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2022年10月18日 (火)

観劇感想精選(447) 「FORTUNE(フォーチュン)」

2020年2月15日 大阪の森ノ宮ピロティホールにて観劇

午後6時30分から、大阪の森ノ宮ピロティホールで「FORTUNE(フォーチュン)」を観る。ゲーテの「ファウスト」を原案に、設定を現代のイギリスの映画界に置き換えて描いた作品である。作:サイモン・スティーヴンス、テキスト日本語訳:広田敦郎。演出:ショーン・ホームズ。美術・衣装:ポール・ウィリス。出演:森田剛、吉岡里帆、田畑智子、市川しんぺー、平田敦子、菅原永二、内田亜希子、皆本麻帆、前原滉、斉藤直樹、津村知与支、根岸季衣、鶴見辰吾。

ロンドン。映画監督であるフォーチュン・ジョージ(森田剛)は、次の仕事を一緒にすることになったプロデューサーのマギー(吉岡里帆)と出会う。マギーに一目惚れしたフォーチュンであったが、マギーは既婚者。夫のデイヴィッドは構造エンジニアで、道路工事現場などで指揮に当たっているという。フォーチュンはマギーに告白するが、あっさり断られてしまう。
フォーチュンの父親のショーン(鶴見辰吾)は、飲んだくれのろくでなしであり、家を出てイギリス中をフラフラしていたが、52歳の時にリヴァプールで自殺している。母親のキャサリン(根岸季衣)は花屋を経営しており、慎ましやかに暮らしている。フォーチュンは少々マザコンの気があるようである。
フォーチュンは、ネット上で知り合ったルーシーという女性(田畑智子)と会う。ルーシーが開設している「シルクロード」というサイトを見るよう言われるフォーチュン。そこには不思議な契約が書かれている。
フォーチュンは現在41歳であり、父親の享年を抜く53歳になるまでの12年間、望んだものが手に入る思うがままの生活を送ることが出来るという契約に血文字でサインする。望みは主に3つ。53歳の7月1日まで生きること、映画監督としての世界的な成功、そしてマギーである。だが望みが叶う代わりにフォーチュンは魂を売る必要がある。
フォーチュンは喩えとして、「木を素手で引き裂けるようになる」「水がワインに変わる」などを挙げるが、それらは全て現実のものとなる。そしてまず最初に起こった大きな出来事は、マギーの夫、デイヴィッドの事故死である。フォーチュンは「誰が殺して欲しいと言った!」とルーシーをなじるのだが……。

ホラー作品であり、恐怖を描く術にはかなり長けている。演出の進め方は巧みで、同じステージ上で現実と魔界が交錯する様が見えるような独特の不気味さを醸し出している。音楽の使い方も実に上手い。
だがストーリーも面白いことは面白いのだが、ストーリーそのもので終わってしまうため、残るものがほとんどない。展開に特になんのひねりもないため、「3時近く費やしてこれなの?」と拍子抜けする。この内容ならわざわざ舞台にする必要もない。壮大な無駄遣いという印象も受ける。劇中に、「過ぎ去った時間を戻すことは出来ない」という忠告のセリフもあるが、皮肉に思えてしまった。


連続ドラマ「カルテット」で大いに注目されながら、主演ドラマは低視聴率、主演映画は大コケと伸び悩んでいる吉岡里帆。真面目すぎる性格が役の幅を狭めている印象も受けるが、演技に関してはかなり才能がありそうである。基本的に自然体の構えであるが、感情をちょっと動かしただけで大きくスライドしたように感じられるというのはやはり並の女優では出来ないことである。表現の幅がかなり広いタイプと見た。ただ、マギーは終盤になるとほとんど出てこなくなってしまうため、役としての美味しさは十分ではないかも知れない。
最も良かったのは悪魔のルーシー役を演じた田畑智子である。飛び抜けて良かったと書いても構わないだろう。普通の女性やいいとこのお嬢さんを演じることが多い田畑智子だが、今回はコケティッシュにしてサディスティックという役を見事にものにしており、実力を十二分に示した。これからも従来のイメージを覆す役のオファーが来そうである。
タイトルロール(「幸運とはなにか」を問うタイトルであるが、芝居を観た後では薄っぺらく感じられてしまう)を演じた森田剛も切れがありながら重厚という特筆すべき出来であり、いい味を出していた根岸季衣と鶴見辰吾を含めて役者陣は満点である。それだけになんとも惜しい作品であった。

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