ETV特集「未来へのETUDE ~坂本龍一監督から東北ユースオーケストラへ~」
2024年4月13日
Eテレで、ETV特集「未来へのETUDE ~坂本龍一監督から東北ユースオーケストラへ~」を見る。NHK名古屋放送局の制作。語りは、のんが務める。
東北ユースオーケストラ(TYO)は、東日本大震災で大きな被害が出た福島、宮城、岩手の3県に震災発生時に暮らしていた小学生から大学院生までの若者で結成されたオーケストラ。音楽経験は不問である。坂本龍一が創設し、監督も務めた。毎年、震災の起きた3月に定期演奏会を行っており、坂本龍一と共演を続けてきたが、昨年の3月26日に行われたコンサートに坂本龍一の姿はなく、その2日後の3月28日に坂本はこの世から旅立つことになる。坂本は26日のコンサートを病床で見守っていたことが先日放送されたNHKスペシャル「Last Days 坂本龍一 最期の日々」で明らかになった。
そして今年、坂本龍一のいない東北ユースオーケストラは、坂本の追悼演奏会を東北3県と東京で行う。指揮は結成当時から参加している栁澤寿男(やなぎさわ・としお)。坂本から直々にTYOの指揮者に指名されている。栁澤は、京都フィルハーモニー室内合奏団のミュージックパートナーとして、京都でも知られた存在である。
生前の坂本龍一との交流と、坂本亡き後のメンバーの思いや活動が中心となったドキュメンタリーであるが、象徴的な楽曲である「いま時間が傾いて」の紹介とハイライト映像が流れる。坂本が3.11のレクイエムとして東北ユースオーケストラのために作曲した「いま時間が傾いて」の第3部「predicament(苦境)」には、楽譜に音符が一切書かれていない部分が存在する。「津波のスローモーション」をイメージし、楽団員がおのおの即興で旋律を奏でるのだが、坂本はこの曲の創作メモに「自発性」を重要視するよう記している。坂本も自身の寿命がそれほど長くないことは十分に自覚していたはずで、自身がこの世を去ってからも東北ユースオーケストラに自発的に活動を続けて欲しいとのメッセージが込められているように感じられる。
今年は元日に能登半島を中心に北陸地方で大きな地震があった。東北ユースオーケストラはサントリーホールでの公演をパブリックビューイングという形で北陸地方に同時配信することに決める。富山県氷見市でのパブリックビューイングの様子が流れ、遠く離れてはいるが、被災という共通点を持つ者同士の心の通い合いが伝わってきた。
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