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2022年1月22日 (土)

これまでに観た映画より(271) 「スティーブ・ジョブズ」(2015)

2022年1月11日

録画してまだ観ていなかった映画「スティーブ・ジョブズ」(2015)を観る。「スティーブ・ジョブズ」というタイトルの映画は2010年代に2作品が生み出されているが、こちらは後発となる2015年版である。先に2013年版が制作公開されているが、評判は今日観る2015年版の方が良いようである。

原作:ウォルター・アイザックソン、監督:ダニー・ボイル、脚本:アーロン・ソーキン。音楽:ダニエル・ペンパートン。出演は、マイケル・ファスベンダー、ケイト・ウィンスレット、セス・ローゲン、ジェフ・ダニエルズ、マイケル・スタールバーグ、キャサリン・ウォーターストーン、パーラ・ヘイニー=ジャーディンほか。

56年という決して長くないスティーブ・ジョブズの生涯の中で、1984年のMacintosh発売、1988年のNeXT社のネクスト・キューブ発売、1998年のiMac発売の3つの時期に絞って物語が展開されていく。伝記映画ではあるが、描く時代を限定したことで冗長な部分が少なくなり、ジョブズと娘であるリサの一口変わったヒューマンドラマ的な仕上がりとなっている。

発案に関しては天才的であり、今も全世界で使われているアップル社製品の生みの親でありながら、プライドが高く、偏屈で執念深く、人の不幸を何とも思わないという一種のサイコパス的性格を怖れられたスティーブ・ジョブズ。この映画でも、内縁の妻であるクリスアン(キャサリー・ウォーターストーン)とその間に出来た娘のリサに押しかけられるまで金銭的援助を一切するつもりがなかったり(最終的には養育費が支払われ、家も買い与えられる)、アップル社創業以来の仲間であるアンディ(マイケル・スタールバーグ)をこき使ったり、同じく創業メンバーのジョン・スカリー(ジェフ・ダニエルズ)と衝突したりしている。

1984年のMacintoshの発売は画期的であったが、セールスはほどなくして落ち込み、オープンソースにしなかったため、その後しばらくしてマイクロソフトなど他の企業に抜かれ窮地に立たされることになる。
そして、ジョブズは自ら創設したアップル社を解雇されるという前代未聞の事態に発展。ジョブズはNeXT社を立ち上げ、アップル社とは商売敵となるも、その後、アップル社の業績不振によってアップル社に再度招聘されることになる。

ジョブズはアイデアマンであり、優れたデザイン感覚を有し、高度なプレゼンテーション能力の持ち主で、カリスマ性のあるフロントマンだった。一方で、コンピューター会社の創業者でありながら、プログラムが書けるわけでもなく、技術面では創業時からのメンバーに頼り切り。それでいてしばしば無理難題を押しつけるということで、身近かな人から好かれるタイプでは全くなかった。
この映画でも、開発責任者で、「ウォズの魔法使い」と呼ばれたウォズことスティーブ・ウォズニアック(セス・ローゲン)や現場でのコンピューター操作主任であるアンディとたびたび衝突する様子が描かれている。特にウォズが自分が製作し、アップル社の礎を築いたAppleⅡ開発メンバーへの謝辞をジョブズに求めるも、ジョブズは「もう過去の遺物」として断固拒否。未来志向といえば聞こえはいいが、人間の心を読む能力に欠けているようである。スティーブ・ジョブズASD説というのはこの辺りから来ていることが予想されるが、おそらくジョブズ自身は診断を受けていないと思われるため、余り軽々にものを言うべきでもないと思う。

そうした「人間的」なのかどうか分からないジョブズが、娘のことだけは真剣に思いやる姿が微笑ましい。ラスト近くで娘のリサにiPod作成の提案を語る場面がある。iPod誕生秘話が本当にこんな感じだったのかは定かでないが、ジョブズという人物の伝記映画として優れた着地点が用意されているように思われた。

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