コンサートの記(830) 沖澤のどか指揮京都市交響楽団第685回定期演奏会フライデー・ナイト・スペシャル
2024年1月19日 京都コンサートホールにて
午後7時30分から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団の第685回定期演奏会を聴く。今日の指揮者は、京響常任指揮者の沖澤のどか。オール・フレンチ・プログラムで今日明日と演奏会があるが、今日は休憩なし演奏時間約1時間のフライデー・ナイト・スペシャルと称した演奏会となる。
曲目は、ドビュッシーのハープと弦楽のための舞曲「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」(ハープ独奏:吉野直子)、オネゲルの交響曲第5番「三つのレ」、イベールの「寄港地」。明日はドビュッシーの代わりに、フランス六人組の紅一点であるタイユフェールのハープと弦楽のための小協奏曲が入り、ラヴェルの「ボレロ」が加わる。
なお、今日明日とNHKによる収録があるようで、天井からデッカツリーが下がり、ステージ上にもマイクロフォンが並んでいる。NHKはBSで「沖澤のどか特集」を放映したことがあり、推されているようである。
午後7時から沖澤のどかによるプレトークがある。
オネゲルの交響曲第5番「三つのレ」に関しては、客席に「お聴きになったことのある方、いらっしゃいますか?」と聞いていた。私は手は挙げなかったが、シャルル・デュトワ指揮バイエルン放送交響楽団による「オネゲル交響曲全集」(エラート)を持っているので、録音でなら聴いたことがある。「三つのレ」は、一応オネゲルの交響曲の中では最も分かりやすくポピュラーなので、実演でも一度聴いたことがあるような気がするのだが、はっきりとは覚えていない。
沖澤は、令和6年能登半島地震について触れ、オーケストラ・アンサンブル金沢で指揮研究員をしていた頃の話をし、終演後にエントランスに立って寄付金を募ることを表明した。
今日のコンサートマスターは特別客演コンサートマスターの会田莉凡。フォアシュピーラーに泉原隆志。今日はヴィオラにソロ首席ヴィオラ奏者の店村眞積が入り、チェロの首席には客演の森田啓介が招かれている。ドイツ式の現代配置での演奏。
ドビュッシーのハープと弦楽のための舞曲「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」。この曲を聴くと2日前が誕生日だった故坂本龍一がドビュッシーから強い影響を受けていたことが感じられる。
広上とは透明感にあふれる見通しの良い音を出していた京響であるが、沖澤と出す音はやや渋めで彼女の個性が感じられる。
日本を代表するハープ奏者である吉野直子のハープもエレガントであった。
オネゲルの交響曲第5番「三つのレ」。プレトークで沖澤は「仮の宗教音楽」といった風に例えていたが、冒頭のコラールが実にかっこいい曲である。沖澤の指揮する京都市交響楽団は立体的な音響を作り出す。力強く、透明感もあり、スケールもしっかりとした演奏である。
イベールの「寄港地」からは管楽器の首席奏者も増え(明日はなんといってもラヴェルの「ボレロ」がラストにある)、音の豊かさが増す。沖澤のオーケストラドライブも素晴らしく、左手での指示も効果的で、地中海の匂いが音の殻を破って飛び出してくるような、生命力に満ちた演奏となっていた。
被災地・能登のためのアンコール演奏がある。徳山美奈子の交響的素描「石川」~加賀と能登の歌による~第2楽章「山の女」山中節より。ノスタルジックな楽曲であった。
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