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2022年6月 3日 (金)

コンサートの記(779) ムジークフェストなら2022@奈良県コンベンションセンター天平ホール 工藤重典&大萩康司

2022年5月29日 新大宮の奈良県コンベンションセンター天平ホールにて

奈良市は気温が上がり、最高気温は32度を記録する。

午後6時30分から、奈良県コンベンションセンター天平ホールで、フルートの工藤重典とギターの大萩康司による演奏を聴く。基本的にデュオだが、ソロも1曲ずつ用意されている。

曲目は、プーランクの「常動曲」、C.P.E.バッハの無伴奏フルートのためのソナタ イ短調(工藤重典独奏)、ピアソラの「タンゴの歴史」、ヴィラ=ロボスの5つの前奏曲より「叙情的な旋律」&「インディオへの讃歌」(大萩康司独奏)、シャンカールの「魅惑の夜明け」

工藤重典は、現代日本フルート界最大の大物といって間違いのない存在であるが、そんな工藤が出演するコンサートが、1時間ちょっとの尺とはいえ、500円で聴けるのだからかなりお得である。


プーランクの「常動曲」は、元々はピアノ曲である。「パリのモーツァルト」と呼ばれたプーランク。パリの街中を鼻歌交じりで歩いているような愉悦感が伝わってくる(私はパリには一度も行ったことがないのであるが)。


C.P.E.バッハの無伴奏フルートのためのソナタ。工藤によると、父親であるJ.S.バッハは無伴奏作品を書いているが、同時代の作曲家は無伴奏作品をほとんど手掛けていないそうである。
通常、3楽章の曲は、急・緩・急で構成されていることが多いが、この曲は、緩・急・急という珍しい構成になっている。時代の制約が感じられる部分もあるが、典雅な楽曲である。


ピアソラの「タンゴの歴史」。工藤はピアソラを「ピアソーラ」と発音する。
「タンゴの歴史」は、「娼家1900」「カフェ1930」「ナイトクラブ1960」「現代のコンサート」の4曲からなる。

売春宿で始まったといわれるアルゼンチンタンゴ。1曲目にはそれを表す「娼家1900」というタイトルが付けられている。タンゴの代表的な楽器であるバンドネオンの音色には売春宿の哀愁が宿っているなどといわれることもあるが、「娼家1900」はそれを感じさせない明るめの楽曲である。売春婦の気休めの音楽だったことを描いてもいるのだろう。
「カフェ1930」になると哀感が加わり、いわゆる「タンゴ」に近い音楽となる。「ナイトクラブ1960」は情熱的で、日本人が抱くタンゴのイメージに更に近づく。最後の「現代のコンサート」は、1990年を描いた楽曲で、ピアソラが世俗の音楽からクラシックにまで高めたタンゴが奏でられる。客席も盛り上がっていた。


ヴィラ=ロボスの5つの変奏曲より「叙情的な旋律」&「インディオへの讃歌」。
ヴィラ=ロボスはブラジルの作曲家だが、大萩は今年がブラジル独立200周年に当たるということを紹介する。
「ブラジル風バッハ」という楽曲の数々で知られるヴィラ=ロボス。「叙情的な旋律」はその名の通り南米の作曲家が書いた叙情的なギター曲という趣向だが、「インディオへの讃歌」はブルースのような要素も聞こえ、結構面白い曲となっている。


シャンカールの「魅惑の夜明け」。
インドのシタール奏者であるラヴィ・シャンカール。シタールというと、ビートルズの「ノルウェーの森」で鳴っていることで有名だが、「ノルウェーの森」でシタールを弾いているジョージ・ハリスンはシャンカールに憧れてシタールを始めており、後にはインドでシャンカールに直接シタールを教わったりもしている。
「魅惑の夜明け」は、大萩康司によると「鹿を呼ぶための音楽」だそうで(大萩は友人のフルート奏者である江戸聖一郎からその話を聞いたらしい)、工藤も「じゃあ奈良で演奏しなくちゃね」と語った。
当然ながら東洋音楽的な要素も盛り込まれた楽曲で、神秘性にも溢れている。


アンコール演奏は、ベートーヴェンのソナチネ。哀感のある曲で、それがタンゴにも繋がっている。

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