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2022年5月 2日 (月)

コンサートの記(777) 「ローム ミュージック フェスティバル 2022」オーケストラ コンサートⅡ マーラー「巨人」×R.シュトラウス「ティル・オイレンシュピーゲル」 角田鋼亮指揮新日本フィルハーモニー交響楽団

2022年4月24日

午後5時から、ロームシアター京都メインホールで、「ローム ミュージック フェスティバル 2022」オーケストラ コンサートⅡ マーラー「巨人」×R.シュトラウス「ティル・オイレンシュピーゲル」を聴く。「ローム ミュージック フェスティバル 2022」のトリを飾るコンサート。ロームシアター京都で「ローム ミュージック フェスティバル」が始まった当初は、オーケストラコンサートは京都市交響楽団が受け持っていたが、昨年初めて東京のオーケストラとして東京交響楽団が登場し(残念ながらオンライン配信のみとなった)、今年は新日本フィルハーモニー交響楽団を迎えることになった。東響は配信のみになったため、実質的には初めて東京のオーケストラが「ローム ミュージック フェスティバル」の舞台に上がることになった。

東京のオーケストラが関西でコンサートを行う場合は、第一選択肢はどうしても最大都市である大阪市内ということになり、新日フィルの実演にも大阪のザ・シンフォニーホールで接したことがある。小澤征爾の指揮であった。マーケットとして大阪が頭一つ抜け出しているということもあり(大阪市内なら、京都府からも兵庫県内からも通える)、それ以外の場所、京都市内や神戸市内、兵庫県立芸術文化センターのある西宮市内などに他の地方からのオーケストラが来てくれることは稀となってしまう。NHK交響楽団は、京都コンサートホールやロームシアター京都メインホール、神戸文化ホール、びわ湖ホール大ホールなどで地方公演を行っており、オーケストラ・アンサンブル金沢も京都コンサートホールで公演を行うことがあるが、それ以外のオーケストラはこれまでは京都で公演を行うことに積極的ではなかった。ただ、ロームシアター京都が出来てからは、日本フィルハーモニー交響楽団がまずは親子向けのコンサートを毎年開催するようになり、更に小林研一郎指揮による「コバケン・スペシャル」の2年連続での公演を行う。日フィルは、今年はロームシアター京都で計3回公演を行うなど、京都に新たな拠点を築きつつある。それが影響しているのかどうかは分からないが、「ローム ミュージック フェスティバル」にも2年連続で東京のオーケストラが招聘された。なお、新日フィルを久石譲が指揮した場合の名義である新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラとしては新日フィルは京都コンサートホールで数度演奏会を開いたことがある。

日フィル争議により、小澤征爾を慕って旧日本フィルハーモニー交響楽団から飛び出した楽団員によって結成された新日本フィルハーモニー交響楽団。海外でも「セイジのオーケストラ」として知られ、クリスティアン・アルミンクなど小澤征爾の弟子がシェフになることが多い。2016年からは上岡敏之を音楽監督に招き、期待されたが、上岡は契約を更新せず、新たに佐渡裕がミュージック・アドヴァイザーとして招かれている。新日フィルは佐渡裕が日本デビューを飾ったオーケストラ。佐渡もまた小澤征爾の弟子である。


今日の指揮者は、2016年から2020年まで大阪フィルハーモニー交響楽団の指揮者を務めたことで関西でもお馴染みの角田鋼亮(つのだ・こうすけ)。若さ溢れる音楽作りが魅力の指揮者である。

ナビゲーターは、「ローム ミュージック フェスティバル」ではお馴染みとなった朝岡聡。今回は楽曲の解説を行う。
また構成として音楽学者の新井鷗子の名がクレジットされている。


新日本フィルのコンサートマスターは、西江辰郎。ドイツ式の現代配置での演奏である。


曲目は、ヨハン・シュトラウスⅡ世のワルツ「美しく青きドナウ」、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、マーラーの交響曲第1番「巨人」。

朝岡聡は、ティル・オイレンシュピーゲルが、昔のドイツに実在したいたずら者であることを紹介し、彼がやったいたずらや最後は処刑されたことなどを語る。『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』は、岩波文庫に収められており、私も若い頃に読んでいるのだが、特に面白いとは思わなかった。


ヨハン・シュトラウスⅡ世のワルツ「美しく青きドナウ」。新日本フィルがロームシアター京都で演奏するのは、昨日と今日のコンサートが初めて。という訳で音響の把握が十全ではないため、当然ながら演奏にも影響する。
「美しく青きドナウ」は誠実な演奏であるが、指揮者が若いということもあって表情が硬く、ウィーン情緒を十分に引き出せたとは言い難い。そもそも、日本のオーケストラはウインナ・ワルツやポルカをそれほど得意とはしていない。


リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」。この曲では角田の巧みなオーケストラ捌きが光り、完成度に関しては更なる高みが目指せるように思われたが、描写力に長けた面白い演奏となった。指揮者にとっては若さはマイナスに働くことが多いのだが、この曲では若さが魅力に繋がっている。


マーラーの交響曲第1番「巨人」。作品の由来について朝岡聡が解説。「巨人」というタイトルは、ジャン・パウルが書いた大長編教養小説『巨人』に由来している。私も90年代に、神田神保町の東京堂書店でジャン・パウルの『巨人』の日本語訳版が売られているのを見かけたことがあるが、余りの分厚さに読みたいという気も起こらなかった。だが、マーラーはこの大長編小説がお気に入りで、この小説に基づく5楽章からなる交響詩をまず作曲。タイトルも小説からそのまま取って「巨人」とした。その後、「花の章」を削るなど改訂を行い、交響曲第1番とした時には「巨人」というタイトルも削除したが、今でも慣例としてマーラーの交響曲第1番は「巨人」というタイトルで親しまれている。

マーラーの青春の歌である「巨人」。この曲でも指揮者の角田の若さが魅力となって生きているが、フォルムが不安定になる場面があるなど、やはり指揮者として常に安定した演奏を行うには長い月日が必要となることも分かる。先月、広上淳一指揮京都市交響楽団の「巨人」を聴いているだけに、その思いは余計強くなる。
とはいえ、新日フィルの奏者達の実力も高く、ロームシアター京都初見参としてはなかなかの演奏を行っていた。

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