令和六年 第百五十回記念公演 都をどり「都をどり百五十回源氏物語舞扇」
2024年4月6日 祇園甲部歌舞練場にて
午後4時30分から、花見小路にある祇園甲部歌舞練場で、令和六年 第百五十回記念公演都をどり「都をどり百五十回源氏物語舞扇(げんじものがたりまいおうぎ)」を観る。タイトルに「都をどり」の文字が入るのは史上初めてのことだそうである。
五花街筆頭格の祇園甲部の本拠地である祇園甲部歌舞練場であるが、耐震性に問題があるとして、平成28年10月から休館期間に入っていた。耐震工事に思いのほか手間取ったようで、その間は、京都芸術劇場春秋座や南座を借りて都をどりを続けてきたが、新型コロナの流行により2年連続で公演が中止になるなど、苦難が続いた。昨年、耐震工事を終えて久しぶりに祇園甲部歌舞練場で都をどりが上演され、今年が本拠地での復活2年目となる。
今年の大河ドラマ「光る君へ」の主人公が紫式部ということで、千年に渡って読み継がれてきた『源氏物語』を題材にした舞が多く披露される。
構成は、第一景「置歌」、第二景「多賀大社梅花香(たがたいしゃばいかのかおり)」、第三景「夕顔垣根納涼」、第四景「葵上」、第五景「須磨明石」、第六景「大原野神社紅葉彩(おおはらのじんじゃもみじのいろどり)」、第七景「雪景色鷺舞(ゆきげしきさぎのまい)」、第八景「歌舞練場桜揃(かぶれんじょうさくらぞろえ)」。紅白が対比される背景や衣装が多い。
曜日によるローテーション制で、今日は「三番」の第2組が出演する。立方は1組と同じだが、囃子と長唄、浄瑠璃の人員が異なる。
客席には比較的多くの外国人が詰めかけている。
「都をどりはー」「ヨーイヤサー」の掛け合いで始まる、浅葱色の衣装を纏った芸舞妓達による「置歌」。祇園甲部歌舞練場は花道が左右に1本ずつ、計2本あるのが特徴で、花道1本の春秋座や南座では不可能な対比の構図が出来上がる。
第二景では、今年の恵方である東北東にちなんで、都の東北東にある多賀大社が長寿の神ということもあって背景に選ばれたそうである。
『源氏物語』より「夕顔納涼」と「葵上」、「須磨明石」。このうち、光源氏が登場するのは「須磨明石」だけだが、「須磨明石」は昭和30年に谷崎潤一郎の監修、猪熊兼繁の構成・考証、吉井勇の作詞、山田抄太郎と富崎春昇の作曲によって制作されたもので、他の景とは少し趣が異なるようである。竜神が登場して雷を起こすのだが、多様な照明が用いられる。
「葵上」は能「葵上」を改作したもので、六条御息所の生き霊が能舞台にはないセリを使って現れる。
「大原野神社紅葉彩」。大原というと三千院や寂光院で有名な左京区の北寄りにある大原を思い起こしがちだが、大原野は大原とは全く別の現在の西京区にある地名で、大原野神社は桓武天皇の長岡京在位期間に奈良の春日大社から勧進された歴史ある社である。春日大社同様、藤原氏の氏神を祀る社で、藤原氏一族に女の子が生まれると、中宮、皇后の位を得られるよう一族で祈願に訪れたという。中宮彰子の行啓に従い、紫式部も彰子の父親である藤原道長らと共に大原野神社を参詣したことがあり、『源氏物語』にも大原野御幸の場面が存在する。
「鷺娘」に由来する「雪景色鷺舞」。白の衣装で統一した芸妓達が雪を背景に舞う。雪は吉兆、鷺は神の使いに例えられているそうである。
「歌舞練場桜揃」。祇園甲部歌舞練場と桜が背景となっている。祇園甲部歌舞練場は国登録有形文化財に指定されているため、勝手に改修は出来ず、内装にもなるべく元の部材を用いるようにしたそうである。なお、八坂女紅場学園の祇園女子技芸学校は新築され、小劇場も併設されるようになったそうである。
都をどりの繁栄と存続を願って、出演者総出による舞台と花道を使った舞が行われた。
念願の本拠地での150回記念公演ということもあり、芸舞妓の舞も総じて可憐で、京都の春を代表する催しとして恥じない出来となっていた。
祇園甲部歌舞練場の桜も満開だったが、より多くの桜の競演を求めて、帰りは花盛りの建仁寺の境内を横切って、大和大路から祇園四条駅へと向かった。
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