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2022年12月 4日 (日)

コンサートの記(817) 尾高忠明指揮大阪フィルハーモニー交響楽団 「交響曲No.1」@兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール

2022年11月13日 西宮北口の兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールにて

午後3時から、西宮北口の兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールで、尾高忠明指揮大阪フィルハーモニー交響楽団のコンサート「交響曲№1」を聴く。

「作曲家が最初に作曲した交響曲の中で最も完成度が高いのは誰のものか?」という話題がたまにネット上で話題になることがあるが、今回はその「完成度の高い交響曲」の最右翼候補であるシベリウスの交響曲第1番とブラームスの交響曲第1番が並ぶという意欲的なプログラムである。

今日のコンサートマスターは須山暢大。フォアシュピーラー(アシスタント・コンサートマスター)には客演の川又明日香が入る。KOBELCO大ホールを本拠地としている兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオーケストラ)からは、6月まで在籍していたオーボエの上品綾香や、トランペットのガイルス彩乃(ハーフではなく、東京都交響楽団のトロンボーン奏者であるザッカリー・ガイルスの奥さん)らが客演として参加する。なお、大フィル首席コントラバス奏者のサイモン・ポレジャノフはPACオーケストラの出身であり、今度兵庫県立芸術文化センターで凱旋となるリサイタルを行う予定だそうである。


後にショスタコーヴィチと共に「ベートーヴェン以降最大のシンフォニスト」と呼ばれることになるジャン・シベリウスの最初の交響曲は彼が33歳の時に初演された。ティンパニのロールの上にクラリネットが孤独なモノローグをつぶやき、やがて弦の響きが巨大なうねりとなって広がっていく。

現在の日本においてシベリウス演奏の大家とも言える存在である尾高忠明。札幌交響楽団と「シベリウス交響曲全集」を完成させており、極めて高い水準を示していたが、今日も大フィルから澄んだ涼しげな音色を引き出す。
スケールの大きさ、寂寥感などの表出にも長けており、ティンパニの強打も印象的である。木管楽器のくっきりとした響きなどもシベリウスの優れた肖像を描き出す。


ブラームスの交響曲第1番は、おそらく交響曲第1番の中では最も有名な作品であり、個人的にもコンサートで最も多く接した楽曲である。
20代前半で交響曲の着想を得たブラームスであるが、慎重に慎重を重ね、43歳の時に交響曲第1版を完成させた。実に20年以上の歳月を掛けている(上には上がいて、バラキレフは交響曲第1番を完成させるのに30年以上の歳月を要した)。その間に別の交響曲の着想も得ていたが、結局、交響曲として完成させることが出来ず、他のジャンルの曲に転用している。

尾高は冒頭の悲劇性を強調せず、流れの良い音楽を築く。その後に音楽は白熱して行くわけだが、尾高は熱よりもアンサンブルの構築を重視。「流麗」とも呼べる弦の響きが印象的である。
ロマンティシズムの表出に長けた第2楽章と第3楽章を経て第4楽章も流れの良い音像を浮かび上がらせる。ベートーヴェンの「第九」の歓喜の歌に似た主題も愉悦感たっぷりに弾かれ、幸福な雰囲気がホールを満たしていた。


最後に尾高忠明は、「やっとお招きいただきました。素晴らしいホールです。そしてお世辞ではなく素晴らしいお客さんです」と語り、「西宮北口という駅には初めて降りました。北口と付く駅の名前は珍しいと思います。待ち合わせ場所を聞いたら『西宮北口の南口で』と言われて」と語って客席から笑いを引き出していた。

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