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2022年12月 1日 (木)

コンサートの記(816) 沼尻竜典オペラセレクション NISSAY OPERA 2022 ロッシーニ 歌劇「セビリアの理髪師」@びわ湖ホール

2022年11月27日 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール大ホールにて

午後2時から、びわ湖ホール大ホールで、沼尻竜典オペラセレクション NISSAY OPERA 2022 ロッシーニのオペラ「セビリアの理髪師」を観る。演奏は、沼尻竜典指揮日本センチュリー交響楽団。演出は粟國淳。出演はWキャストで、今日の出演は、小堀勇介(アルマヴィーヴァ伯爵)、山下裕賀(やました・ひろか。ロジーナ)、黒田祐貴(フィガロ)、久保田真澄(バルトロ)、斉木健詞(ドン・バジリオ)、守谷由香(ベルタ)、川野貴之(フィオレッロ)、木幡雅志(隊長)、宮本俊一(みやもと・としかず。アンブロージョ)、及川貢(公証人)。ギター演奏:黄敬(こう・けい)。チェンバロ演奏:平塚洋子。合唱:C.ヴィレッジシンガーズ。

オペラ作曲家として一大ブームを築きながら、37歳の若さで引退したということもあり、多くの作品が序曲のみが知られるだけの存在となっているジョアキーノ・ロッシーニ。20世紀も後半になると作品の見直しが始まり、いくつかの作品は上演されたり録音されたりするようになっているが、生前から途切れることなく上演されているのは、「セビリアの理髪師」だけである。

「セビリアの理髪師」は、ボーマルシェによるフィガロ三部作の第1弾である。第2作の「フィガロの結婚」は先にモーツァルトが作曲しており、オペラ作品の中でも1、2を争うほどの人気作となっているが、「セビリアの理髪師」も「フィガロの結婚」効果が影響したのか否かは正確には不明であるが、「フィガロの結婚」の前日譚ということで人気を集めた可能性は大いにあると思われる。

フィガロは、理髪師ということになっているが、「私は街のなんでも屋」というアリアが示すとおり、理髪だけではなく外科手術や遺体の処理なども行う卑賤の身分である。フィガロは自分の店を持っているようだが(演出によってはフィガロの妄想ということになったりもする)基本的にはホームレスで生活している人々であり、バルトロ博士が内科医でエリートである一方で、同じ医術を扱っていてもこの当時の外科関係者(理髪師が兼ねていた。今も理髪店には外科関係を扱っていた時の名残であるサインポールが設置されていることが多い)は他人の体に触れる仕事ということで被差別民の扱いであった。
このオペラには伯爵身分であるアルマヴィーヴァ伯爵、貴族身分を表す「ドン」の付くバルトロやバジリオなどが登場するが、そうした身分差をはねのけて活躍するフィガロの姿が痛快であったりする。

粟國淳の演出は、テント小屋内(赤テント風)を表すような背景と回り舞台(美術:横田あつみ)を駆使したもので、物語が図式化される部分があるなど、分かりやすいように工夫がなされ、またテント芝居や見世物小屋のような活気を舞台上にもたらしていた。出演者達の踊り(振付:伊藤範子)や身のこなしなども楽しい。

歌唱もかなり充実。若手中心のキャストだと思われるが、声量に声の張りと艶、心理描写の巧みさなど、私の想像する日本人オペラ歌手の歌唱を超えたレベルで歌われており、かなり頼もしい。

沼尻の指揮する日本センチュリー響も、イタリアオペラらしいカンタービレや音のキレ、迫力満点のロッシーニクレッシェンドなど、かなり上質の演奏を展開しており、沼尻の円熟とセンチュリー響の成長を実感させる出来となっていた。

Dsc_1992

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