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2022年12月 7日 (水)

観劇感想精選(450) 「凍える」

2022年11月5日 西宮北口の兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールにて観劇

午後6時から、兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールで、「凍える」を観る。作:ブライオニー・レイヴァリー、テキスト日本語訳:平川大作、演出:栗山民也。坂本昌行、長野里美、鈴木杏による三人芝居である。

三人芝居であるが、序盤はそれぞれ一人ずつが独り言を言ったり語ったりするシーンが続き、一人芝居の集合体といった趣である。中盤以降は会話を交わすシーンも出てくるが、三人で会話を行うシーンは存在しない。たまたまかも知れないが、コロナ下に行うには適した作品である(もっとも顔を近づける場面などは存在する)。

犯罪と幼児期の虐待がテーマとなっており、ストレスが脳に与える影響が語られる。人体実験が出来ないため脳については不明の部分が圧倒的に多いが、CTスキャンなどを行うと脳の萎縮した場所などが分かるため、心の傷が脳の傷に直結しているということも最近では分かるようになってきた。

イギリスが舞台であるが、冒頭には鈴木杏演じる精神科医のアニータ(研究医だろうか。デイヴィッドという男性と共同で幼時のストレスが脳に与える影響を研究しており、犯罪者も幼時に虐待などを受けて脳に損傷が見られるケースが多いことを学会で発表する)がニューヨークを去る場面が置かれている。アニータはアイスランド系であり、苗字も変わったものだ。

今から21年前に事件は起きた。ナンシー(長野里美。ちなみに「ナンシー」というのは「アン」の愛称である)の次女で10歳のローナが行方不明になる。イギリスでは幼児の失踪事件も多く、ナンシーと夫のボブ(「ボブ」というのは「ロバート」の愛称である)は失踪した子どもの親達が作る互助会のグループ「炎」に入って活動を続けるが、ローナの行方は知れない。その間にナンシーと夫や長女のイングリットとの関係もきしみ始める。

それから21年が経ち、ラルフ(坂本昌行)が連続児童殺害の容疑で逮捕される。殺害された児童の中にローナの名があった。


犯罪者と心の傷に迫る作品であり、興味深いところも沢山あるのだが、知識として提示されただけで、解決が何一つなされないというのが物足りないところである(解決しようがない問題であり、無理矢理解決させてはいけないのかも知れないが)。ラルフ(「ごめんあそばせ」という男らしからぬ言葉遣いをすることがあり、DVを受けていると思われる母親の姿がトラウマとして焼き付いているのかも知れない)の幼時に対する掘り下げがもっとあった方が物語性も高まるので良いように思われるのだが、グロテスクになる可能性も高いため敢えて避けた可能性もある。
ラルフの狂気の場面は、可笑しくなったり大仰になったりする直前で止まる優れた表現で、坂本昌行の俳優としてのセンスの高さが感じられ、長野里美も鈴木杏も自らの個性を十分に発揮した演技を行っていたように思う。

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