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2022年2月 9日 (水)

観劇感想精選(425) YOU-PROJECT第21回公演「ソリチュード〈孤独〉」シリーズ連続一人芝居 「七転罵倒」&「あずき粒」

2021年12月13日 京都府立文化芸術会館にて観劇

午後7時から、京都府立文化芸術会館でYOU-PROJECT第21回公演「ソリチュード〈孤独〉」シリーズ連続一人芝居を観る。
YOU-PROJECT(YOU企画)は、京都芸術センターや京都府立文化芸術会館の職員などもしていた松浦友(まつうら・とも)によるプロジェクトであり、私も以前、一度だけ東山青少年活動センターで行われた公演を観たことがある。

松浦さんに久々に会って話もする。私は「会うのは大体15年ぶり」という話をするが、後で調べてみたところ、13年ぶりであったことが分かった。2008年に京都府立文化芸術会館で、ごまのはえ演出によるチェーホフの「三人姉妹」の公演があったのだが、その前に文芸会館の前で松浦さんに会って、「(本やCDなどとは違って)チケットの場合は、『絶賛発売中』だとなんか違和感ありますね(日本語として間違っている訳ではない)」という話をしたのが最後のはずである。

今回の「ソリチュード〈孤独〉」シリーズ連続一人芝居は、小川敦子の作・出演、松浦友演出による「七転罵倒」と山川方夫(やまかわ・まさお)の小説「お守り」をクスキユウ(松浦友のペンネーム)が戯曲化し、山本周の出演、松浦友が演出した「あずき粒」の二本立てである。上演時間は二本で約50分。

小川敦子の「七転罵倒」は、「売れない舞台女優あるある」をエッセイと日記の中間の口調で語るというものである。小川敦子はダンサーとしても活躍(本人はダンサーだと思ったことは一度もなく、「あくまでダンスもする俳優」だと自認しているようである)しているということで、ダンスの動きなども取り入れた作品となっている。小川敦子は東京を拠点としている舞台女優だそうで、この作品もコロナによる緊急事態宣言が出た時に書かれたものだという。


「あずき粒」は、主人公の関口二郎が、部下か同僚に酒の席で「ダイナマイトいらない?」と語り掛けることから始まる作品。その前に歌の場面があり、最後も歌で終わる。
最初は語り掛けだったのだが、そこから一人語りの世界に入っていく。
ある日の夜、関口は仕事帰りに自分にそっくりな後ろ姿の男を見掛ける。男は関口が住んでいる団地の部屋に入り、関口の妻と語らい始める。関口は自分のドッペルゲンガー(ドッペルゲンゲル)かと疑うのであるが、男の正体は関口によく似ているものの、黒瀬次郎という他人であった。だがその日から関口は、皆が皆似通って個性がない、あたかも床に散らばったあずき粒の一つ一つのようなものなのではないかとの思いにとらわれるようになり……。

現代の日本という社会は他人と同じでなければ上手く生きていけないような構造になっている。同じような幼児期と少年期を過ごし、なるべく良い高校に進学し、なるべく良い大学を出て、なるべく良い企業に就職する。それが典型的な生き方、というより社会構造がそうした生き方を強要してくるため、オリジナルな生き方にはかなりの危険が伴うのが現状である。

全く関係はないのだが、二十歳前後に読んだ『ドイツ怪奇小説アンソロジー』(だったかな?)の中に「人間工場」という作品があり、実は人間というものは工場で生産されているという内容で、ナチスを皮肉る意図もあったと思われるのだが、日本もそれに近い状態にあるのを感じ、憂鬱になったことが思い出された。

先月もロームシアター京都ノースホールで一人芝居の三本立て上演があったのだが、飛沫感染を防ぎやすい形態である一人芝居の作品が作られやすい状況になりつつある。
実は一人芝居の歴史は短く、1930年にジャン・コクトーが発表した「声」が本格的な一人芝居であったとされる。一人での朗読や落語のような一人語りの演芸は存在したが、一人で行う本格的な演劇作品は「声」が初めて。ということで100年の歴史も有していない。コクトーの「声」はセリフのみの作品であるが、今年に入ってから観た一人芝居は全て語りものかセリフのみでも説明調のもので、それも分かりやすくはあるのだが、もっと観客の想像力を信じた作品も観てみたくなる。100年の歴史も持たないということは、接したことのある観客も少なく慣れていないということでもあり、希望が裏切られる可能性も高いのであるが。

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