コンサートの記(785) ヤニック・パジェ 弦理論交響曲第2楽章「量子/QUANTUM」
2022年6月24日 京都芸術センターフリースペースにて
京都芸術センターフリースペースで、ヤニック・パジェ作曲の弦理論交響曲第2楽章「量子/QUANTUM」を聴くことにする。
演奏は午後7時から始まるが、フリースペースでは演奏会の前に展示が行われており、演奏に使われる黒川徹制作のオブジェや鉄琴、ドラムスなどを見ることが出来る。録音された音楽も流れているが、アンビエント系でありながら鋭いという独自のものである。
フランス出身のヤニック・パジェ。パリ国立高等音楽院で指揮とパーカッション、作曲を学び、イギリスの王立音楽大学でも指揮を学ぶ。ラムルー管弦楽団では、佐渡裕のアシスタントを5年に渡って務めた。2005年に佐渡裕の要請を受けて来日し、兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオーケストラ)の客員指揮者に就任。その後、京都に拠点を置き、演奏団体N‘SO KYOTO(ニューサウンドオーケストラ京都の略)を結成。2008年からは大阪教育大学の教授も務めている。指揮者としては、海外ではプロオーケストラも指揮しているが、日本では現在のところ、主にアマチュアオーケストラ相手の活動を行っている。
今年に入ってからは、京都府立府民ホールアルティで、アンサンブル九条山を指揮した。
弦理論交響曲は、第1楽章「相対性/I.RELATIVITY」が京都大学大学院理学研究所附属花山天文台前で野外パフォーマンスとして行われ(聴衆はロームシアター京都前に集合してバスで花山天文台まで向かったようである)、今後第3楽章が今年の9月にインスタレーションとして行われ(会場はまだ決まっていないようだ)、第4楽章は建仁寺の塔頭である両足院で10月にチェロ独奏で、第5楽章は会場未定ながら12月に40人の音楽家という大編成によって行われる予定である。
弦理論交響曲という難しそうなタイトルが付いているが、ヤニック・パジェと京都大学教授で理論物理学の研究者である橋本幸士による共同音楽プロジェクトとして、音楽と物理学の融合を目指して書かれたものである。
今回の第2楽章は、ヤニック・パジェのパーカッション独奏と、それをその場で録音して再生するシステムを利用した重奏演奏として展開される。スピーカーはフリースペース内の各所に配置されている。
最初に橋本幸士による影アナがあり、物質と反物質、二重スリット実験という3つの楽章の説明が行われるが、正直、何のことかよく分からない。それらがどう音楽に反映されるのかも分からないのだが、音楽として聞ければそれで十分という気もする。
まず、ヤニック・パジェが何かをもみしだく音で始まり(映像がモニターに映っていたが詳しくは確認出来ず)、続いて皿を金属製の小型のバチで叩いて音を出す。その後、鉄琴をヴァイオリンの弓で弾くという特殊奏法を行い、オブジェを次々に叩いた後に、ドラムセットを叩いて熱い音楽を生み出す。
上演時間は約1時間。即興の部分も多くあったと思われるが、全体の構成のバランスも良く、パジェの演奏の高揚感や、音響的な面白さなども伝わり、貴重な音楽空間の共有となった。
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