コンサートの記(838) リオ・クオクマン指揮 京都市交響楽団スプリング・コンサート2024
2024年4月7日 京都コンサートホールにて
午後2時から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団スプリング・コンサートを聴く。
今回の指揮はマカオ出身のリオ・クオクマン。京響とは4度目の顔合わせとなる。
現在、マカオ管弦楽団の音楽監督・首席指揮者、香港フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者、マカオ国際音楽祭プログラム・ディレクターなどを務めるリオ・クオクマン。香港演芸学院を出た後でアメリカ東海岸に留学。ニューヨークのジュリアード音楽院、フィラデルフィアのカーティス音楽院、ボストンのニューイングランド音楽院でピアノと指揮を学び、2014年にスヴェトラーノフ国際指揮者コンクールで最高位を獲得。2016年まで、ヤニック・ネゼ=セガンの下でフィラデルフィア管弦楽団の副指揮者を務めている。
ピアノも達者であり、京響の定期演奏会では、「ラプソディ・イン・ブルー」のピアノ弾き振りなども行っている。
オール・フレンチ・プログラムで、ベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」、プーランクのオルガン協奏曲(パイプオルガン独奏:桑山彩子)、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」(パイプオルガン独奏:桑山彩子)が演奏される。
今日のコンサートマスターは泉原隆志。フォアシュピーラーに尾﨑平が入る。
ベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」。切れ味と推進力が心地よい演奏で、各楽器の音色も輝かしく、純度も高い。全体的に溌剌とした印象である。
プーランクのオルガン協奏曲。単一楽章による作品だが、3部に分かれており、実質的にはオーソドックスな協奏曲と変わりない。
弦楽5部とティンパニによる編成である。
オルガン独奏の桑山彩子は、広島市のエリザベト音楽大学と同大学院を経て渡仏。リヨン国立高等音楽院を審査員一致のプルミエ・プリを得て首席で卒業。高等音楽学国家免状を取得している(ヨーロッパでは国家からの免状を得ないとプロの演奏家になれないところも多い)。第6回ゴットフリート・ジルバーマン国際オルガンコンクールで優勝。現在は、エリザベト音楽大学非常勤講師、京都カトリック河原町教会オルガニストなどを務めている。
桑山はステージ上でリモートでのパイプオルガン演奏。舞台下手端、すり鉢状にせり上がっていくステージの最上段に第二演奏台を置いての演奏である。
豪壮な響きでパイプオルガンが鳴ってスタート。この主題は第3部で形を少し変えて戻ってくる。
「パリのモーツァルト」とも呼ばれるプーランク。フランス六人組の中でも最も有名な作曲家だが、旋律や音色が洒落ており、第3部には、パリの街角をプーランクがウキウキと歩く姿が見えるようなチャーミングな場面も出てくる。
京響は生真面目な演奏で、音色にもう少し洒脱さがあると良かったのだが、技術は高い。
ティンパニが活躍する曲で、演奏終了後、ティンパニ奏者の中山航介が喝采を浴びた。
サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」。サン=サーンスの作品の中で、「動物の謝肉祭」と並んで最も有名な曲である。MOVIX京都の映画予告編では、この曲の第1楽章第1部の展開部が宝石店のCM曲として使われている。
2楽章からなるという異色の交響曲だが、それぞれの楽章が2部に分かれており、4楽章の伝統的な構成と見なすことも出来る。なお、重要な役割を果たすピアノデュオは、佐竹裕介と矢野百華が受け持つ。
リオと京響は、この曲の神秘的な雰囲気を上手く浮かび上がらせ、フォルムも適切で格好いい。
表情の描き分けも巧みで、厳かな場面はそれらしく、落ち着いた箇所はニュアンスたっぷりに、爽やかな部分は薫風が吹き抜けるように奏でられる。
桑山のパイプオルガンとの息もピッタリで、春の初めに相応しい生気溢れる演奏となった。
| 固定リンク | 0
コメント