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2022年6月25日 (土)

BSプレミアム「テレサ・テン 歌声は永遠に 没後20年・歌に生きた生涯」 2015.5.8

2015年5月8日

午後10時から、BSプレミアム「テレサ・テン 歌声は永遠に 没後20年・歌に生きた生涯」を見る。

アジアの歌姫、テレサ・テン(鄧麗君。本名:鄧麗荺)の急逝から早いものでもう20年が過ぎた。彼女の死没直後のテレビの特集では、テレサの父親が国民党の元諜報部員だったということもあり、政治的側面が語られることが多かった(実際、テレサ・テンも第二次天安門事件への抗議集会に参加している)。ただ、今回は第二次天安門事件により、テレサ・テンが夢見ていた北京コンサートが幻に終わったことの悲しみに触れられている程度であり、何よりもテレサの歌手としての生き方にスポットが当てられている。

ナビゲーターは夏川りみ。夏川は子供の頃に、のど自慢荒らしを行っていたことを自身のコンサートのトークで述べていたが、そんな夏川が12歳の頃にテレサ・テンの「空港」を歌っている映像も流される(今と顔がほとんど変わっていない)。

「時の流れに身をまかせ」、「つぐない」など、台湾人の歌手が歌っているにも関わらず日本のスタンダードナンバーになっている曲がある時点でテレサの凄さはよくわかるのだが、祖国である台湾のみならず(彼女は父親と母親が国民党と共に台湾に渡ってきた外省人であり、台湾人というより中国人という意識が強かったと思われるが)、マレーシア、インドネシア、そしてアメリカなどでも活躍しており、台湾芸能史上最高のシンガーといって間違いないほどの存在であった。

私もテレサの歌は、日本語と、あと少しだけ北京語が出来るため北京語で歌ったりする。日本語バージョンしかない「別れの予感」を歌った回数が一番多いと思うが。日本語は詩的な言語、中国語は音楽的な言語(何しろ音に節が付いている)だと個人的には思っているが、テレサの楽曲は日本語でも北京語と遜色ないほど旋律に良く乗る。

彼女の代表曲の一つに「何日君再来」がある。中華民国時代の大陸側中国で作られた曲なのだが、中華人民共和国となった大陸側ではなく、台湾で歌い継がれ、テレサも歌うことになったものである。この曲のタイトルにもある「君」が国民党のことなのではないかという疑いで、一時期、中国では発禁になったりもしている。

文化大革命時の中国ではそれまでの文化が否定され、「民衆や労働者が主役の」という名目により軍歌や革命歌ばかりが作られるようになる(この時代、他の国では文化大革命の実体が情報として入ってきておらず、西側でも「面白い試みだ」と肯定的に評価する人もいた。その後、凄惨な映像が流されるようになり、実情を知った多くの人が腰を抜かしたと言われている)。だが、鄧小平による改革開放路線により、テレサ・テンも中国で聴かれるようになった、というのがこの番組の筋書きであるが、ともに私より5歳年上の、王菲や艾敬の回想によると、子供の頃に裏ルートでテレサ・テンのカセットテープが流通しており、二人とも密かに入手してイヤホンでテレサ・テンの歌声を聴いていたそうなので(王菲は北京、艾敬は瀋陽の出身である)、改革開放以前にもテレサの歌声は多くの中国人が知っていたことになる。この頃には、「昼には大鄧(鄧小平)が中国を支配し、夜には小鄧(テレサ・テン。鄧麗君)が中国を支配する」という言葉があったそうだ。

王菲は、1995年の年頭にテレサ・テンの楽曲ばかりをカバーしたアルバムを発表したが、その直後にテレサ・テンが他界してしまったため意気消沈していたといわれている。


テレサ・テンは生涯独身であったが、結婚したいと思う存在の男性も勿論いた。ただ、彼氏の母親が「結婚するなら歌手を辞めること」と条件を出したため、別れざるを得なかった。「時の流れに身をまかせ」で、歌われる「あなた」は「歌そのもの」のことだという種明かしがあるが、「あなた」と出会わない人生が「平凡」で「普通の暮らし」ということなのだが、相手が普通の男性ではなく「歌」なのだと考えれば全ての疑問は氷解する。

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