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2021年12月31日 (金)

観劇感想精選(418) 「當る寅歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」第3部 「雁のたより」「蜘蛛絲梓弦」 令和三年十二月十日

2021年12月10日 京都四條南座にて観劇

午後6時から、京都四條南座で、「當る寅歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」第3部を観る。今年も昨年同様、コロナ対策の密集緩和のため、顔見世は3部制で行われる。また、人間国宝であった四代目坂田藤十郎三回忌追善のため、第1部の「晒三番叟」と「曾根崎心中」が追善狂言と銘打たれた他、全編に渡って藤十郎が生前に得意としていた演目が並ぶ。1階では坂田藤十郎の写真展も開催されていた。

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第3部の演目は、「雁(かり)のたより」と「蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)」


「雁のたより」は、3年前の顔見世で、坂田藤十郎の息子である四代目中村鴈治郎が主役の三二五郎七を演じていたが、今回は十代目松本幸四郎が五郎七役を務める。
「雁のたより」は、上方歌舞伎の代表的演目で、昭和以降で五郎七を演じてきたのは、十三代目片岡仁左衛門、二代目中村扇雀=三代目中村鴈治郎=四代目坂田藤十郎、五代目中村翫雀=四代目中村鴈治郎と、全て上方系の役者であり、江戸の歌舞伎俳優が主役を務めるのは今回が初めてとなる。

このところ、上方演目への出演が目立つ十代目松本幸四郎。先代が「ザ・立役」という人だっただけに、同じ土俵では太刀打ち出来ないが、上方狂言への適性は明らかで、今後も父親とは別の分野での活躍も期待される。

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出演は、松本幸四郎、片岡愛之助、上村吉弥、片岡千壽、板東竹三郎、片岡進之介、中村錦之助ほか。

今回は、片岡仁左衛門の監修による松嶋屋型での上演。鴈治郎がやった成駒家型の上演とは内容が大きく異なる。

見た目が優男ということもあり、上方演目の主役にイメージがピタリとはまる幸四郎。だが、上方俳優の愛之助などとは動きが異なることに気付く。特に腕の動きなどは速く鋭く、愛之助のたおやかな手つきとは好対照で、幸四郎がやはり江戸の俳優であることがよく分かる。
江戸の俳優として初めて五郎七を演じることになった幸四郎。初役ということで、十分満足の行く出来とまでは行かなかったが、佇まいが良く、滑稽さの表出や動きのキレなどにはやはり光るものがある。「華」に関してはやはり上方芝居に慣れている愛之助の方が上のような気がしたが、初役であり、今後の伸びも期待される。


「蜘蛛絲梓弦」。愛之助が五変化を勤める。出演は愛之助の他に、大谷廣太郎、中村種之助、松本幸四郎ら。

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京都では壬生狂言の演目としても知られる「土蜘蛛」伝説を扱っており、源頼光の土蜘蛛退治に基づく演目であるが、妖怪などは古くから疫病と結びつけて考えられてきたため、今の世相に相応しい作品であると言える。
ちなみに壬生狂言の「土蜘蛛」で使われる蜘蛛の糸は、触ると厄除けになると言われているが、歌舞伎版でも同様なのかは分からない。

土蜘蛛というのは元々は大和朝廷にまつろわなかった豪族達の寓喩であり、葛城氏などが土蜘蛛に喩えられている。

源頼光(松本幸四郎)が原因不明の病に苦しんでおり、物の怪の仕業と見た頼光家臣の碓井貞光(大谷廣太郎)と坂田金時(中村種之助)が寝ずの番をしている。そこへ土蜘蛛(片岡愛之助)が小姓や太鼓持、座頭などに姿を変えて現れ、頼光とその家臣を幻惑していく。「羅生門の鬼」で知られる頼光四天王の一人、渡辺綱の話や鴻門の会の燓噲などの話も登場する。

華やかな演出が特徴的な演目であり、愛之助の達者ぶりも光る。

梓弦は、梓弓のことで、弓は「張る」ので「春」に掛かり、「歌舞伎界の正月」とも言われる南座での顔見世に相応しい。またコロナの冬を越えて春が来ることを祈念していると見ることも出来る。真意は分からないのだが、そう取ると梨園の意気のようなものが感じられる。

なお、今回の口上では、坂田藤十郎の屋号である「山城屋」が掛けられていたり、南座とコラボレーションを行った「鬼滅の刃」を思わせる一節が隠れていたりした。

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