これまでに観た映画より(274) 京都シネマ ペルー映画祭「アンダーグラウンド・オーケストラ」
2022年1月26日 京都シネマにて
京都シネマで、ペルー映画祭「アンダーグラウンド・オーケストラ」を観る。1997年に製作されたドキュメンタリー映画。1999年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で審査員特別賞を受けている。1951年、ペルーの首都リマに生まれ、リマで文学と生物学を専攻した後でローマに渡って映画製作を学び、1978年にオランダに帰化したエディ・ホニグマン監督の作品。パリのメトロで演奏を行って生活費を稼いでいる亡命者達の姿を捉えている。
パリにはスリを生業としている人が多いため、地下道でも「荷物から目を離さないように、椅子の下に鞄を置かないように」というアナウンスが流れている。
メトロでは撮影が禁止されているようだが、白人をカメラが追っていても職員や警察は見て見ぬふり。一方、有色人種が演奏を行った後にお金を集めようとすると、途端に撮影を止めさせたり、有色人種の音楽家を追い出そうとしたりするようである。
まず最初に登場するのは、アルパ奏者のマリオ(マリオ本人も、おそらくエディ・ホニグマンとおぼしきインタビュアーも「アルパ」と言っているが、アルパはそれほどメジャーな楽器ではないため、英語字幕でも日本語字幕でも「ハープ(harp)」となっている)。ベネズエラからの移民だそうである。アルパの演奏はかなり上手い。そういえば、以前は大阪のザ・シンフォニーホールの前の広場に南米系と思われる男性のアルパ奏者がよく演奏を行って、自分のCDも発売していたが、彼は今はどうしているのだろうか。
その他にもルーマニアから出稼ぎに来ている家族や、チャウシェスク政権崩壊以降のルーマニアに絶望してパリに亡命した親子なども登場する。
CDデビューもしている黒人系(とは断言出来ない。色は黒めだが、エチオピア人などの中間種かも知れない)の女性歌手は、小さなアパートメントに子供2人と暮らしているが、移民の場合、フランス人よりも賃貸料が高くなるそうで、移民に厳しいフランスの現状(1997年の撮影なので、今とは異なる可能性があるが)を知ることが出来る。また、アルパ奏者のマリオは、アパートの一室を購入しようとするが、移民ということもあってか契約は成立しない。
移民や亡命者ということで、フィドルやギター、アコーディオンといった世界中で演奏されている楽器のみならず、ツィンバロンなどの民族楽器を奏でる奏者もいる。
ユーゴスラビア紛争のただ中にあったボスニアから兵役拒否をしてパリに逃げてきた男性の姿もカメラは捉えている。ユーゴスラビアの国立歌劇場のオーケストラでヴァイオリンを弾いていたそうだが、ボスニアにはもう戻れない。その他に、亡命申請をして他国に渡った場合、二度と祖国に帰ることが許されないというケースもあるようである。
かなり厳しい状態に置かれているストリートミュージシャン達であるが、演奏している時とその直後の顔は清々しさに溢れている。音楽をする喜びは、いかなる苦難にも勝るようである。
| 固定リンク | 0
« 美術回廊(72) 京都国立近代美術館 「上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー」 | トップページ | これまでに観た映画より(275) 京都シネマ ペルー映画祭「Supa Layme(スーパ・ライメ)」 »
コメント