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2024年3月の12件の記事

2024年3月31日 (日)

コンサートの記(837) 出口大地指揮 京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2023(年度)「みんな集まれ、オーケストラ!」第4回「ストラヴィンスキー、ナウ・アンド・ゼン」

2024年3月24日 京都コンサートホールにて

午後2時から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2023(年度)「みんな集まれ、オーケストラ!」第4回「ストラヴィンスキー、ナウ・アンド・ゼン」を聴く。今日の指揮は、若手の出口大地。ナビゲーターはガレッジセールの二人。

曲目は、シェーンベルクの「5つの小品」作品16から「前ぶれ」、ドビュッシーの「喜びの島」(モリナーリ編)、コープランドの「静かな町」(トランペット独奏:ハラルド・ナエス、イングリッシュホルン独奏:戸田雄太)、プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」から「モンタギュー家とキャピュレット家」「タイボルトの死」、ファリャのバレエ音楽「恋は魔術師」から「火祭りの踊り」、シベリウスの「アンダンテ・フェスティヴォ」、山田耕筰の序曲ニ長調、ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」(1919年版)。


2021年にアルバニアで行われた第17回ハチャトゥリアン国際コンクール指揮部門(他のコンクールとは異なり、本番一発勝負という特徴がある)において日本人として初の優勝に輝いた出口大地。左手にタクトを持つ指揮者である。元々は弁護士志望で、関西の4大難関私立大学・関関同立(元々は学生野球の用語である)の一つである関西(かんせい)学院大学の法学部に進むが、在学中に「争い事を好まない性格なので弁護士には向いていない」と気づき、「みんなを笑顔にする仕事に就きたい」ということで、卒業後に東京音楽大学指揮科(作曲指揮専攻)に再入学。広上淳一らに師事した。左手にタクトを持つ指揮者としてはフィンランドのパーヴォ・ベルグルンドが有名で、京響に客演した指揮者の中ではスペイン出身のイスキエルドという左利きの指揮者がいたが、普通は左利きであっても指揮棒は右手に持つ。例えば朝比奈隆は左利きであったが、指揮棒は右手に握った。左利きを矯正することに猛烈に反対していた坂本龍一もタクトは右手で執った。
出口も当初は右手で指揮棒を振っていたが、2年生の時に広上淳一から「手の動きが余りにも鈍い」と指摘され、「左利きなんだったら左で指揮をさせろ」と言われて、以降は左手で振る指揮者として活動している。東京音大卒業後はハンス・アイスラー音楽大学ベルリン・オーケストラ指揮科修士課程を修了。クーセヴィツキー国際指揮者コンクールでは最高位とオーケストラ賞を受賞している。これまでに指揮をパーヴォ・ヤルヴィ、井上道義、下野竜也らに師事。ベルリン放送交響楽団でウラディーミル・ユロフスキのアシスタントを務めた。
テレビ朝日系「題名のない音楽会」では、「ニュースター」紹介シリーズの第1回出演者に選ばれ、東京フィルハーモニー交響楽団を指揮している。


今日のコンサートマスターは特別客演コンサートマスターの「組長」こと石田泰尚。泉原隆志は降り番で、フォアシュピーラーは尾﨑平。


シェーンベルクの「5つの小品」作品16から「前ぶれ」。激しいうねりを築き、あっという間に終わってしまう(演奏時間約2分)。ガレッジセールの二人が登場し、ゴリが「おどろおどろしい曲でしたね。不安になるというか。今、大谷翔平選手の周りはこんな感じ」と言って、川田に「やめなさい!」と突っ込まれる。

ドビュッシーの「喜びの島」。原曲はピアノ曲で、イタリアの指揮者であるベルナルディーノ・モリナーリがドビュッシー本人の指導を受けて編曲したバージョンの演奏である。
色彩感豊かなオーケストレーションで、京響の長所が良く生かされていた。


コープランドの「静かな町」。トランペット独奏とイングリッシュの独奏を伴う作品で、夜のニューヨークの孤独を描いている。元々は劇伴音楽として書かれたものをコンサート用にアレンジしたもので、音楽も物語仕立てになっており、トランペットはジャズ・トランペッターを目指す裕福だが孤独なユダヤ人の少年、イングリッシュホルンはホームレスの男性の寂しい心境を描いている。

イングリッシュホルンの説明として出口は、ドヴォルザークの「新世界」交響曲より第2楽章、「家路」として知られるテーマをハミングする。ゴリが「出口さん美声ですね」と褒める。

孤独がテーマなだけに、しんみりとした音楽が続くが、終盤に明るさが顔をのぞかせる。
トランペットのナエス、イングリッシュホルンの戸田もしっかりとしたソロを聴かせた。

コープランドの「静かな町」は編成が小さいのだが、出口は、「20世紀初めに起こったことと関係しています」と言い、ゴリが「黒柳徹子さんが生まれた。あの人、何歳なんだろう?」とボケる。
20世紀前半には二つの大戦があり、音楽関係者も兵隊に取られて人が足りなくなる。そのため編成を小さくするなど、工夫する必要が出てきたと出口は語った。


プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」より「モンタギュー家とキャピュレット家」「タイボルトの死」。
川田が曲目を読み上げるが、「言いにくい。噛みそうになる」と言い、ゴリは、「よく知らなかったんですけど、スタッフさんに言われて気づきました。CMで流れています。大きな犬が出てきます。ケータイの会社です。某ソフトバンク」、川田「ソフトバンクって言っちゃったじゃない!」
出口の指揮する京響は音にキレがあり、スケールも大きい。


ファリャのバレエ音楽「恋は魔術師」から「火祭りの踊り」。京響のブラスの強さがプラスに働いている。怪しげな雰囲気もよく出ていた。


シベリウスの「アンダンテ・フェスティヴォ」。出口が、弦楽四重奏のために書かれ、弦楽とティンパニのためにアレンジしたという解説を行う。ティンパニは最終盤になってやっと登場するのだが、ゴリは演奏終了後に、「ティンパニのために書いたっていうのに、ティンパニの人、なかなか演奏しないから、どこで入るのか分からなくなってティンパってるんじゃないか」とギャグを言う。
どちらかというとすっきりとした演奏で、弦楽の響きの美しさで勝負した演奏であった。


山田耕筰の序曲ニ長調。山田耕筰がドイツ留学中に書いたもので、日本人が書いた初の管弦楽曲とされる。ドイツ古典派の影響が強い曲であり、山田が若い頃に書いた作品ということもあって独自の個性よりもアカデミックな印象の強い楽曲である。


ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」(1919年版)。
川田が、「パリ時代に作曲されたもので、その後、1911年、1919年、1945年に組曲として編曲しています。ストラヴィンスキーは来日した際に京都に来ているそうで、神社仏閣を巡り」
ゴリ「お会いしました」
川田「嘘つけ!」
指揮者が若いということと、後半は管楽器首席奏者の多くが降りたということもあって、透明度こそもう一つだが、彩り豊かで迫力にも溢れた演奏である。ロマンティシズムや典雅さの表出にも長けていた。


この3月をもって、京響首席トロンボーン奏者の岡本哲が卒団、今日が最後の本番ということで、ロビーには岡本が教える大阪音楽大学と広島市のエリザベト音楽大学の教え子からの花が飾られ、演奏終了後に舞台上で花束が岡本に贈られた。


なお、オーケストラ・ディスカバリーは2024年度からは会場をロームシアター京都メインホールに変えて行われる。これまでは吉本の漫才コンビであるロザンとガレッジセールが中心となってナビゲーターを務めてきたが、チラシにはナビゲーターの文字はない。テーマが「マエストロとディスカバリー!」ということもあり、おそらく揮者がトークを行って引っ張っていくのだと予想される。

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2024年3月28日 (木)

コンサートの記(836) Fever presents Candlelight 「坂本龍一の名曲集」 長富彩(pf)

2024年2月2日 京都コンサートホール小ホール「アンサンブルホールムラタ」にて

午後5時から、京都コンサートホール小ホール「アンサンブルホールムラタ」で、Fever presents Candlelight「坂本龍一の名曲集」を聴く。ステージ上いっぱいにキャンドルを灯してのピアノコンサート。ピアノ演奏を務めるのは、リストやラフマニノフを得意とする技巧派の長富彩。


曲目は、「水の中のバガテル」、「The Last Emperor」、「東風(tong poo)」、「The Sheltering Sky」、「Shining Boy and Little Randy(星になった少年)」、「Rain(I want to divorce)」、「Energy Flow」、「Bolerish」、「The Wuthering Heights(嵐が丘)」、「Merry Christmas Mr.Lawrence(戦場のメリークリスマス)」

生前の坂本龍一のピアノソロコンサートには2度接しているが(いずれも大阪。旧フェスティバルホールとサンケイホールブリーゼ)、長富彩の表現は作曲者本人のそれに比べてダイナミックレンジの幅が大きいようである。特に「ラストエンペラー」の冒頭などはスローテンポでスケールも大きく、重厚さが印象的であった。

マイクを手にして楽曲解説を行いながらのコンサート。

「Bolerish」は映画のための音楽だったが、ブライアン・デ・パルマ監督から、「ラヴェルの『ボレロ』そっくりの曲を書いてほしい」と依頼され、「禁を破って」書いた曲である。ラヴェル協会から訴えられそうになったりしたそうだが、「ボレロ」のメロディーと構成を生かしつつ、洒落た音楽に仕上げているのは流石である。

「The Sheltering Sky」は高校2年生の時に音楽の授業のピアノ発表会で演奏した思い出深い曲である。残念ながら今回はアレンジ違いであったが、ミステリアスで悲劇的な曲調を生かした演奏になっていたように思う。


アンコール演奏は、「M.A.Y. IN THE BACKYARD」。ノリの良い演奏であった。

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2024年3月27日 (水)

これまでに観た映画より(325) ドキュメンタリー映画「アアルト」

2024年3月21日 京都シネマにて

京都シネマで、フィンランドのドキュメンタリー映画「アアルト」を観る。フィンランドのみならず北欧を代表する建築家にしてデザイナーであるアルヴァ・アアルトの生涯と彼の二人の妻に迫る作品。ヴィルビ・スータリ監督作。

母校のヘルシンキ工科大学が現在はアアルト大学に校名変更されていることからも分かるとおり、絶大な尊敬を集めたアルヴァ・アアルト(1898-1976)。「北欧デザイン」といわれて何となく頭に浮かぶイメージは彼が作り上げたものである。彼の最初の妻であるアイノは4つ年上であり、同じヘルシンキ工科大学の出身であった。
アアルトがヘルシンキ工科大学卒業後にユヴァスキュラに建築事務所を設立。従業員を募集し、それに応募してきたのがアイノであった。

アアルトの設計の最大の特徴は、「人間的」であること。また自然との調和も重視し、人間もまた自然の一部であるという発想はシベリウスを生んだフィンランド的である。
二人三脚で仕事を進めたアアルトとアイノ夫人。アイノもアアルトと同じヘルシンキ工科大学を卒業しているだけあって、アイデアも豊富でセンスにも長け、アアルトが起こしたデザイン企業アルテックの初期の家具などのデザインにはアイノ夫人の発案も多く取り入れられているようである。
ただ、二人とも家具職人ではないので、実用的な部分は専門家に任せていたのだが、彼が亡くなると家具デザイナーとしてのアアルトは全盛期を過ぎることとなる。
地中海を行く船上で行われた近代建築国際会議(CIAM)に出席し、ル・コルビュジエなどの知遇を得、パリ万博やニューヨーク万博のフィンランド館(パビリオン)、ニューヨーク近代美術館(MoMA)での個展などで注目を浴びたアアルト。作風を次々に変えながら、「人間的」という意味では通底したものを感じさせる建築を次々に発表。マサチューセッツ工科大学(MIT)の客員教授に就任し、MITの学生寮も設計。蛇行した川に面したこの学生寮は、全ての部屋から川面が見えるよう、建物自体もうねっているという独特のものである。

1948年にアイノ夫人が若くして亡くなると、3年後に24歳年下のアアルト事務所職員で同じヘルシンキ工科大学出身のエリッサと再婚。エリッサ夫人は、アアルトが亡くなると、彼が残した設計図を元に建築の仕上げなども行っているようである。

アアルトの最大の仕事は、ヘルシンキ市中心部の都市設計であったが、これはフィンランディアホールを完成させるに留まった。このフィンランディアホールは白亜の外観の美しさで有名であるが、それ以上に劣悪な音響で知られており、ヘルシンキのクラシック音楽演奏の中心は、現在ではヘルシンキ音楽センターに移っている。

晩年になると海外での名声は高まる一方であったアアルトであったが、フィンランド国内では逆に保守的な建築家と目されるようになり、国民年金協会本部や村役場、大学などの設計を行うことで、体制側と見なされることもあったという。

フィンランド以外での建築物としては、前記MITの学生寮、ハーバード大学のウッドベリー・ポエトリー・ルーム、ベルリン・ハンザ地区の集合住宅、ノイエ・ファールの高層集合住宅(ドイツ・ブレーメン)、フランスのルイ・カレ邸、ヴォルフスブルクの文化センター(ドイツ)、同じくヴォルフスブルクの精霊教会、エドガー・J・カウフマン記念会議室(アメリカ・ニューヨーク)、リオラの教会(イタリア)などがある。

ラジオなどで収録されたアアルト自身の肉声、アアルトが残した手紙などを朗読する声優(アアルトの声を当てているエグゼクティブ・プロデューサーで俳優でもあるマルッティ・スオサオは、ヴィルビ・スータリ監督の夫だそうである)の他に、建築家の仲間や専門家、大学教授などの証言を豊富に収めており、アカデミックな価値も高いドキュメンタリー映画である。

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2024年3月24日 (日)

日越外交関係樹立50周年記念ドラマ「ベトナムのひびき」

日越外交関係樹立50周年記念ドラマ「ベトナムのひびき」(NHK)を見る。作:小松江里子。出演:濱田岳、比嘉愛未、MEGUMI、奥田瑛二、村田雄浩、藤田弓子、反田恭平ほか。本業はピアニスト・指揮者である反田恭平が演技に挑戦している。

1992年、指揮者の佐倉一男(濱田岳)は、ベトナム(越南)のプロオーケストラである平和交響楽団のベトナム縦断ツアーの指揮者として招かれる。ハノイ(河内)を本拠地とする平和交響楽団。国立のオーケストラだが、給料が足りないため、楽団員のほとんどがアルバイトをしながら活動を行っている。このあたりは、モデル思われるベトナム国立交響楽団と同様だ。
練習場などの施設も十分とはいえず、なによりも基礎的なアンサンブル能力に問題がある。佐倉はトレーニングによって平和交響楽団のレベルを引き上げ、ハノイ、フエ、ダナン、ホーチミンで行われるツアーを成功に導くが、その一方で、家庭を顧みない態度から妻の美也子(MEGUMI)や息子と距離が出来てしまう。
ホーチミンでの演奏会終了後に、すぐにキューバへと旅立つことになる佐倉。これからもずっと一緒に活動してくれると思っていた平和交響楽団のメンバーはこれに反発する。
その後、南米などでの指揮活動を行っていた佐倉であるが、久しぶりにベトナムに帰ることになる。平和交響楽団は大きく成長していた。

音楽とオーケストラを舞台にしているが、基本的には家族の物語であり、一男と妻の美也子、息子の博音(ひろと)との和解が最後に訪れる。


ベトナム国立交響楽団育成に尽力した福村芳一(佐倉のモデルと思われる)が資料提供に名を連ねている。ベトナム国立交響楽団はその後も日本と縁があり、本名徹次が長年に渡って音楽監督を務めていて、来日公演も行っている。

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2024年3月22日 (金)

コンサートの記(835) 小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXX モーツァルト 歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」@ロームシアター京都

2024年3月17日 左京区岡崎のロームシアター京都メインホールにて

午後3時から、左京区岡崎のロームシアター京都メインホールで、小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXX モーツァルトの歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」を観る。1969年、ザルツブルク音楽祭において若き日の小澤征爾が師であるヘルベルト・フォン・カラヤンの勧めで、初めて本格的に指揮したオペラがこの「コジ・ファン・トゥッテ」である。
小澤征爾逝去後初となる小澤征爾音楽塾のオペラ公演。上演前には小澤征爾追悼としてモーツァルトのディヴェルティメント K.136より第2楽章が演奏された。

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演奏は小澤征爾音楽塾オーケストラ、合唱は小澤征爾音楽塾合唱団。いずれも日本を始め、中国や韓国でも行われたオーディションを突破した若手音楽家によって結成されている。
指揮は小澤征爾音楽塾首席指揮者で、ベネズエラのエル・システマ出身のディエゴ・マテウス。演出はデイヴィッド・ニース。チェンバロはキリル・クズミンが担当する。
なお、今回は小澤征爾の肩書きは音楽監督になっているが、来年の予告チラシを見ると、永久音楽監督の称号が与えられることが分かる。

出演は、サマンサ・クラーク(フィオルディリージ)、リハブ・シャイエブ(ドラベッラ)、ピエトロ・アダイーニ(フェランド)、アレッシオ・アルドゥイーニ(グリエルモ)、バルバラ・フリットリ(デスピーナ)、ロッド・ギルフリー(ドン・アルフォンソ)。


ナポリが舞台の作品ということで、背景にはベスビオ火山が描かれたものもある。
女の貞淑さについて賭けを行うという作品なのだが、「不謹慎にもほどがある!」ということで長らく上演されなかった時期もあるという「コジ・ファン・トゥッテ」。モーツァルトがロレンツォ・ダ・ポンテと組んで作り上げた3つめにして最後の作品である。モーツァルトの三大オペラは、「フィガロの結婚」、「ドン・ジョヴァンニ」(いずれも台本はダ・ポンテ)、「魔笛」(台本はシカネーダー)であるが、「コジ・ファン・トゥッテ」も含めて四大オペラとされることもある。

グリエルモとフェランドは、恋人の心を確かめるために、兵隊に行く振りをして、フィオルディリージとドラベッラの前から去り、アルバニア人に変装して再登場。フィオルディリージの恋人であるグリエルモはドラベッラを、ドラベッラの恋人であるフェランドはフィオルディリージを誘惑。しかし二人の女性は相手を拒否。貞淑さに賭けていた二人は勝利を確信するが、ドン・アルフォンソは誘惑を続けるよう命じる。


揺れる女心を描くと同時に、男のいい加減さ、人間の弱さ、女の自由、生きる意味などを問うた作品である。有名なアリアなどはないが、重唱が多く、厚みのある音楽が特徴となっている。

ノンタクトで振るマテウス指揮する小澤征爾音楽塾オーケストラは、ピリオドを援用した鋭くも典雅でメリハリの利いた演奏を展開。音の輝きや活きの良さなども十分であった。
恋人役の4人の歌手も好演。トリッキーな役である女中のデスピーナを演じたバルバラ・フリットリも様になっていた。

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2024年3月20日 (水)

コンサートの記(834) 広上淳一指揮京都市交響楽団第687回定期演奏会 フライデー・ナイト・スペシャル

2024年3月15日 京都コンサートホールにて

午後7時30分から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団の第687回定期演奏会を聴く。今日の指揮者は、京都コンサートホール館長でもある広上淳一。
現在、京都市営地下鉄烏丸線では最寄り駅である北山駅に近づくと、広上淳一の声による京都コンサートホールの案内が車内に流れるようになっている。
広上は現在は、オーケストラ・アンサンブル金沢のアーティスティック・リーダー(事実上の音楽監督)を務めるほか、日本フィルハーモニー交響楽団の「フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)」、札幌交響楽団の友情指揮者の称号を得ている。京都市交響楽団の第12代、第13代常任指揮者を務めたが、名誉称号は辞退。ただオーケストラもそれでは困るのか、「京都市交響楽団 広上淳一」という謎の称号を贈られている。
東京音楽大学の指揮科教授を長年に渡って務めており、弟子も多い。現在、TBS系列で放送されている西島秀俊主演の連続ドラマ「さよならマエストロ」の音楽監修も手掛けている(東京音楽大学も全面協力を行っている)。また今年は大河ドラマ「光る君へ」のオープニングテーマの指揮も行っている。

今日は午後7時30分から上演時間約1時間、休憩なしで行われる「フライデー・ナイト・スペシャル」としての上演。明日も定期演奏会が行われるがプログラムが一部異なっている。

今日の演目は、まずジャン・エフラム・バヴゼのピアノ独奏によるラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」と「道化師の朝の歌」が弾かれ、その後に、広上指揮の京響によるラフマニノフの交響曲第3番が演奏されるという運びになっている。


午後7時頃から広上と、今年の1月から京都市交響楽団のチーフプロデューサーに着任した高尾浩一によるプレトークがある。広上は1月から髭を伸ばし始めたが、能登半島地震の復興祈願として験を担いだものだそうで、京響のチーフプロデューサーに就く前はオーケストラ・アンサンブル金沢にいたという高尾と共に能登半島地震復興のための募金を行うことを表明した。
ソリストのジャン・エフラム・バヴゼの紹介。ピアノ大好き人間だそうで、朝から晩までピアノを弾いているピアノ少年のような人だそうだが、今年62歳だそうで、66歳の広上と余り変わらないという話をする。フランス人であるが、奥さんはハンガリー人だそうで、ハンガリーが生んだ名指揮者のサー・ゲオルグ・ショルティに見出され、「ショルティが最後に発掘した逸材」とも呼ばれているそうだ。

ラフマニノフの交響曲というと、第2番がとにかく有名であり、この曲は20世紀後半に最も評価と知名度を上げた交響曲の一つだが、残る二つの交響曲、交響曲第1番と第3番は知名度も上演機会にもそれほど恵まれていない。高尾は、これまでに外山雄三と秋山和慶が指揮したラフマニノフの交響曲第3番を聴いたことがあるという。
広上は、何度も聴くと好きになる曲だと、ラフマニノフの交響曲第3番を紹介する。


ジャン・エフラム・バヴゼのピアノ独奏によるラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」。フランス人らしくやや速めのテンポで演奏される。典雅な趣と豊かな色彩に満ちた演奏で、鍵盤の上に虹が架かったかのよう。「エスプリ・クルトワ」としかいいようのないものだが、敢えて日本語に訳すと京言葉になるが「はんなり」に近いものがあるように感じられる。

「道化師の朝の歌」。活気に満ち、リズム感が良く、程よい熱さと諧謔精神の感じられる演奏であった。


バヴゼのアンコール演奏は、マスネの「トッカータ」。初めて聴く曲だが、メカニックの高さと豊かな表現力が感じられた。


ラフマニノフの交響曲第3番。今日のコンサートマスターは、特別客演コンサートマスターの石田泰尚。フォアシュピーラーに泉原隆志。今日はヴィオラ首席の位置にソロ首席ヴィオラ奏者の店村眞積が入る。
私はこの曲は、シャルル・デュトワ指揮フィラデルフィア管弦楽団の「ラフマニノフ交響曲全集」(DECCA)でしか聴いたことがないが、今日の広上と京響の演奏を聴くと、この曲がフィラデルフィア管弦楽団の響きを意識して書かれたものであることが分かる。ラフマニノフはフィラデルフィア管弦楽団を愛し、自身で何度もピアニストとして共演したり指揮台に立ったりもしているが、いかにもフィラデルフィア管弦楽団に似合いそうな楽曲である。
第1楽章に何度も登場するメロディーは甘美で、フィラデルフィア管弦楽団の輝かしい弦の響きにピッタリである。
広上指揮する京響は音の抜けが良く、立体感や瞬発力も抜群で、流石にフィラデルフィア管弦楽団ほどではないが、メロウで都会的で活気に満ちた曲想を描き出していく。アメリカ的な曲調が顕著なのもこの曲の特徴であろう。
各奏者の技量も高く、現時点では有名からほど遠いこの曲の魅力を見事に炙り出してみせていた。
第1楽章の甘美なメロディーも印象的であり、将来的に人気が徐々に上がっていきそうな交響曲である。ラフマニノフの交響曲第2番も初演は成功したものの、以前は「ジャムとマーマレードでベタベタの曲」などと酷評され、評価は低かったが、アンドレ・プレヴィンがこの曲を積極的に取り上げ、ウラディーミル・アシュケナージやシャルル・デュトワ、日本では尾高忠明がそれに続いたことで人気曲の仲間入りをしている。ラフマニノフの交響曲第3番も「熱心な擁護者がいたら」あるいはと思わせてくれるところのある交響曲である。

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2024年3月16日 (土)

これまでに観た映画より(324) ビクトル・エリセ監督作品「瞳をとじて」

2024年2月15日 京都シネマにて

京都シネマで、スペイン映画「瞳をとじて」を観る。ビクトル・エリセ監督が31年ぶりにメガホンを取った作品。出演:マノロ・ソロ、アナ・トレント、ホセ・コロナドほか。

1967年、映画「別れのまなざし」撮影中に主演俳優のフリオ・アレナスが失踪する。22年後、フリオの元親友で元映画監督、その後は小説家などとしても活動していたミゲルは、テレビ局からフリオ失踪事件の謎に迫るドキュメンタリー番組の取材を受ける。その後、フリオに似た男が海辺の町の養老院にいるという情報を得たミゲルは、海辺の町へと向かう。

上映時間2時間49分の大作である。失踪事件のミステリーを描きながら、家族の事情、ミゲルの人生などにも踏み込んだ意欲作である。
劇中劇ならぬ映画中映画「別れのまなざし」で中国語が用いられているのも興味深い。
ラストは明かされることなく、観客に委ねられている。失われた歳月に思いをはせながら今を描いた作品である。

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2024年3月13日 (水)

観劇感想精選(457) 令和六年 京都四條南座「三月花形歌舞伎」桜プログラム(令和六年三月三日)

2024年3月3日 京都四條南座にて

午後3時30分から、京都四條南座で「三月花形歌舞伎」桜プログラムを観る。演目は、「女殺油地獄」、「忍夜恋曲者(しのびよるこいはくせもの) 将門」。

平成生まれの若手歌舞伎俳優が腕を競い合う南座の「三月花形歌舞伎」。今回は、中村壱太郎(成駒家)、尾上右近(音羽屋)、中村隼人(萬屋)の3人が中心となる。というより目玉がこの3人しかいない。

まず中村壱太郎による口上がある。壱太郎は、「女殺油地獄」のお吉の格好をして1階席後方から登場。ユーモラスな語り口である。「遠くから来られた方」と客席に聞くと、「千葉」と答えたお客さんがいた。千葉なら歌舞伎座も新橋演舞場も近いはずだが、それよりも若手の歌舞伎俳優のファンなのだろう。
その後、階段を昇って舞台に上がった壱太郎。看板になる役者が3人しかいないので大変だという話をした後で、作品の解説を行い、最後は南座のゆるキャラである「みなみーな」と一緒に記念撮影の時間を設ける。壱太郎は子どもたちにも手を振り、「楽しんでいって下さい。凄惨な話ですけど」と述べていた。


今年は近松門左衛門没後300年ということで、「女殺油地獄」の他に、松プログラムでは「心中天網島」より「河庄」が上演される。

「女殺油地獄」。与兵衛を当たり役としてきた片岡仁左衛門の監修による上演である。
どら息子の与兵衛(中村隼人)は、新地で馴染みの芸者である小菊を誘ったものの断られ、その小菊が野崎参りに来るというので、先回りしようとやって来ていた。野崎観音参りには油屋の豊嶋七左衛門(尾上右近)の女房であるお吉(中村壱太郎)も娘と一緒に来ており、茶屋で夫がやって来るのを待っていた。日頃から与兵衛のことを弟のように可愛がっていたお吉は、与兵衛に意見するが、与兵衛は全く聞き入れず、小菊の取り巻きとの喧嘩が始まってしまう。そんな中で、与兵衛は通りかかった高槻藩の小姓組頭である小栗八弥に泥をかけてしまう。八弥一行の中には与兵衛の親戚である山本森右衛門がおり、森右衛門は与兵衛の無礼に怒り、その場で切り捨てようとする。なんとかことは収まり、与兵衛は茶店の中で着替えることになり、お吉も同伴する。やって来た七左衛門は二人の仲を怪しむことになる。
家に帰った与兵衛であるが、ここでも乱暴を働き、義理の父親である徳兵衛と実母のおさわから勘当を言い渡されてしまう。
実は明朝までに返す必要のある借金をこさえていた与兵衛。しかし勘当されたとあっては返す見込みもない。与兵衛の足は油屋豊嶋屋へと向かう……。

与兵衛とお吉の関係を縦糸に、徳兵衛とおさわの人情を横糸とした世話物であるが、実は江戸時代を通して初演時以外は上演されず、明治に入ってから坪内逍遙の評価によって注目を浴び、明治も後年になってから常連演目となり、今では非常に人気のある作品となっている。

人気女形の中村壱太郎であるが、可憐な身のこなしに加えて発声を少し変えたようで、リアルなお吉像を作り上げていた。
中村隼人の立ち回りも素早く、絵になっていた。


「忍夜恋曲者 将門」。承平・天慶の乱で「新皇」に即位し、板東で都に背いた平将門の相馬の古内裏が舞台。将門の娘である滝夜叉姫(壱太郎)が傾城如月に化けて花道から現れ、舞う。相馬の古内裏には、将門の残党狩りを命じられてきた大宅太郎光圀(尾上右近)が現れ、蟇の妖術を使う者が現れるというので見張っているが、まどろんでしまう。そこに如月が姿を見せ、光圀は如月を怪しむ。
その後に語らう光圀と如月であったが、如月が相馬錦の将門の旗を落としたために光圀は如月の正体を将門の娘と見抜き、部下と共に滝夜叉姫と対峙することになる。

壱太郎、右近共に若々しく艶のある舞姿が印象的であった。

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2024年3月10日 (日)

コンサートの記(833) エリアフ・インバル指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団第576回定期演奏会

2024年3月1日 大阪・中之島のフェスティバルホールにて

午後7時から、大阪・中之島のフェスティバルホールで、大阪フィルハーモニー交響楽団の第576回定期演奏会を聴く。今日の指揮者は、今年88歳になるエリアフ・インバル。
東京都交響楽団との良好な関係で知られ、現在は桂冠指揮者の称号を得ている。
マーラーとブルックナーの両方を得意とする数少ない指揮者であり、共に交響曲全集を制作している。ショスタコーヴィチも得意としており、交響曲全集をDENONにレコーディング。交響曲第4番の録音はレコード・アカデミー賞を受賞している。

曲目は、マーラーの交響曲第10番(デリック・クック補筆版)。

50年ちょっとという決して長いとはいえない人生のうちに11曲の交響曲を作曲したマーラー。本業は指揮者であり、作曲は休暇を利用して行われたが、その多くが大作となっている。
交響曲第10番は、ほぼ完成された第1楽章のアダージョを除いては、未完成となっている作品である。ということで、今日演奏される音楽の大半はマーラーの真筆ではない。イギリスの音楽学者であるデリック・クックが、マーラーが残した略式総譜を見ながら補筆完成させたものである。


今日のコンサートマスターは須山暢大、フォアシュピーラーに尾張拓登。チェロが客席側に来るアメリカ式の現代配置での演奏である。

大フィルヴァイオリン群の音の抜けの良さが印象的。管は管で重層的な響きを生んでいる。

明るさと暗さが一瞬で入れ替わるマーラーらしい曲調。鋭さやグロテスクな響きもいかにもマーラーである。

そんな中にあって第5楽章における、ヴァイオリンの天上に手を差し伸べるような伸びやかな響きが印象的。マーラーの天への憧れを示しているかのようであった。

高齢となったインバルであるが、年齢をみじんも感じさせない力強くスケール感豊かな音楽作り。都響とのマーラー・チクルスも再び始まるようであり、今後も日本のファンの期待に応えてくれそうだ。

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2024年3月 9日 (土)

朝の連続テレビ小説「ブギウギ」セット公開に行ってきました

谷町4丁目にあるNHK大阪放送局まで、朝の連続テレビ小説「ブギウギ」セット公開を見に行ってきました。1階アトリウムでの開催。入場無料です。
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草彅剛演じる羽鳥善一の仕事部屋。ピアノの上に飾られている写真に写っているのは、ウクライナ出身の指揮者、エマヌエル・メッテル。羽鳥善一のモデルである服部良一の音楽の師であると共に、大阪フィルハーモニー交響楽団の創設者であった朝比奈隆の師としても知られています。ちなみに服部良一は、大阪フィルハーモニック・オーケストラの第2フルート奏者を務めていたことがありますが、この団体は現在の大阪フィルハーモニー交響楽団とは別の放送用オーケストラで、朝比奈隆がNHKが所持していた大阪フィルハーモニックの名称を買い取り、関西交響楽団から改称したのが現在の大阪フィルハーモニー交響楽団です。

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まだ何も記されていない譜面。

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趣里演じる福来スズ子(花田鈴子)の実家、銭湯「はな湯」ののれん。

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スズ子の母親であるツヤ(水川あさみ)が座ってた番台。そろばんが見えます。

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ドラマの中盤まで正体が分からなかったゴンベエ(宇野祥平)の人相書き。ツヤさんが描いたという設定です。

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三鷹の村上愛助(水上恒司)とスズ子の部屋。左手にSPレコードが収納されています。また学生らしく多くの書籍が本棚を飾ります。

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愛助とスズ子の三鷹の家。居間。

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愛子が障子を破らないよう大野晶子(木野花)が工夫した紙の花飾り

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愛助の丹前。スズ子が出産の時にも握りしめていたものです。

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愛助とスズ子の三鷹の家玄関。色々な人が訪ねてきました。

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衣装展示。
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中央が、スズ子のデビュー曲「ラッパと娘」の衣装。左右の黒と白の衣装は梅丸少女歌劇団(USK)の橘アオイ(翼和希)と大和礼子(蒼井優)のもの。

衣装展示
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左は黒澤明作詞の「ジャングル・ブギー」の衣装。右は茨田りつ子(菊地凛子)の普段着。

衣装展示
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左はスズ子の少女時代の衣装。スズ子のイメージカラーは赤です。右は「東京ブギウギ」のステージ衣装。笠置シヅ子(笠置シズ子)が「東京ブギウギ」を歌唱した際のデザインと全く同じものが採用されています。

伝蔵のおでん屋台
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「ハイライト・ショウ」と、「茨田りつ子、福来スズ子合同コンサート」の看板。劇中には登場しませんでしたが、灰原勝夫という歌手のモデルは灰田勝彦でしょうか。
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梅丸少女歌劇団の訓示「強く逞しく泥臭くそして艶やかに」
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タナケンこと棚橋健二(生瀬勝久)と共演した際の台本と称賛記事。
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スズ子の父親、梅吉(柳葉敏郎)の文豪風遺影と、梅吉が最後に撮った愛子と亀の写真。
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羽鳥善一の作曲二千曲記念ビッグパーティーの企画書。羽鳥善一のモデルである服部良一も1951年に2000曲記念のショーを開催しており、放送されたものと全く同じ内容のサプライズ(ラインダンス)が笠置シヅ子や淡谷のり子らによって行われています。
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2024年3月 6日 (水)

これまでに観た映画より(323) 「ゴジラ-1.0」

2024年2月22日 MOVIX京都にて

MOVIX京都で、日本映画「ゴジラ-1.0」を観る。山崎貴監督・脚本・VFX作品。出演:神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介ほか。
音楽:佐藤直紀、伊福部昭。

放射能が生んだゴジラ。だが今回はそれよりも先に生まれていたゴジラの話である。

1945年、戦争末期の大戸島。特攻隊の敷島浩一(神木隆之介)は特攻を避けるため、零戦の機体に故障があったと嘘をつき、大戸島の整備所に着陸する。整備士の橘(青木崇高)は敷島の嘘をすぐに見抜くが、その夜、謎の怪物が大戸島に現れる。ゴジラ(呉爾羅)と呼ばれるその怪物により、敷島と橘を除く大戸島の整備士達は全滅する。

東京に戻った敷島は、隣家の太田澄子(安藤サクラ)から、敷島の両親が空襲で亡くなったことを伝えられる。
その後、闇市で出会った大石典子(浜辺美波)から赤ん坊を頼まれた敷島。赤ん坊の明子は典子の子ではなく、拾った子だった。やがて敷島と典子と明子は結婚しないままの共同生活を始める。敷島は米軍の機電撤去の仕事に就き、そこで出会った秋津淸治(佐々木蔵之介)、野田健治(吉岡秀隆)、水島四郎(山田裕貴)と共に、木造船・新生丸の乗り込み、海を回る。
新居を建てた敷島。新生丸の乗組員達を招いて紹介するが、典子と籍を入れていないことを知られ、けじめを付けるよう促される。

1946年にビキニ環礁での水爆実験があり、ゴジラは肥大化。その肥大化したゴジラが東京目指して北上してくる。

1947年。明子が大きくなったということもあり、典子は自立を目指して銀座で事務の仕事を始める。そんな中、ゴジラが東京に向かっていることを知った敷島達は新生丸でゴジラを止めるよう命令されるが、巨大化したゴジラに全く歯が立たない。ゴジラは前線を突破し、品川沖から銀座に上陸。朝の連続テレビ小説「ブギウギ」の日帝劇場のモデルとなっている日本劇場(現在の有楽町マリオン)や銀座のシンボルである和光を破壊する。その時、典子は銀座を走る列車に乗っていた。


焦土からの復興を目指す戦後2年目の東京を襲撃するゴジラということで、戦争の脅威をゴジラがなぞる形となっている。
そこに、敷島と典子のラブストーリーが重なるわけだが、展開がやや不自然であり、人間ドラマとしての完成度をやや損ねているように感じられた。
VFXを使った映像には迫力があり、敷島のトラウマからの解放なども(ややベタだが)見応えを上げていたように思われる。

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2024年3月 1日 (金)

コンサートの記(832) 井上道義指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団第575回定期演奏会

2024年2月9日 大阪・中之島のフェスティバルホールにて

午後7時から、大阪・中之島のフェスティバルホールで、大阪フィルハーモニー交響楽団の第575回定期演奏会を聴く。今日の指揮者は、2024年12月30日をもって指揮活動からの引退を表明している井上道義。

曲目は、ヨハン・シュトラウスⅡ世のポルカ「クラップフェンの森で」、ショスタコーヴィチのステージ・オーケストラのための組曲より5曲、ショスタコーヴィチの交響曲第13番「バビ・ヤール」(バス独唱:アレクセイ・ティホミーロフ、男声合唱:オルフェイ・ドレンガー)。今日のコンサートマスターは崔文洙。

前半の2曲は指揮台を用いないでの指揮である。

大フィルがウィンナワルツやポルカをやると重心が低めになる傾向があるが、「クラップフェンの森で」も弦楽は重めの響きを奏でていた。


ショスタコーヴィチのステージ・オーケストラのための組曲より5曲。ショスタコーヴィチを十八番としている井上道義。今日も大フィルから鋭い響きや渋さのある輝かしい音を引き出して好演を聴かせる。


ショスタコーヴィチの交響曲第13番「バビ・ヤール」。1941年にナチスドイツがウクライナのキーウ(キエフ)郊外のバビ・ヤールでユダヤ人の虐殺を行ったことを題材にした作品である。字幕付きでの上演(テキスト日本語訳:一柳富美子)。実際にはバビ・ヤールではユダヤ人のみならずロシア人やウクライナ人など多くの人種が虐殺されている。

オルフェイ・ドレンガーは、スウェーデンの男声合唱団。アルヴェーンやエリック・エリクソンなどの指導を受けてきた名門合唱団である。

大フィルの音の密度は濃く、威力がある。ただ決してうるさくはならず、常に音楽的である。
オルフェイ・ドレンガーの合唱もアレクセイ・ティホミーロフの独唱も雄弁であり、迫力ある音楽を生み出していた。

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