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2022年3月18日 (金)

これまでに観た映画より(286) アッバス・キアロスタミ監督作品「風が吹くまま」

2022年3月10日 京都みなみ会館にて

東寺のそばの京都みなみ会館で、アッバス・キアロスタミ監督作品の映画祭「そしてキアロスタミはつづく」より、「風が吹くまま」を観る。1999年の作品、イラン=フランス合作映画。出演:ベーザード・ドーラニー、ファザード・ソラビほか。原案:マハムード・アイェディン。

テヘランのテレビ局のディレクターであるベーザード(ベーザード・ドーラニー)らのクルーがクルド系の小さな村を訪れる。その村では独特の葬儀を行う風習があるため、収録するためにはるばるやって来たのだった。その村に住む老婆が今日明日にも他界するという情報を得ていた。村の入り口の近くで、一行はファザード(ファザード・ソラビ)という少年と出会う(俳優の名前と役名が一緒だが、完全なフィクションの作品であり、本人役で登場している訳ではない)。ファザードは一行を村へと案内する。丘の斜面に家屋が連なるという独特の外見を持つ村であった。

テレビ局の一行は老婆の他界を待つのだが、意に反して、老婆はなかなか死なない。

村では携帯電話の電波が繋がりにくい。ベーザードの携帯の着信音は鳴るのだが、会話がほとんど出来ないため、ベーザードは車を運転して高台の墓地まで出掛けることになる。ここでは電波が上手く繋がる。電話の向こう側の声は聞こえないが、上司から矢の催促が来ていることが察せられる。
高台の墓地で穴を掘り続ける男が一人(地下にいるので最後まで姿は見えない)。墓掘り人ではなく井戸を掘っているようだ。ベーザードは男から大腿骨と思われる骨をプレゼントされたりする。ベーザードは携帯で話すために何度も高台の墓地を訪れることになり、そこで陸亀やスカラベ(フンコロガシ)の姿を目にする。

意図的にステーリー性を排して、ベーザードとファザードを中心とした村の人々とのやり取りが描かれる。ドラマティックな出来事は終盤まで起きない。ということで途中で退屈してしまう人もいるかも知れない。

ただ、人が死ぬのを待っているという奇妙にして滑稽な状態にベーザードが次第に気付き始め、老人の無村医とバイクに二人乗りして会話しているうちに、ベーザードの視線は死から生へと転換していく。イラクの大地の美しさが、生きることの素晴らしさ、この世界への肯定へとベーザードの意識を静かに転換させていく様が押しつけがましくなく描かれており、好感の持てる一作になっている。

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