楽興の時(45) チューバ奏者・坂本光太×演出家・和田ながら 「ごろつく息」京都公演
2022年9月9日 木屋町のUrBANGUILDにて
午後7時から、木屋町のUrBANGUILDで、チューバ奏者・坂本光太×演出家・和田ながら「ごろつく息」を聴く。チューバの特殊演奏とパフォーマンスからなるプログラム。出演は、坂本光太、長洲仁美(俳優)、杉山萌嘉(すぎやま・もえか。ピアニストただし今回はピアノ演奏はせず)。
坂本光太は、1990年生まれのチューバ奏者。現代音楽、即興演奏を得意とする。現在は京都女子大学の助教を務めている。
杉山萌嘉は、1991年生まれのピアニスト。東京音楽大学附属高校ピアノ演奏家コースを卒業後に渡独し、フライブルク音楽大学を卒業。更にカールスルーエ音楽大学の修士課程を修了している。カールスルーエ音楽大学には管楽器科の伴奏助手として勤務。帰国後は京都を拠点としている。
長洲仁美は、茨城県生まれ。京都造形芸術大学を卒業後に、和田ながらのしたためなどに出演している。
プログラムは、「浮浪」(長洲仁美の一人語り)、チャーリー・ストラウリッジの「カテゴリー」、ヴィンコ・グロボカールの「エシャンジュ」(坂本光太&長洲仁美)、坂本光太と杉山萌嘉の「オーディションピース」(二人によるモノローグ)、池田萌の「身体と管楽器奏者による序奏、プレリュードと擬似的なフーガ」(坂本光太&長洲仁美)、坂本光太と長洲仁美による「一番そばにいる」
長洲仁美による「浮浪」は、超口語演劇を模した一人語りだが、個人的には超口語演劇は、友達面してズカズカ人の家に上がり込んで来る厚かましい奴のようで嫌いである。
チャーリー・ストラウリッジの「カテゴリー」は、演奏するというよりもチューバの可能性を広げる音楽で、蠕動のような響きから草原を渡る風のような音へと変わり、機械音のようなものへと変貌していく。
ヴィンコ・グロボカールの「エシャンジュ」は、鍋の蓋(のようなもの)、プラスチック製の盥、道路工事のコーンなどでチューバをミュートしていく音楽で、指示はスマホの画面に映し出され、ミュートするものは長洲仁美がチューバのベルへと指示に沿って差し込んでいく。実のところ、入れるものによって音色が極端に変わるということはなく、むしろマウスピースの使い方によって音が変化していく。動物の声のように聞こえる瞬間があるが、それが「吐く息」のよって作られる音色なのだということを再確認させられる。
坂本光太と杉山萌嘉による「オーディションピース」。二人は楽器は演奏せず、演奏している時の心の声を語る。「のだめカンタービレ」の演奏シーンの拡大版のようでもあり、あるいはコロナ禍にニコニコ動画で行われた無観客演奏の配信時に観客が演奏中の心の声を書き込んだように、今回は演奏家側が演奏中の心の声を届けるという試み。ただし音楽は奏でられないし聞こえない。一応、台本はあるようだが、譜面を見ながら即興で語る部分も多そうである。
二人とも音楽家であるが、喋りもなかなか達者であった。
池田萌の「身体と管楽器奏者による序奏、プレリュードと擬似的なフーガ」。
坂本光太と長洲仁美がペットボトル入りのミネラルウォーターを手に登場。坂本は、マウスピースを接続したビニールチューブを持っているが、先には朝顔が着いていて、これで演奏を行う。演奏中は坂本が長洲を抱え上げ、人体がチューバに見立てられる。
長洲は、水を一口含む度に、「屯田兵」「富田林」といったように「と」で始まる単語を口ずさむのだが(私だったら途中からさりげなく「徳川十五代将軍全員の名前」をつっかえつつ挙げるという演出にしたと思う)、ビニールチューブチューバの演奏は、「『ドローン』から『ローン』を取り、濁点を抜いた『ト』」の音で演奏される。
「一番そばにいる」は、坂本の演奏するチューバのすぐそばに長洲がいて、メロディーを模倣したり(もう少し近づけても良かったかも知れない)、状況を説明したりで(今いるUrBANGUILDから、高瀬川と鴨川の間、そして京都盆地、更には日本全土へと拡がり、またすぐそばの状況へと戻ってくる)、格段面白いというほどではないのだが、親しみの持てる画を作り出していた。
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