これまでに観た映画より(332) 大映映画「舞台は廻る」(1948)
2024年5月2日
大映映画「舞台は廻る」を観る。1948年の作品。久生十蘭(ひさお・じゅうらん)の小説『月光の曲』が原作。脚本:八木沢武孝、監督:田中重雄。出演:三條美紀、若原雅夫、笠置シヅ子、齋藤達雄、潮万太郎、美奈川麗子、牧美沙、有馬脩ほか。演奏:淡谷のり子と大山秀雄楽団、クラックスタースヰング楽団(トランペットソロ:益田義一)。ダンス:SKDダンシングチーム。作曲:服部良一。
笠置シヅ子は歌手役で出演。「ヘイヘイ・ブギウギ(ヘイヘイブギー)」が主題歌になっているほか、「ラッパと娘」、「恋の峠路」、「還らぬ昔」など全4曲を歌っている。「ヘイヘイブギー」のリリースは1948年4月で「舞台は廻る」の封切りも同じ48年4月。ということで、やはりプロモーションを兼ねているようだ。「ヘイヘイブギー」は笠置シヅ子による本編の歌唱の後も女声コーラスなどによって歌い継がれ、延々と続く。
佐伯正人(齋藤達雄)と笠間夏子(笠置シヅ子)は元夫婦。離婚して、一人息子で8歳になる孝(有馬脩)は、佐伯が引き取ったが、夏子も孝を取り戻したいと考えている。
街頭で、佐伯と恋愛論を闘わせた雨宮節子(三條美紀)は、丹羽稔(若原雅夫)と婚約中で新居を探している。笠間夏子が出演するステージを観に来た節子は、横に座った孝が気になる。
箱根に住む節子。両親と兄と暮らしている。ある日、隣家からピアノの音が聞こえる。その家の主は、恋愛論を闘わせた相手、佐伯であった。佐伯は作曲家。笠間夏子のヒット曲は全て佐伯が作曲したものだった。
節子と孝の劇場での出会いのシーンで、笠置シヅ子演じる笠間夏子の「ラッパと娘」に続いて、淡谷のり子が大山秀雄楽団を従えて歌うシーンがある。
夏子と離婚してヒット曲が書けなくなる佐伯であるが、それから約10年後に笠置シヅ子を失うことで大ヒットに恵まれなくなった服部良一の未来を暗示しているようでもある。
箱根の家で友人を呼んで馬鹿騒ぎする佐伯。女の友人が「ラッパと娘」を歌って佐伯が怒るシーンがある。
夏子の楽屋をこっそり訪れた節子は、夏子と対面。孝について語り合う。
大阪弁の印象が強い笠置であるが、この映画では全て標準語で通している。
笠置シヅ子が歌うシーンが多く、ほとんど笠置シヅ子の歌を楽しむために作られたような映画である。
ヒロインの三條美紀は京都市の出身で、一応二世タレントということになるようだが、商業高校を出て大映の経理課にいたところ、社内上層部の目にとまり、演技課の女優へと転身したという変わり種で、その後長く活躍した。
若原雅夫は、新興キネマの俳優としてデビューし、大映を経て松竹に移って活躍するが、松竹を退社してフリーになった後はテレビに主舞台を移す。その後、病を得て引退している。現在の消息は不明。生きていれば100歳を優に超えている。
齋藤達雄は、若い頃にシンガポールで過ごしたという変わった人で、小津安二郎の映画の常連となり、1968年に65歳で死去している。
バイプレーヤーとして150本以上の映画に出演したという潮万太郎。91歳と長寿であった。
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