲「レオノーレ」第3番。ベートーヴェンが書いた序曲の中では最も演奏される回数の多い楽曲だと思われるが、暗闇の中を手探りで進むような冒頭から、ティンパニが強打されて活気づく中間部、熱狂的なフィナーレなど、第九に通じるところのある構成を持っている。
広上と京響は生命力豊かで密度の濃い演奏を行う。トランペット首席のハラルド・ナエスがバンダ(一人でもバンダというのか不明だが)として、二階席裏のサイド通路とポディウムでの独奏を行った。


ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」。
第1楽章と第2楽章は、クッキリした輪郭が印象的なノリの良い演奏で、ピリオドを意識したテンポ設定とビブラートを抑えた弦楽の響きが特徴。時折きしみのようなものもあり、整ったフォルムの裏に荒ぶる魂が宿っているかのようで、バロックタイプでこそないが硬い音を出すティンパニが強打される。

第3楽章は、第1楽章と第2楽章とは対照的に遅めのテンポでスタート。途中からテンポが変わるが、旋律の美しさをじっくりと歌い上げており、第九が持つ多様性と多面性を浮かび上がらせる。最近では全ての楽章が速めのテンポで演奏されることが多い第九だが、こうした対比やメリハリを付けた演奏も魅力的である。

第4楽章は再びエッジの効いた演奏。京響コーラスはマスクを付け、一部の例外を除いて前後左右1席空けての歌唱で、やはり声量も合唱としても密度もコロナ前に比べると劣るが、かなり健闘しているように思えた。

広上は跳んだりはねたり、指揮棒を上げたり下げたりを繰り返すなど、いつもながらのユニークな指揮姿。また全編に渡ってティンパニを強打させるのが特徴である。
第九におけるティンパニは、ベートーヴェン自身のメタファーだという説を広上も語ったことがあるが、打楽器首席奏者の中山航介が豪快にして精密なティンパニの強打を繰り出し、ベートーヴェンの化身としてコロナと闘う全人類を鼓舞しているように聞こえた。

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2021年12月28日 (火)

細野晴臣デビュー50周年記念展「細野観光 1969-2021」@グランフロント大阪北館ナレッジキャピタルイベントラボ

2021年11月30日 グランフロント大阪北館ナレッジキャピタルイベントラボにて

グランフロント大阪北館ナレッジキャピタルイベントラボで、細野晴臣デビュー50周年記念展「細野観光 1969-2021」を観る。当日券も発売されているのだが、前売りで入った。

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1947年、東京に生まれ、現在に至るまで日本のミュージックシーンを牽引し続けている細野晴臣。彼の足跡を振り返ることは、日本のポピュラーミュージックの歴史を振り返ることに他ならない。

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まずは細野さんの歴史を辿る。1947年7月9日、東京都港区白金に生まれ、港区立白金小学校から港区立青山中学校に進む。出てくる地名が一々お洒落である。私立立教高校から私立立教大学社会学部に進学。立教大学のような誰でも知っているレベルの大学なら「私立」と表記しなくても分かるはずだが、細野さん自身がそう表記しているのだと思われる。一度、何かの本で細野さん自身が書いた履歴書のようなものを読んだことがあるのだが、そこには「私立立教大学」と書かれていた。

ベースを弾くイメージが強い細野晴臣であるが、最初に習った楽器はピアノで、8歳から習い始めている。発表会に出た時の細野晴臣少年の写真もあったが、ピアノの練習は余り好きではなかったようで、中学生の時にクリスマスプレゼントとしてギターを買って貰い、そこからギターの練習に夢中になる。1日に平均4~5時間弾いていたそうだ。

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16歳で初めてのバンドを結成。大学に入ると都内のあちこちで演奏を行い、松本隆や小坂忠と知り合ってエイプリルフールを結成。その後に、はっぴいえんどなど幾つかのバンドを経て1979年にYMOことイエローマジックオーケストラ(Yellow Magic Orchestra)を立ち上げる。サディスティック・ミカ・バンドのドラマーとしてすでに著名であった高橋幸宏、東京芸術大学大学院音響研究科(この音響研究科というのは、コンピュータ音楽など、当時最新鋭の電子音楽を研究する課程である)出身で、売れっ子スタジオミュージシャンであった坂本龍一と組んだこのバンドは、当初は全く売れなかったようだが、海外で最初に人気に火が付き、逆輸入という形で日本全国にも広まっていく。

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YMO時代に使用したシンセサイザーが展示されており、会場に流れる音楽もYMOのものが最も多いなど、細野のYMO時代はやはり特別なものであるが、YMOが散開した後は民族音楽やアンビエントミュージックの要素も取り入れた個性豊かな音楽を生み出すようになる。

1994年には、遊佐未森、甲田益也子(こうだ・みやこ)、小川美潮と、Love,Peace&Tranceを結成。ここでは細野はプロデューサーであり、細野が「シャーマン音楽家」と呼んでいた福澤諸(元々心臓が悪く、2002年に50歳で死去)が作曲を多く手掛けているが、このユニットが私が遊佐未森を本格的に知るきっかけを作っている。
当時流行っていたロハスを前面に出し、民族音楽とアンビエントの融合を行う面白い存在であったが、受けは必ずしも良くはなかったと記憶している。

その他にYMOの再結成や、HASYMO、忌野清志郎や坂本冬美と組んだHIS(Hosono,Imawano,Sakamotoの頭文字)などでも活躍。
2019年には初めてアメリカでツアーを行い、ニューヨークとロサンゼルスで演奏。公開中の映画「HARUOMI HOSONO SAYONARA AMERICA」でこの時の様子を観ることが出来る。

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シンセサイザーの他にギターやバンジョーなどの弦楽器、様々な地方の民族楽器なども展示されている。映画好きである細野が観た映画のパンフレットの展示もある(細野は「パンフレットは買う」派であるようだ。私は余程良いものでないと買わないけれど)。また蔵書なども並べられている。細野と坂本龍一がYMO時代に不仲になった原因の一つとして坂本は、「細野さんが神道に傾倒し始めたりして」と語っていたりするが、実際にその手の本もある。また、少年時代にはマンガ家を志していたこともあるということで、マンガの蔵書も多い。

細野晴臣のみならず、私も影響を受けたミュージシャン達も相乗りで進む細野観光。
2021年までとなっているが、その先も永遠に続くような気がする。

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2021年12月26日 (日)

これまでに観た映画より(269) 「HARUOMI HOSONO SAYONARA AMERICA 細野晴臣 サヨナラ アメリカ」

2021年11月26日 アップリンク京都にて

アップリンク京都で、細野晴臣のライブドキュメンタリー映画「HARUOMI HOSONO SAYONARA AMERICA 細野晴臣 サヨナラ アメリカ」を観る。細野晴臣が2019年5月にニューヨーク、6月にロサンゼルスで行ったアメリカライブの映像を中心とした構成である。監督はNHK出身の佐渡岳利(さど・たけとし)。「イエローマジックショー」も手掛けた監督である。タイトルは、細野が所属したはっぴぃえんどの楽曲「さよならアメリカ さよならニッポン」から取られており、同曲を細野が再録音したものが映画のエンドロールで流れる。

日本音楽界に燦然と輝くカリスマ、細野晴臣。イエローマジックオーケストラ(Yellow Magic Orchestra。YMO)などで世界的な名声も得ており、今回のドキュメンタリー映画でも細野の音楽について熱く語るアメリカ人が何人も登場する。

初期の代表作である「HOSONO HOUSE」のリメイク「HOCHONO HOUSE」をリリースして話題にもなったが、「HOCHONO HOUSE」制作中にロームシアター京都サウスホールで公演を行っており、「HOSONO HOUSE」のナンバーを何曲も歌ったが、今回の映画でも京都でのライブと同一の楽曲がいくつか流れる(「住所不定無職低収入」「北京ダック」「SPORTS MEN」「GHOO-CHOOガタゴト」など)。

ニューヨークでの公演開場前に列をなしている人々に被さるようにして「In Memories of No-Masking World」という文字が浮かび上がるが、「出掛ける時はマスク」が常態化している現在(2021年11月)から見ると、誰もマスクをしていない光景は異世界のように感じられる。途中にバックバンドのメンバーがコロナ下での生活状況について語るシーンがあるのだが、高田漣が「これまでの音楽人生の方が夢だったんじゃないか」という意味のことを語る場面があり、新型コロナが生んでしまった断絶を観ているこちらも強く感じる。

「芸術とは最も美しい嘘のことである」とドビュッシーが語ったとされる。その言葉が浮かぶほどにスクリーンの向こう側は美しく、生命力に満ち、華やかな世界が音楽によって形作られている。それがコロナを経た今となっては虚構のようにも見えるのだが、今の世界にあって、それだけが本当に必要なもの、あるいは全てのような実感も覚えるのだから不思議である。「こういうもの」のために世界はあるのではなかろうか。「こういうもの」のために我々は「今」を耐えているのではなかろうか。
とにかく「ここ」には人種や国境を超えた調和がある。「今」を耐えた暁には、またいつか結び合える時が来る。隔てられた世界の映像を観た後で、「欠落感」とその奥に浮かぶ上がる音楽という名の希望を見いだしたような複雑な感情が胸に去来した。

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Delights 「MUSIC PLANS 音楽の計画」(YMOカバー)

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2021年12月24日 (金)

コンサートの記(753) 「玉置浩二 Concert Tour 2021 故郷楽団~Chocolate Cosmos」@ロームシアター京都 2021.9.26

2021年9月26日 左京区岡崎のロームシアター京都メインホールにて

午後5時30分から、ロームシアター京都メインホールで「玉置浩二 Concert Tour 2021 故郷楽団~Chocolate Cosmos」を聴く。
玉置浩二のコンサートに接するのは三度目だが、いずれも雨で、玉置浩二も結構な雨男のようである。

2015年に行われた「故郷楽団」公演の再演で、曲目も2015年のものに近い。オリジナルの他に尾崎豊の「I LOVE YOU」のカバーもあってとても良い。イントロに特徴があるため、客席がすぐに「あ!」という空気になった。
2部構成で、前半は明るめの茶色の、後半は白のコートを着て歌った玉置浩二。秋から冬にかけての道産子のファッションやチョコレートをイメージしたものだと思われる。「故郷楽団」のタイトル通り、前半は「ママとカントリービール」(作詞:竹中直人)、「花咲く土手に」、「青い“なす”畑」といった子供時代や故郷である北海道を歌った曲も多く、ホール全体がノスタルジアに包まれる。玉置浩二は歌声だけで世界を構築出来る人だけに、京都にいながら北の大地の清冽な風に吹かれているような気分になる。

「MR.LONELY」「JUNK LAND」を経て歌われた「田園」では観客総立ちになり、玉置浩二は今日も「愛はここにある」の後を「京都にある」とご当地に変えて歌って喝采を浴びる。
曲を終えてから、玉置は「こんばんは。皆さん足を運んでくれてありがとう。感謝します。メンバー紹介をします」と述べてからメンバーを一人一人紹介する。紹介してからギターをライフルに見立てて撃つ真似をするなどお茶目な仕草を続けていた玉置。テレビだとずっとハイテンションで喋ってばかりのイメージがある玉置浩二であるが、ライブで彼が話すのは珍しいことらしい。

玉置浩二のオールタイム人気曲アンケートで1位になった「メロディー」で本編は終わり、アンコールとして「しあわせのランプ」が歌われる。アンコールで歌われたのはこの曲だけだったが、最後の曲に相応しいメッセージに溢れた歌声が、空間を幸福感に満たしていた。

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2021年12月23日 (木)

上七軒文庫ツイキャス配信「おはなしLeiture」vol.2

2021年11月14日

午後1時30分から、上七軒文庫のツイキャスでの配信「おはなしLeiture」vol.2を観る。
お話と絵、朗読による物語配信である。
原作:るか子。音楽:法太。朗読:鹿田ひさこ、田ノ口リコ、東村洋子。着付け協力:中村千佳子。イラストは田ノ口リコが兼任する。

泉鏡花や芥川龍之介や内田百閒の短編小説を彷彿とさせる、秋から冬にかけてのノスタルジックで不思議なお話全13編からなる配信公演。明治時代に造られた町家である上七軒文庫からの配信に相応しい内容である。配信のみではなく、上七軒文庫を会場にした公演も行えるなら建物自体の雰囲気にもマッチしてより良いものになりそうだが、その場合は上演のスタイルを変えないといけないため(絵は、ボードの上に置かれたものがクローズアップされる。会場での公演の場合は、それをモニターに映す必要があるが、臨場感は却って出にくいかも知れない)難しいだろう。
ともあれ、長い歴史と底知れぬ深さを持つ関西という場所を中心とした、迷宮を彷徨うような物語は、子供からお年寄りまで、多くの視聴者の琴線に触れるものであることは間違いない。多くの歴史や記憶が積み重なった重層都市である京都。そこで紡がれて送り届けられる物語には抗いがたい魅力がある。

これらの作品の絵本バージョンも読んでみたくなる公演内容であった。

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2021年12月20日 (月)

観劇感想精選(417) 「Home,I’m Darling~愛しのマイホーム~」

2021年11月12日 西宮北口の兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールにて観劇

午後6時から、西宮北口の兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールで、「Home,I'm Darling~愛しのマイホーム~」を観る。2019年の英国ローレンス・オリヴィエ賞5部門にノミネートされ、ベスト・ニュー・コメディ賞を受賞したブリティッシュ・コメディの日本初演である。作:ローラ・ウェイド、テキスト日本語訳:浦辺千鶴、演出:白井晃。東宝の製作である。出演は、鈴木京香、高橋克実、江口のりこ、青木さやか、袴田吉彦、銀粉蝶。
最近話題になることの多い江口のりこは姫路市の出身であるため、今回が凱旋公演ということになる。

ロンドン近郊の一軒家が舞台。ジュディ(鈴木京香)は、元々は部下が6人いるキャリアウーマンだったのだが、会社の経営が傾き、自主退職者が募られた時に、「クビになるのは確実だからその前に」と申し込み、以後は専業主婦になっている。ジュディの母親であるシルヴィア(銀粉蝶)は、娘が専業主婦になったことに納得がいっておらず、ジュディの下をたびたび訪れては不満を漏らす。ジュディの夫であるジョニー(高橋克実。カツラを付けての演技)は、不動産会社に勤務。ジュディはバーミンガム大学卒であるが、ジョニーは大学入学資格試験の日にインフルエンザに罹ったという不運も重なって高校で学業を終えている。高卒ということで、会社では最古参であるにも関わらずなかなか出世出来ないでいるのだが、ジュディにはどうしてもジョニーに出世して貰いたい理由があった。

ジュディの趣味である1950年代風に統一された家の内装。ジュディも50年代風の衣装を好んで着る。「最高に幸せ」という雰囲気で始まる芝居だが、ジュディもジョニーも内心には不満を秘めている。

ジョニーの上司が変わる。若いアレックスという人物だ。ジュディはアレックスというファーストネームから男だと信じていたのだが、実は女性である(江口のりこが演じる)。
部下のことをよく知りたいというアレックス。ジュディとジョニーはアレックスを自宅に招くことにする。ジョニーとアレックスは実に相性が良い。アレックスはロンドン大学のスクール・オブ・エコノミクス(英タイムズ紙による2022年版英国内ランキング5位)を卒業したインテリで、バーミンガム大学(同じく2022年版英国内ランキング25位)出身のジュディよりも高学歴。ジョニーとのやり取りも親密で、ジュディは嫉妬を覚え……。

第2幕冒頭には、会社を辞める前のジュディとジョニーのシーンが挿入されており、ジョニーがキャリアウーマンタイプの女性を好んでおり、ジュディを結婚相手に選んだ理由が仄めかされている。

ストーリー的には特に目新しい展開も、特筆すべき事件も起こらないのだが、夫婦が再び互いに恋するという話でもあり、鈴木京香演じるジュディと高橋克実演じるジョニーが愛らしく、微笑ましい夫婦として映る。特段に優れた舞台という訳でもないのだが、「良いものを観たな」と思える大人のための演劇である。

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