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2022年9月16日 (金)

観劇感想精選(445) 「VAMP SHOW」2022

2022年9月10日 大阪の森ノ宮ピロティホールにて観劇

午後5時から、森ノ宮ピロティホールで、PARCO STAGE「VAMP SHOW」を観る。作:三谷幸喜、演出:河原雅彦。出演:岡山天音、平埜生成、戸塚純貴、塩野瑛久、尾上寛之、久保田紗友、菅原永二。

「VAMP SHOW」は、三谷幸喜が池田成志のために書き下ろしたホラーコメディで、1992年に初演。池田成志と板垣恭一が共同で演出を担当し、東京サンシャインボーイズの看板俳優だった西村雅彦や、個性派俳優として頭角を現しつつあった古田新太らが出演。三谷幸喜も一橋壮太朗の芸名で出演している。
その後、2001年にやはり池田成志の演出で再演。公演は映像収録されてPARCOからDVDとして発売されており、私はこれを視聴している。DVDは今でも購入することが出来るが、その時の出演は、堺雅人、佐々木蔵之介、橋本じゅん、河原雅彦、伊藤俊人、手塚とおる、松尾れい子という、当時、第一線に踊り出しつつあった俳優を起用した豪華なものであった。また2002年に逝去した伊藤俊人はこれが最後の舞台出演作となっている。
今は手元にDVDがないので記憶が曖昧だが、ジャケットの裏に、三谷幸喜が「この作品は、私と池田成志との友情から生まれた」といったような文章を寄稿していたことを覚えている。

今現在は劇作と演出の両方を行うことの多い三谷幸喜だが、東京サンシャインボーイズの上演形態が、作:三谷幸喜、演出:山田和也が基本であったことからも分かるとおり、元々は作と演出は分けるべきと考えていた人である。「VAMP SHOW」も出演はするが演出はしないのが基本路線となっており、三谷幸喜が「VAMP SHOW」の演出を手掛けたことは一度もない。

「VAMP SHOW」は三谷幸喜の作品の中でも異色作である。ほぼ若者しか出演せず、ストーリーも陰惨な場面が多い。現在、「鬱大河」などと評されている「鎌倉殿の13人」を手掛けている三谷幸喜だが、この機会に「VAMP SHOW」を再演するのも良いと思ったのかも知れない。再演に至る詳しい過程は分からないが、「鎌倉殿の13人」を見ていない人がこの芝居を観た場合、「え? 三谷幸喜ってこんな本を書く人だったの?」と戸惑うことも十分に考えられる。
また三谷作品としては珍しく、誰もが気づくレベルで論理破綻しており、三谷もそれを自覚していたと思われるが、そうまでしても内容を重視したかったということなのだと思われる。「孤独」というテーマを浮かび上がらせるために。


藤原是清(菅原永二)が一人駅長を務める田舎の寂しい駅が舞台である。小田巻香(おだまき・かおり。演じるのは久保田紗友)という若い女がホームに佇んでいる。事故があり、列車は遅れている。そこへ、島寿男(岡山天音)、坂東正勝(平埜生成)、丹下和美(戸塚純貴)、佐竹慎一(塩野瑛久)、野田英介(尾上寬之)の5人の若い男がやってくる。 彼らは同じ大学の落語研究会(「おち研」と略される場合が多いが、今回の上演では略称は「らく研」となっている)出身なのだが、とある理由で同じ病気に罹患してしまい、就職もままならず全国を放浪していた……。

タイトルにあるので、病気の正体を「吸血鬼(ヴァンパイヤ)」と明かしてしまっても特に問題はないと思われる。問題があるとしたら「ヴァンパイヤ」が何かのメタファーであるのかどうかだが、「正確に○○のメタファー」といえるものは三谷幸喜も想定していないと思われる。だが、初演から時を経て、何らかのメタファーに見えるということも確かである。あるとしても初演時は「俳優仲間」や「表現者」といった程度だった可能性は高いが、今は様々な理由で「上手く生きられない人」が思いのほか多いということも分かってきた。そうした一種の「種族」に当たる人にとっては、当初の想定を越えて胸に刺さる作品へと進化している可能性もある。その点では1992年の初演時よりも2022年現在の方が、背後にある三谷幸喜すら考えていなかった「可能性」を見出しやすくなっている。

2001年版では元落研副部長の佐竹慎一役で出演していた河原雅彦の演出。河原が演出した舞台作品にはいくつか接しているが、この「VAMP SHOW」でも河原雅彦らしいテンポが感じ取れ、個性が刻印されている。

2001年版の俳優が豪華なので、どうしてもそれと比較してしまうが、俳優陣は全般的に持ち味を上手く発揮出来ていたように思う。2001年版に比べると個性が弱く、セリフもものに出来ていないシーンが散見されるが、そもそも現在の若手俳優で再現することを目論んだプロジェクトであり、ないものねだりはしない方がいいだろう。よくやっていたと思う。

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