コンサートの記(833) エリアフ・インバル指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団第576回定期演奏会
2024年3月1日 大阪・中之島のフェスティバルホールにて
午後7時から、大阪・中之島のフェスティバルホールで、大阪フィルハーモニー交響楽団の第576回定期演奏会を聴く。今日の指揮者は、今年88歳になるエリアフ・インバル。
東京都交響楽団との良好な関係で知られ、現在は桂冠指揮者の称号を得ている。
マーラーとブルックナーの両方を得意とする数少ない指揮者であり、共に交響曲全集を制作している。ショスタコーヴィチも得意としており、交響曲全集をDENONにレコーディング。交響曲第4番の録音はレコード・アカデミー賞を受賞している。
曲目は、マーラーの交響曲第10番(デリック・クック補筆版)。
50年ちょっとという決して長いとはいえない人生のうちに11曲の交響曲を作曲したマーラー。本業は指揮者であり、作曲は休暇を利用して行われたが、その多くが大作となっている。
交響曲第10番は、ほぼ完成された第1楽章のアダージョを除いては、未完成となっている作品である。ということで、今日演奏される音楽の大半はマーラーの真筆ではない。イギリスの音楽学者であるデリック・クックが、マーラーが残した略式総譜を見ながら補筆完成させたものである。
今日のコンサートマスターは須山暢大、フォアシュピーラーに尾張拓登。チェロが客席側に来るアメリカ式の現代配置での演奏である。
大フィルヴァイオリン群の音の抜けの良さが印象的。管は管で重層的な響きを生んでいる。
明るさと暗さが一瞬で入れ替わるマーラーらしい曲調。鋭さやグロテスクな響きもいかにもマーラーである。
そんな中にあって第5楽章における、ヴァイオリンの天上に手を差し伸べるような伸びやかな響きが印象的。マーラーの天への憧れを示しているかのようであった。
高齢となったインバルであるが、年齢をみじんも感じさせない力強くスケール感豊かな音楽作り。都響とのマーラー・チクルスも再び始まるようであり、今後も日本のファンの期待に応えてくれそうだ。
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