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2022年11月29日 (火)

立川志の輔独演会@春秋座2022 「ハナコ」&「帯久」

2022年11月7日 京都芸術劇場春秋座にて

午後6時から、京都芸術劇場春秋座で、立川志の輔独演会を聴く。

まず前座として志の輔の七番弟子である志の麿による「桃太郎」が語られる。昔の子どもと今の子どもでは様々なことに対する態度が違い、昔の子どもは寝る前の絵本の読み聞かせをちゃんと聞いて寝たが、今の子どもは色々文句を言うという。
読まれる絵本は「桃太郎」。今の子どもは、民俗学的立場から桃太郎の話を解釈してみせるという話である。

志の輔の落語は2曲あるが、まず新作落語の「ハナコ」が語られる。ハナコというのは牛の名前である。
志の輔は、「ようこそいらっしゃいました。こっちの方が遠くから来ているんですが」と語った後で、東京では、コロナの第八波が来るのでは囁かれているが、日本人はもうコロナに対する予めの準備が出来ているというところから、「予め」に関する話となり、「私の落語は創作落語で、他にやる人がいないんです。こうした800人入る劇場で全員が面白いと思うかどうかは分からないということを予め申し上げておきます」と述べてから本編に入る。
温泉宿の話。3人の男性客がやってきて、それを女将が出迎えるのだが、「今日はマエダスミコが休みでございます」と謎の女性の名前を挙げる。マエダスミコというのはこの宿の仲居らしい。何かあって遅れても、「ああマエダスミコが休みだからか」思って貰えるよう、予め話しておいたのだという。
客の一人が床の間に掛かっている絵を「雪舟の絵だ」と言う。実は、「なんでも鑑定団」の収録があった時に、旅館からはこの雪舟の絵を出品したのだが、「3000円」だったそうで、真っ赤な偽物である。ただ絵になにかあっても心配無用と言うことで、予め偽物だと明かしておいたのである。
泊まり客が露天風呂に行くというので、仲居のキョウコが案内するのだが、外に出て源泉を見に行くも、露天風呂時代は泊まり客の部屋の隣にあって、かなりの遠回りをしてしまったことが明らかになる。
さて、泊まり客の一人が、露天風呂から庭を見ていると、竹藪をかき分けて女将がスコップ(実は関東と関西では「スコップ」という言葉から連想するものが異なる。関東では大きめのものが「スコップ」で小さいものが「シャベル」なのだが、関西では真逆である)を持って出てくる。女将が何をしているのかについて、泊まり客達の予想は割れる。
温泉から出た後は、黒毛和牛の食べ放題なのであるが、黒毛の牛であるハナコが引っ張ってこられる。本当に黒毛和牛なのか疑う人がいるので、まず捌く前のものを予め見せるというのだが、泊まり客達から「もう食べられないよ」と不興を買う。
さて、なぜ女将がスコップを持って歩いていたのか、についてだが、ここでは明かさないでおく。


第2部では、「帯久」が語られる。本町というところの二丁目に呉服屋を構える和泉屋与兵衛と四丁目で帯屋を営む帯屋久七の話である。帯屋は商売が上手くいっておらず、「売れず屋」などと陰口を叩かれている。

帯屋久七が和泉屋与兵衛のところへ何度も借金に来る。借りては1ヶ月経たないうちに返すのだが、段々借りる額が増えていき、11月の頭に百両借りてからは1ヶ月以上立っても返しに来なかった。大晦日の日に帯屋は百両を返しに来たのだが、与兵衛は外に出る用事があり、帯屋は返すはずの百両と共に残された。この時、帯屋に魔が差し、百両を返さずに懐に入れて和泉屋を後にする。正月になると帯屋はバーゲンセールを開始、「あこぎ」と呼ばれる商法で売り上げを伸ばす。

和泉屋与兵衛はその後、災難続き、娘が病死し、妻も病死し、しかももらい火で和泉屋が全焼する。与兵衛は、ショックで病に倒れ、番頭の武兵衛の看病を受けるのだった。そうして10年が過ぎ、与兵衛は帯屋に借金を申し出るのだが、あえなく追い出される。帯屋の裏庭で煙草を吸った与兵衛は、火玉をかんなくずの中に投げ入れる。悪気があったわけではないが、火付けということで南奉行所に訴えられ、というところから大岡政談が始まる。志の輔は、「大岡越前」のテーマ曲を口ずさむ。

五十両を年賦一両ずつで五十年掛けて返すという下りからは、幕末の薩摩藩家老である調所広郷のアイデアが連想されるが、おそらく関係はないのであろう。

志の輔の語りは今日も絶妙。観る者を引きつける強力な引力を発しているようでもある。

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