コンサートの記(807) ジョン・アクセルロッド指揮京都市交響楽団第671回定期演奏会 マーラー 交響曲第2番「復活」
2022年9月25日 京都コンサートホールにて
午後2時30分から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団の第671回定期演奏会を聴く。今日の指揮者は、京響首席客演指揮者のジョン・アクセルロッド。マーラーの交響曲第2番「復活」1曲勝負である。
セレモニアルな場面で演奏されることの多いマーラーの交響曲第2番「復活」。20世紀半ばまでは、そうした折りにはベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」が演奏されることが多かったが、マーラーの交響曲がコンサートレパートリーに定着するようになってからは、「復活」が演奏されることも多くなった。個人的には「復活」の実演に接するのは今日で3度目だが、初めての聴いたのは大阪音楽大学創立90周年記念(於ザ・シンフォニーホール。西本智実指揮大阪音楽大学カレッジ・オペラハウス管弦楽団+大阪音楽大学関係者ほか)、2度目はパーヴォ・ヤルヴィのNHK交響楽団首席指揮者就任記念演奏会(於・NHKホール)といずれも祝祭的な節目で演奏されている。アクセルロッドと京響の「復活」も本来はアクセルロッドの京響首席客演指揮者就任記念として演奏されるはずだったのだが、コロナによって今回に延期となっている。ということで特別な折りでの演奏ではなくなったが、コロナ禍からの「復活」の烽火を京都から上げる演奏会となった。
午後2時頃から、ジョン・アクセルロッドによるプレトークがある(通訳:小松みゆき)。アクセルロッドは、1995年に小澤征爾が終戦50年記念演奏会として長崎で「復活」を取り上げたことに触れ、「復活」という曲目の特別性について語る。アクセルロッドは、第九(日本語で「第九」と発音する)やベートーヴェンの「田園」についても触れ、「復活」はそれらと違ってマーラーの哲学や精神を描いた作品であるとする解釈を披露していた。
またコーラスはマスクをつけながらの歌唱となることを明かし、コーラスが活躍する第5楽章には、キリスト教、ユダヤ教、仏教などの各宗教を超えたメッセージがあると述べる。
ちなみに、私が生まれて初めて買った交響曲のCDがマーラーの交響曲第2番「復活」である。高校1年生の時で、CBSソニー(現ソニー・クラシカル)から出ていたロリン・マゼール指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ほかによる演奏であった。「復活」というタイトルとウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏ということに惹かれて購入している。他に比較対象がなかったが、曲の巨大さと演奏の力強さに驚いた記憶がある。
京都市交響楽団がマーラーの交響曲第2番「復活」を取り上げるのは、これで5回目だが、これまでの4回は全て京都会館第1ホールでの演奏で、本拠地が京都コンサートホールに移ってからは初の「復活」となるようである。
最初に取り上げたられたのは、山田一雄の指揮による1974年5月18日の演奏会で、2度目も山田一雄指揮による1981年5月29日の京響創立25周年演奏会である。1981年の演奏はビクターによってライブ録音されており、今もタワーレコードから出ている復刻版CDを入手することが出来る。
3度目に取り上げられたのはその5年後の1986年6月18日の京響創立30周年記念演奏会に於いてで、指揮は小林研一郎が務めている。
4度目の演奏は、井上道義の指揮によって1990年11月15日に、京都国際音楽祭の一環として行われている。
今回も特別な節目ではないものの、京都の秋 音楽祭の演目として「復活」が取り上げられている。
今日のコンサートマスターは、京都市交響楽団特別名誉友情コンサートマスターの豊島泰嗣。フォアシュピーラーに泉原隆志。ドイツ式の現代配置による演奏で、今日はヴィオラの首席にソロ首席ヴィオラ奏者の店村眞積が入る。特別首席チェロ奏者の山本裕康は降り番で、チェロの第1プルトは、中西雅音(まさお。チェロ副首席奏者)とドナルド・リッチャーが務める。
ソプラノ独唱はテオドラ・ゲオルギュー(以前にも実演に接したことがあるが、有名ソプラノ歌手であるアンジェラ・ゲオルギューとは血縁関係にはないようである)、メゾ・ソプラノ独唱は山下牧子。合唱は京響コーラス。コーラスはポディウム(P席)に陣取っての歌唱である。
アクセルロッドのテンポは中庸。各楽器の分離は明瞭であり、音色も明るめで、そのためか演奏時間約80分の大作とは思えないほど時が過ぎるのが速く感じられた。
大音量での迫力も十分だがそれ以上にノスタルジックな場面での透明で優しい音色が印象的であった。京響も強弱硬軟自在の演奏でアクセルロッドの指揮に応える。
舞台上の段差を目一杯使っての演奏で、前を通る隙間がないということで、山下牧子とテオドラ・ゲオルギューはいったん客席通路に下りて(今日は最前列は発売されていない)指揮台の近くにある階段を上がって持ち場についていた。二人ともアクセルロッドのほぼ真横に立って歌うのだが、アクセルロッドの振る指揮棒がゲオルギューの顔に当たりそうに思えて少しヒヤヒヤした。
その山下とゲオルギューの歌唱も言うことなしであり、マイクをつけての歌唱となった京響コーラスも神秘的にして輝かしい歌唱を展開した。
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