これまでに観た映画より(275) 京都シネマ ペルー映画祭「Supa Layme(スーパ・ライメ)」
2022年1月27日 京都シネマにて
京都シネマで、ペルー映画祭「Supa Layme(スーパ・ライメ)」を観る。藤川史人(ふみと)監督が撮影、編集を手掛けたドキュメンタリー映画。藤川監督が、アンデス高地で牧畜を営むスーパ・ライメ一家に取材した作品である。ナレーションや音楽は一切なく、物語的に見えるような編集もされていないため、独自の風習に関するこちらの解釈が合っているのかどうか分からないところがある。ナレーションはないが、藤川監督がスペイン語で一家と語り合っている(藤川監督は「フミト」と呼ばれている)のを聞くことが出来る。
スーパ・ライメ家は、二男二女(だったかな? 男の子2人と女の子1人は印象に残っいるが、もう一人は記憶に残っておらず)の6人家族。リャマとアルパカが計約200頭、更に羊に鶏、馬にロバを飼っている。アルパカは毛皮を刈って売り、リャマは解体して食料としている。
子供達がスペイン語のドリルを学習したり、簡単な暗算をするシーンがあるが、学校はふもとの村にあるようで、そのために一家は4700mの高地から2600mの土地へと下りていく。子供達が学校に通う時期は、父親は都会に出て別の生活を送るようである。
リャマを殺して食料とするシーンは結構残忍であるが、子供達も生きるための営みとして理解しているようである。
母親であるベロニカの話が興味深い。彼女が子供の頃はまだアンデス山脈一帯にはテロリストが良く出たそうで、彼女の父親も成功を妬む誰かから、「泥棒をやっている」と偽の告発をされ、怒ったテロリストが家に押しかけて来たことがあったそうだ。父親はその時不在だったそうで、テロリスト達は彼女の母親の腕を銃で撃つなど乱暴を働いた上、年の離れた父親の弟を連れて行ってしまったそうだ。テロリスト達はまだ子供だった父親の弟に兵器の使い方を教えたりしていたそうだが、結局、身ぐるみ剥いで追い出したという。父親は激怒してテロリスト達の後を追おうとしていたという。
更にベロニカは自身の子供時代についても語る。父親は彼女が幼い頃に亡くなり、母親の手で育てられたという。学歴に関してだが、学校に通ったのは小学校3年生まで、それも学齢通りではなく、10歳前後になってから小学校に通い始めたそうである。小学校1年2年は昼間の学校に通ったが、小学校3年の時は他の街での夜学に転じる。昼間は住み込みの使用人として働き、夕方になると着替えて学校に通うという生活だったが、無給だったそうで、住む場所と食事を保障されるだけで我慢するしかなかったようだ。まだ十代前半で、仕事の勝手も何も分からず、かなりの苦労をしたようである。それでも彼女の妹は学校に通った経験が一切ないそうで、それに比べれば恵まれていたと感じていることも分かる。ベロニカは小学校に通わなくなった直後に現在の夫と出会い、将来を誓い合うのだが、彼女の兄達が「若すぎる」という理由で猛反対。ベロニカは実の兄から両目を殴打され、失明しそうになったこともあったようである。
子供達がサッカーに興じるシーンがあったり、電波状況の悪い中でサッカー・ペルー代表の試合をテレビ観戦しようとする姿もあり、南米らしさを感じさせる。
子供達は、将来はエンジニアや医師になりたいという夢を持っている、というにはまだ早いが、ぼんやりとであるが描いている将来に牧畜は入っていないようである。
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