柳月堂にて(5) シャルル・ミュンシュ指揮ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団(現:ニューヨーク・フィルハーモニック) サン=サーンス 交響曲第3番「オルガン付き」
2022年6月22日
出町柳の名曲喫茶・柳月堂で、シャルル・ミュンシュ指揮ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団(現:ニューヨーク・フィルハーモニック)の演奏で、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」を聴く。後年、手兵であるボストン交響楽団と演奏した盤もあるのだが、ニューヨーク・フィルとの演奏は1947年に録音されたモノラル盤である。CD化もされており、現在でも入手出来るようだ。オルガンは、エドゥアルド・ニース=ベルガーの演奏のようである。
フランスを代表する指揮者の一人であるシャルル・ミュンシュ。小澤征爾やシャルル・デュトワの師としても知られている。ドイツ国境に近いアルザス地方のストラスブール(出生当時はドイツ帝国領シュトラウスブルク)の生まれ。アルザス地方は戦争によってフランス領になったりドイツ領になったりした歴史を持つが、ミュンシュの家系はドイツ系で、元はカール・ミュンヒという名前であった。後にフランスに帰化してフランス風のシャルル・ミュンシュに名を改める。ヴァイオリニストとして活躍し、ライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサートマスターをしていた時代に、カペルマイスターを務めていたヴィルヘルム・フルトヴェングラーの影響を受けて指揮者に転身している。ミュンシュは即興的な音楽作りでも知られるが、「音楽は即興的でなければならない」を旨としたフルトヴェングラーの影響を受けていることは明らかである。
ミュンシュといえば、最晩年にパリ管弦楽団の初代音楽監督として録音したベルリオーズの幻想交響曲とブラームスの交響曲第1番という2つの名盤が有名である。すでに指揮者を引退していたミュンシュだが、アンドレ・マルローによる「世界に通用するフランスのオーケストラを創設したい」との強い希望によりパリ音楽院管弦楽団を発展的に改組して作られたパリ管弦楽団の音楽監督就任要請を受諾している。最後の力を振り絞って行われたこれらの演奏は、「狂気」すれすれの怪演でもあり、多くの人を虜にしてきた。
そんなこともあって、ミュンシュというと「ちょっと危ない」イメージもあるのだが、第二次大戦終結後まもなくに行われたこの録音では、端正でスマートな演奏を聴かせており、従来のミュンシュのイメージを覆す出来となっている。「熱い」イメージもあるミュンシュだが、それとは異なる演奏も行っていたことが分かる。
ミュンシュはボストン交響楽団の黄金時代を築いてもいるが、エレガントなボストン交響楽団の音に比べ、この当時のニューヨーク・フィルの音は都会的。今ではボストン響もニューヨーク・フィルもそれぞれの個性を保ちつつ、大きくは「アメリカ的」でくくれるオーケストラとなっているが、当時はかなり違う個性を持つ団体だったことがうかがえる。
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