観劇感想精選(459) 広田ゆうみ+二口大学 別役実「舞え舞えかたつむり」京都公演@UrBANGUILD
2024年4月23日 木屋町のUrBANGUILDにて観劇
午後7時30分から、木屋町のUrBANGUILDで、広田ゆうみ+二口大学の公演「舞え舞えかたつむり」を観る。作:別役実、演出:広田ゆうみ。広田ゆうみと二口大学による二人芝居である。ライブハウス(イベントスペース)での上演であるが、満員御礼となっている。
「舞え舞えかたつむり」は、昭和27年に起こった「荒川放水路バラバラ殺人事件(巡査バラバラ殺人事件)」を下敷きにした一種の心理劇である。刑事ものであるが登場人物が二人に絞られているというのが特徴。
出てくるのは小学校の教師である井上富美子(ふみこ。演じるのは広田ゆうみ)と富美子の旦那が務めていた板橋区の志村警察署(実在する)に所属する刑事(二口大学)である。富美子は大阪の出身という設定であるが、一部を除いて大阪弁や関西風のアクセントは出ない。
七段飾りのひな人形が舞台の真ん中にしつらえられている。五人囃子の一人が欠けているが、その理由は後に語られる。
J・S・バッハの無伴奏チェロ組曲第1番プレリュードが流れてスタート(無伴奏チェロ組曲が流れるのは、別役による指示である)。井上富美子は着物姿で登場する。実は3月も中旬になった頃が舞台であり、ひな飾りがあるのはおかしいのだが、富美子本人の言動も不可解である。母親(シカという名前)や弟(あきらという名前)を呼ぶのだが、二人が出てくることはない。また独り言も多い。
荒川でバラバラになった遺体が発見されたという事件概要は録音された影アナで流される。時代設定は、モデルとなった事件が起こったのと同じ昭和27年である。被害者の職業が志村警察署の巡査で名前が忠夫、犯人は志村第三小学校(実在する)で教諭をしていた妻で、富美子という名前や大阪出身というのも一緒。家族構成も一致している。
富美子は母や弟をしきりに呼ぶが、実は二人ともこの家にはいない。志村署に保護されているのだ。訪ねてきた刑事に富美子は、夫に借金があったこと、赤羽駅前の「みどり」というバーに勤めるスズキツネという女性と夫が愛人関係にあったこと、タジマというヤクザの男と付き合いがあることなどを述べるが、夫は借金はしておらず、スズキツネという女性は実在していない、タジマの正体はおそらくタシロという名のヤクザだと思われるが、タシロと井上巡査との間に接点は一切ないことを刑事は明かす。
上演時間約65分の中編であるが、溶暗の回数が多く、殺害の場面が再現されたり、遺体をバラバラにしている時の様子が出演者の声によって語られたりするなど、生々しいシーンも多い。遺体をバラバラにしているシーンでは、再びJ・S・バッハの無伴奏チェロ組曲第1番プレリュードが流れる。
「荒川放水路バラバラ殺人事件」の犯行動機は、夫の素行不良や今でいうDV(当時の名称で言うと「家庭内暴力」)というありふれたものであったが、「舞え舞えかたつむり」の犯行動機は、意外なものである。憎悪の感情の複雑さが描かれている。
富美子は風鈴の幻聴を聞き続けるのだが、この風鈴が犯行動機に関わっている。風鈴の音が聞こえなくなったことが殺意へと結びついたのだ。
タイトルの「舞え舞えかたつむり」は、風鈴から下がった短冊に書かれていた言葉だが、出典は「梁塵秘抄」のようである。
バラバラ殺人は猟奇的な動機のものを除けば犯人が女であることも多く、外資系企業に勤めるエリートサラリーマンをお嬢様大学卒で社長令嬢の美人妻が撲殺して遺体をバラバラにしたことで話題になった「新宿・渋谷エリートバラバラ殺人事件」(犯人は刑期を終えて最近、出所したはずである)もそうだが、体力的に劣る女性が遺体を運搬するにはバラバラにして部分部分を軽くして運ぶしかないというのもその理由の一つであり、「荒川放水路バラバラ殺人事件」も同様の理由で遺体がバラバラにされている。
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