コンサートの記(815) パスカル・ロフェ指揮 「京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクト vol.3 セルゲイ・ディアギレフ生誕150年記念公演『天才が見つけた天才たち』」
2022年11月6日 京都コンサートホールにて
午後2時から、京都コンサートホールで、「京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクト vol.3 セルゲイ・ディアギレフ生誕150年記念公演『天才が見つけた天才たち』」を聴く。京都市交響楽団をパスカル・ロフェが指揮したコンサート。定期演奏会などに比べるとチケット料金が高めで、客層も微妙に異なるような気がする。
バレエ・リュス(ロシア・バレエ団)の興行主として多くの名作に関わったことで知られるセルゲイ・ディアギレフ。リムスキー=コルサコフらに作曲を師事し、絵画などの芸術の擁護者として名を広めた後で音楽プロデュースを手掛けるようになり、バレエ・リュスを旗揚げすることになる。ストラヴィンスキーの「春の祭典」の騒動が有名だが、ドビュッシーやラヴェルなどフランスの作曲家を起用した有名バレエ作品を生み出してもいる。生み出すと書いたが、芸術家としては彼は自らの才能に早々に見切りをつけており、「生み出す」天才ではなく、本物の実力者を「見出す」天才であった。
今日の演奏曲目は、ストラヴィンスキーの「火の鳥」組曲(1919年版)、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番(ピアノ独奏:アレクセイ・ヴォロディン)、リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェヘラザード」
今日のコンサートマスターは、「組長」こと石田泰尚。泉原隆志は降り番で、フォアシュピーラーに尾﨑平。今日はコントラバスに客演が多く、そのことが関係したのか低音の鳴りが今ひとつに感じられた。フルート首席の上野博昭、オーボエ首席の髙山郁子、クラリネット首席の小谷口直子は全編に出演。ホルン首席の垣本昌芳、トランペット首席のハラルド・ナエス、ファゴット首席の中野陽一郎らは降り番であった(ハラルド・ナエスは無料パンフレットに名前は載っていたが姿は見せず)。チェロ首席にはルドヴィート・カンタが客演で入る。
ストラヴィンスキーの「火の鳥」。パスカル・ロフェらしい明晰で分離の優れた演奏である。迫力よりも構造重視であり、こうした演奏をさせるとロフェは抜群の適性を見せる。
プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番。「蜜蜂と遠雷」でも知名度を上げた曲だが、元々、超絶技巧のかっこいい曲としてピアニストに人気であり、コンクールなどではかなり取り上げられることが多いようである。
ソリストのアレクセイ・ヴォロディンは、モスクワ音楽院に学び、ゲザ・アンダ国際コンクールに優勝。協奏曲のソリストとしても多くの名指揮者と共演を重ねている。
名手のヴォロディンであるが、緩やかな部分でのリリシズムが魅力的。高音の冴えも素晴らしい。速い部分が団子になって聞こえたのだが、ペダリングにも問題はなく、おそらくホールの音響と今日の私の席(2階席のサイド、といっても2階席はサイドとポディウムしかない訳だが、いずれにせよピアノを聴くのに適した席ではない)の問題であると思われる。2階席のレフトサイドで聴いたが、あるいは同じ2階席ならライトサイドの方が音は良かったかも知れない。
アンコール演奏は、ショパンの12のエチュード作品25-1。リリカルな演奏であった。
リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェヘラザード」。ロフェは京響から立体的な音響を引き出し、コンサートマスターの石田泰尚のソロも見た目とは裏腹に美麗にして優しげで、「美演」として高く評価したい演奏となった。ロフェはこれらの曲目を手掛けると本当に上手い。
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