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2022年7月 1日 (金)

これまでに観た映画より(300) 「ショーシャンクの空に」4K上映

2022年6月29日 新京極のMOVIX京都にて

MOVIX京都で、アメリカ映画「ショーシャンクの空に」4K上映を観る。1994年公開の映画の4Kリマスタリング版上映である。原作:スティーヴン・キング、脚本・監督:フランク・ダラボン。ロードショー時には余り話題にならなかったようだが、再上映に大ヒットし、フィルムの永久保存が決まっている名画である。出演:ティム・ロビンス、モーガン・フリーマン、ボブ・ガントン、ウィリアム・サドラー、クランシー・ブラウン、ギル・ベローズ、ジェームズ・ホイットモア、マーク・ロルストンほか。アメリカのショーシャンク刑務所を舞台とした人間ドラマである。刑務所内が主舞台であるため、女性キャストが少ないのも特徴(いずれも刑務所外での登場)。

1947年、若くして大手銀行の副頭取まで出世したアンディ・デュフレーン(ティム・ロビンス)であるが、離婚を切り出してきた妻とその愛人のプロゴルファーを射殺したとして終身刑を宣告され、ショーシャンク刑務所に送られることになる。ショーシャンク刑務所では、同性愛者でもないのにその行為を行うことで悪名高いthe sistersと呼ばれる集団からいじめ抜かれるなど、最初のうちは地獄を味わうが、20年以上も収監されているレッド(愛称で本当の姓はレディング。演じるのはモーガン・フリーマン)に心を開くなど、徐々に仲間も増え、刑務所での生活に慣れていく。刑務所の中には洋の東西を問わず、知的水準に問題のある者が多く収監されているとされるが、その中にあって「掃き溜めに鶴」的なインテリであるアンディは経済面に強く、また文化面にも明るく、刑務所の上層部からも信頼を得るようになっていく。
レッドは刑務所内の調達係として一目置かれており、アンディも石を削ってチェスの駒を作りたいということで、ロックハンマーを手に入れてくれるよう頼む。

アンディは更に好待遇を得て、肉体労働から刑務所内図書室の司書への転身を許される。図書室にはブルックスという老人(ジェームズ・ホイットモア)が一人で務めていたが、蔵書数も乏しく、開架スペースもないなど問題山積み。ティムは蔵書の増加とスペースの確保を州議会に手紙で訴える。この訴えは6年越しでようやく叶うことになる。

やがてブルックスは入獄後半世紀を経て仮釈放が認められ、刑務所が手配したアパートに暮らし、スーパーマーケットの袋詰め係(アメリカのスーパーマーケットには精算された品を袋に入れるだけの係がいる。コロナ禍ではこうした人々が「感染を広める可能性がある」として次々と馘首されたことも話題になった)として働くようになるがシャバに馴染めず自殺する。

そんな中、刑務所長のノートン(ボブ・ガントン)の依頼によりティムは裏金作りにも手を貸すようになり、刑務所での彼の立場は受刑者としては最高位と目されるようになる。

1966年、トミーという若い男(ギル・ベローズ)が窃盗罪でショーシャンク刑務所に入獄。トミーは十分な教育を受けておらず、読み書きも満足に出来ない。妻子があるため一念発起したのか、アンディが図書室で密かに行っている教育プログラムに参加し、アルファベットの読み方から始めて、最後は高卒認定試験に合格するまでになる。トミーは若い頃から様々な刑務所に出たり入ったりを繰り返していたが、以前いた刑務所で、プロゴルファーとその愛人の殺害を自慢げに語る男がいたことをアンディらに告げる。無実を訴えるアンディは、所長のノートンに再審請求を申し出るのだが……。


名画として確固たる地位を築いているため、この映画に関して映画人や評論家など様々な人物が言及しているが、個人的には劇中にも登場する、アレクサンドル・デュマ・ペールの長編小説『モンテ・クリスト伯』を上手く用い、つかず離れずの展開にしているところが面白く、本の上手さを感じる。『モンテ・クリスト伯』は、無実の罪で投獄された男が脱獄後に大金持ちとなり、自身に罪をなすりつけた者達への復讐を図る話であるが、「ショーシャンクの空に」にも復讐はないのかと見せかけておいてあり、偽名を使って大富豪にもちゃんとなりという展開が待っている。大体において入獄ものとなると『モンテ・クリスト伯』(日本では黒岩涙香の訳による『巌窟王』というタイトルでも知られている)が世界文学史上最も有名であると思われるため、意図的に取り入れたのか、偶然そうなったのかまでは分からないが、劇中でタイトルが出てくる以上、一切知らずに脚本を書いたということはないはずで、読了済みの者の方がそうでない者よりも楽しめることは確かである。

『モンテ・クリスト伯』的傾向は抜きにしても、刑務所上層部の暴力性、収監者同士の問題、更には年老いてから仮出所した者の「生きづらさ」などをきちんと描いており、社会問題に切り込んでいるところにも好感が持てる。

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