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2022年5月21日 (土)

これまでに観た映画より(294) 「気狂いピエロ」

2022年5月13日 京都シネマにて

京都シネマで、「気狂いピエロ」を観る。ジャン=リュック・ゴダール監督の代表作の一つ。出演:ジャン=ポール・ベルモンド、アンナ・カリーナほか。
原作があるそうで、最近、邦訳が出たようだが、基本的に即興重視であり、バルザック、ランボー、ボードレール、プルーストといったフランスの詩人や小説家、またスコット・フィッツジェラルドの『夜はやさし』などのアメリカの文学作品のタイトルなどが衒学的にちりばめられている。ただ、実際にそれらの文学作品を読んでいれば分かりやすくなるかといえば、そんなことは全くない。

「気狂いピエロ」は、二十代の頃にビデオで観ているはずだが、内容は完全に忘れており、見返してみても、「こんな映画だったっけかな?」と尻尾をつかむことが出来ない状態であった。

アメリカンニューシネマに影響を与えた作品として知られており、実際、アメリカンニューシネマに通じるテイストや色彩感、雰囲気などを備えているが、やはり即興性が強いため、強引に感じる場面も多く、練りに練った脚本や当時流行っていた思想などで勝負するアメリカンニューシネマとは実は見た目は近いが最も遠い作品なのではないかという印象も受ける。

ストーリー自体は単純で、妻との関係に飽きた文学かぶれのフェルディナン(ジャン=ポール・ベルモンド)は、5年ぶりに再会したマリアンヌ(アンナ・カリーナ)と恋仲になる。マリアンヌは、フェルディナンのことを「ピエロ」というあだ名で呼ぶが、フェルディナンはそのたびに「フェルディナンだ」と言い返し、「ピエロ」というあだ名を気に入っていない。マリアンヌの兄が右翼系の武器流通組織に関与していたということで、事件に巻き込まれた二人はパリから南仏へと逃げることになる。
これだけなのだが、フェルディナンが書き記しているやたらと詩的なメモ、唐突に切り替わってはぶつ切りにされる音楽、一貫性を欠いた(即興なので当然なのだが)場面設定、突然始まるミュージカルなど、ごった煮状態であり、ある意味、理解するのではなく状況をそのままに味わった方が楽しめる映画である。

アメリカンニューシネマに影響を与えたと書いたが、アメリカンニューシネマは「俺たちに明日はない」などの例外はあるが、基本的に男性が活躍する作品が多いため、「気狂いピエロ」のアンナ・カリーナは、アメリカンニューシネマのどのヒロインよりも魅力的と断言してもいいだろう。

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