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2022年4月 4日 (月)

これまでに観た映画より(291) 岸井ゆきの&浜辺美波「やがて海へと届く」

2022年4月1日 京都シネマにて

京都シネマで、日本映画「やがて海へと届く」を観る。彩瀬まるの同名小説の映画化。原作小説は幻想的な要素が濃いようだが、この映画では冒頭とラスト近くにアニメーションのシーンを挿入することで処理している。

主演は岸井ゆきの、準主役に浜辺美波。魅力的な若手女優二人を揃えたほか、鶴田真由、中嶋朋子、光石研ら脇役陣も充実している。監督は、中川龍太郎。


すみれ(浜辺美波)が消息を絶つ。海を見るために一人旅に出掛けた彼女は、2011年3月11日、岩手県の陸前高田市付近にいた可能性が高く、津波に呑まれたのではないかと見られていた。だが、すみれの親友であった真奈(岸井ゆきの)は、5年が経った今もすみれが生きている可能性を捨て切れないでいる。

二人が出会ったのは、2005年。大学の入学式もしくは新入生説明会の後(大学によって異なるが、フォーマルな格好はしていないので後者の可能性が高い)で行われたサークルの新歓においてだった。控えめな性格である真奈は、多くの先輩達が自身のサークルへの呼び込みを行っている中を恐る恐る進む。テニスサークルに誘われた真奈は断り切れそうにないが気も進まないということで立ち往生。そこに颯爽と現れたのが同じく新入生のすみれだった。誰に対しても笑顔で愛想が良く、人に合わせることの出来るすみれは先輩からの受けも良い。そしてその夜に行われた新歓コンパでは、所在なげだった真奈をすみれが救った。共に文学部に入学ということで、二人は親友となっていく。ある時からは、すみれが真奈のアパートに同居するようになる。
だが、その後、すみれは恋人の遠野敦(杉野遥亮)と同棲することを選び、1年ちょっとを過ごした二人のアパートから出て行くことになる。

真奈は、就職活動で、西川家具(京都西川)を本命としていたが、本社が京都であるため現在の場所から動くことに不安を覚える。結果的には真奈は東京の企業に就職し、飲食部門であるベイエリアのレフトランバーでフロア係(2016年時点ではフロアチーフ)として働くことになる。就職後も引っ越すことなく、学生時代からのアパートに住み続けた。レストランバーの店長である楢原(光石研)との関係も良好で、充実した日々。栖原はその時の雰囲気に合わせてBGMをチョイスする能力に長けている。深夜に真奈が落ち込んでレストランバーを訪れた時には、「いつか王子様が」を選んだ。

学生時代からすみれは、ビデオカメラで撮影することを好んでいた。真奈と二人で初めて行った旅行でもすみれはカメラを回していた。

遠野が引っ越すことになり、すみれの荷物を整理する必要があった。遠野と真奈はすみれの実家にすみれの品を届けに行く。遠野もすみれの母親である志都香(鶴田真由)も、すみれはすでに他界したものと見なしていたが、真奈は志都香からすみれの意外な一面を知らされる。そして遠野もすみれの本当の性格を実は見抜いていた。

真奈は有休を取って、レストランのシェフである国木田(中崎敏)と共に、陸前高田へと向かう。東日本大震災で街が壊滅状態に追い込まれた陸前高田。海沿いには高い防波堤(というよりは防波壁に近い)が立つ。そこで二人は、津波被害の思い出をインタビューという形で映像に収めている祥栄(中嶋朋子)らに出会うのだった。


女同士の友情と喪失を少し変わった形で描いた作品で、その繊細さが良い。すみれの本当の性格が明かされていく過程もスリリングであり、すみれが別の自分を演じ続けた理由や、なぜ真奈を友人として選んだかについての動機なども説得力がある。

アニメーションによる一種の「スピリチュアル」な過程の描写については、飛躍が目立つような気がするが、それはいったん置いて(実のところ、スピリチュアルでよく使われるとある言葉が二人の関係に最もしっくりくるのであるが)、女同士の心理劇として見ると、結構楽しめるように思う。主演の岸井ゆきのの演技も見事だ。実は岸井ゆきのと浜辺美波は8歳差で、同い年とするには無理があるのだが(すみれの出番は2011年で止まり、真奈はそれ以降の場面にも登場し続けるので、真奈を演じる俳優の方が年上である必要はある)、実年齢よりも若い役を演じて注目を浴びた岸井ゆきのだけに、「明らかに不自然」とは映らないレベルにはもって行けているように感じた。
浜辺美波は、語弊を恐れずにいえば「浮世離れした美貌」を持つ女優であるが、それがすみれ役に嵌まっていたように思う。

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