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2022年12月13日 (火)

コンサートの記(820) 原田慶太楼指揮 京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2022「ザ・フォース・オブ・オーケストラ」第3回「オールウェイズ・ストリングス」

2022年12月4日 京都コンサートホールにて

午後2時から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2022「ザ・フォース・オブ・オーケストラ」第3回「オールウェイズ・ストリングス」を聴く。今日の指揮は若手の原田慶太楼。ナビゲーターはガレッジセール。

本編の前に、午後1時15分からロビーイベント「原田マエストロといっしょ!」が行われる。原田慶太楼が指揮者の仕事についてレクチャーするもので、弦楽アンサンブル(ヴァイオリン2。ヴィオラ、チェロ、コントラバスが1ずつ。奏者は全員若手の女性である)を指揮してモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」とドヴォルザークの「ユモレスク」を演奏し、テンポや強弱、表情によって同じ曲でも印象が変わることを聴き手に示す。子どものための指揮体験コーナーもあり、原田は指揮のスタイルや「好きなもの嫌いなもの」をイメージした描き分けの変化などをアドバイスしていた。


本編の曲目は、チャイコフスキーの弦楽セレナードから第1楽章、ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲ニ短調から第3楽章(ヴァイオリン独奏:会田莉凡)、ブルッフのヴィオラと管弦楽のためのロマンス(ヴィオラ独奏:小峰航一)、ポッパーのハンガリー狂詩曲(チェロ独奏:山本裕康)、ディッタースドルフのコントラバス協奏曲ホ長調から第1楽章(コントラバス独奏:黒川冬貴)、マイケル・エイブルスの「デライツ・アンド・ダンスイズ」(弦楽四重奏と弦楽オーケストラのための作品。弦楽四重奏:会田莉凡、安井優子、小峰航一、山本裕康)。


今日のコンサートマスターは京響特別客演コンサートマスターの会田莉凡(りぼん)。泉原隆志は降り番で、フォアシュピーラーに尾﨑平。今日はヴァイオリン両翼の古典配置をベースにした布陣である。
原田は指揮台を用いず、舞台に直接立って指揮を行う。


チャイコフスキーの弦楽セレナードから第1楽章。原田はノンタクトでの指揮。瑞々しくスプリングの良く効いた歌を京響から引き出す。

演奏終了後にガレッジセールの二人が登場。弦楽セレナードについて、川田広樹が曲目の紹介を行い、ゴリが「オー人事のCMでお馴染みの」と曲について語る。
ゴリが、「原田さん、熱量が凄いですね」と語り、原田が「今、ダイエットしてるんで」と応え、ゴリが「本番終わる頃にはガリガリですね」と返していた。

今回は協奏曲がメインとなるが、いずれも京都市交響楽団の首席奏者がソリストを務めるということで、「演奏が終わったらそれ(首席というポジションと楽器)について聞いてみましょう」ということになる。


ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲ニ短調。京響客演コンサートマスターの会田莉凡がソリストを務める。その間、コンサートマスターの位置には尾﨑が座るが、横に人を置かず(プルトを作らず)、コンマス一人体制となる。
超絶技巧が特徴のハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲。演奏家によっては技巧をひけらかすように弾く場合もあるが、会田の場合は地に足の付いた堅実なソロを奏でた。

ガレッジセールの二人がコンサートマスターについて会田に聞く。演奏の前に原田が、コンサートマスターについては、「サッカーに喩えるとキャプテンのようなもの。(指揮者が)監督でキャプテン」
ゴリ「エースストライカーのようなものですかね」
原田「そうですね」
ゴリ「今日はコンサートマスターが女性ということで、女性版堂安が現れるという」
というやり取りがあった。
会田は、「5歳からヴァイオリンを初めて8歳からアンサンブルで弾き始めて」ということでアンサンブルの楽しさを知ったそうで、ソロで弾こうと思ったことは余りないそうである。プロの演奏家になり、コンサートマスターになるとも思っていなかったそうだ。
ゴリ「原田さんは何歳から指揮者になろうと思われたんですか?」
原田「僕は生まれる前から」
ゴリ「嘘つけ!」
原田「僕のことはどうでもいいです」


ブルッフのヴィオラと管弦楽のためのロマンス。曲名通りロマンティックな曲である。独奏の小峰航一は京響の首席ヴィオラ奏者。リリカルな演奏を展開する。
首席ヴィオラ奏者という立場について小峰は、「コンサートマスターがキャプテンだとするとチームリーダー」と述べる。京響のヴィオラパートは男性は2人で後は全員女性であるが、小峰について二人の女性ヴィオラ奏者は、「頼りになるチームリーダー」、「面倒くさい男」と対照的な印象を述べ、小峰はヴィオラのメンバーについて「キャラが濃い」と語った。ヴィオラの役割について小峰は「彩り」と語る。
ヴィオラ奏者は最初からヴィオラを習っていた訳ではなく、まずヴァイオリンを習い、ある時点からヴィオラに転向するというケースが多い。小峰もまずはヴァイオリンを習っていたが、11歳の時にヴィオラに転向。性格的に「クラスの人気者でも陽キャでもない」ということでヴァイオリンよりもヴィオラの方が合っていたそうである。


ホッパーのハンガリー狂詩曲。チェロ独奏を受け持つのは、京響特別首席奏者の山本裕康。いぶし銀のような渋いソロを奏でる。ガレッジセールの質問はチェロ台とエンドピンについて。エンドピンは20世紀の最初に登場し、それ以前はチェロの本体を首から提げて演奏してたそうである。
山本がチェロを選んだ理由については、「よく言われることですが人間の声に一番近い」と述べていた。


ディッタースドルフのコントラバス協奏曲。ソリストは京響首席コントラバス奏者の黒川冬貴。典雅なソロを奏でる。

ディッタースドルフについては原田は、「ハイドンやモーツァルトと親しく」「ディッタースドルフが第1ヴァイオリン、ハイドンが第2ヴァイオリン、モーツァルトがヴィオラ」という編成で演奏旅行を行ったこともあると話す。

コントラバスを選んで理由について黒川は、「オーケストラの奏者になりたいと思ったのが中学生の時で、そこからだと(間に合うのは)コントラバスだけ」と述べていた。コントラバスは吹奏楽の編成に弦楽器としては唯一入っており、吹奏楽部からコントラバスを始めたという人も多い。


マイケル・エイブルスの「デライツ・アンド・ダンスイズ」。今回が日本初演となる。
エイブルスは60歳になる現役の作曲家で、原田とも親交があるそうである。弦楽四重奏が神秘的な旋律を奏で、弦楽オーケストラがピッチカートで応える。弦楽四重奏はその後、流れるような旋律を奏で、弦楽オーケストラもそれを反映するように盛り上がりを見せた。


原田の指揮する京響は、伸びやかにして華やかで活気のある演奏を聴かせた。

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