これまでに観た映画より(284) 「再会の奈良」
2022年2月21日 京都シネマにて
京都シネマで、日中合作映画「再会の奈良」を観る。脚本・監督:ポンフェイ(鹏飞)。エグゼクティブプロデューサー:河瀨直美、ジャ・ジャンクー(贾樟柯)。出演:國村隼、ウー・イエンシュー(吴颜姝)、イン・ズー(英泽)、秋山真太郎(劇団EXILE)、永瀬正敏(友情出演)ほか。音楽:鈴木慶一。鈴木慶一はワンシーンのみであるが出演している(セリフあり)。
2005年の秋の奈良を舞台に、姿を消した元中国残留孤児の女性を探す、彼女の育ての親である陳おばさん(ウー・イエンシュー)、その孫のような存在(遠縁らしい)で日中ハーフの女性、清水初美(中国名は萧泽。演じるのはイン・ズー)、定年退職した元警察官の吉澤(國村隼)の3人を主役としたロードムービーである。
奈良市の他に、河瀨直美の故郷である御所(ごせ)市も撮影に協力しており、主舞台となっている。
映画が始まってしばらく経ってから、中国残留孤児の説明アニメが入る。第二次大戦中、日本から中国東北部に約33万人の開拓者が送り込まれ、満州国発展のために農村を拓いていったのだが、1945年8月にソビエトが突如参戦。満州にいた人々は逃げるのに必死であり、自分達の子供を現地の中国人に託すか、捨てるかしかなかった。この時、約4千人の中国残留孤児が生まれたという。1972年に日中の国交が正常化されると、残留孤児と呼ばれた人々の身元が判明するようになり、続々日本への帰国を始める。
この作品で行方が捜されることになる陳麗華という女性は、1994年に日本に帰国。奈良県で親族と思われる人を探し出していた。その際に名前を日本名に変えたことが分かっているが、その名を誰も記憶しておらず、手掛かりがつかめない。
陳おばさんに手紙を書いていた麗華だが、ある日を境に居場所がようとして知れなくなる。その後、何年にも渡って音信不通となったため、陳おばさんは来日して麗華を探す決意をする。初美も当然ながらそれに参加。更に、初美が居酒屋でアルバイトをしていた時代に知り合った元警察官の吉澤も加わり、少ない情報を手掛かりとした捜査のようなものが始まる。
当初は居酒屋に勤めていた初美だが、今はみかん工場でのアルバイト。麗華を探すために休みがちであり、上司からは「今度やったらクビだよ」と言われている。
淡々とした描写の映画であり、秋の奈良の光景が美しいが、劇的な展開を意図的に避けてユーモアを盛り込んでおり、さほどドラマティックにもならない。それでいて結論として導き出された答えは悲劇的である。奈良県の伝統芸能などが登場するなど盛り上がる場面もあり、残留孤児の問題や、日本と中国の間に横たわる底知れぬ溝などを正面から見据えていて、悪い映画ではないのだが、探す行為に終始するため、どうしても物足りなさは感じてしまう。
ただ奈良を舞台としたロードムービーはほとんどないため、貴重な一本となっている。奈良の景色はやはり美しい。
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