これまでに観た映画より(342) 「帰ってきた あぶない刑事」
2024年5月30日 新京極jのMOVIX京都にて
MOVIX京都で、「帰ってきた あぶない刑事」を観る。1980年代に社会現象を巻き起こした人気ドラマの劇場版第8弾。前回の作品から8年が経過している。
出演:舘ひろし、土屋太鳳、仲村トオル、早乙女太一、西野七瀬、杉本哲太、鈴木康介、小越勇輝、長谷部香苗、深水元基、ベンガル、岸谷五朗、吉瀬美智子、浅野温子、柴田恭兵ほか。監督:原廣利。脚本:大川俊道、岡芳郎。
「あぶない刑事」は私が小学校から中学生の頃に日本テレビ系で放送されていた連続ドラマで、まさに世代である。他の刑事ドラマと違って、謎解きなどは重視されず、渋い格好良さを持った刑事二人がとにかく拳銃をぶっ放すという豪快さと、お洒落な街・横浜を舞台にした洗練された雰囲気、ブッチ・キャスディ&サンダンス・キッドをモチーフにしたような軽妙なやり取りなどを特徴としたバディものであり、刑事ものにありがちな「人情」などの湿っぽさがないのも特徴であった。
当時の横浜には、みなとみらい地区はまだ出来ておらず、ランドマークタワーもない。エンディングロールに流れる赤レンガ倉庫は今でこそ飲食店や展示スペースとなっている観光地だが、当時は廃墟で、「近づくのは危険」とされていた。当時と今とでは横浜のイメージも大分異なると思われるが、山下公園、港の見える丘公園、馬車道、元町、中華街などは当然ながら当時もあり、東京のベイエリアの再開発がまだ進んでいなかったということもあって、「気軽に海を見に行けるお洒落な街」として人気があった。東京ではなく異国情緒溢れる横浜を舞台にしたこともこの作品の成功に大いに寄与していると思われる。
今では日本を代表する俳優の一人となっている仲村トオルであるが、「あぶない刑事」第1シリーズが初の連続ドラマ出演で、この時はまだ専修大学文学部に通う学生(専大松戸高校からの内部進学)であった。撮影のために卒業式には出られなかったため、撮影現場で卒業証書を授与される場面がメイキング映像に入っていたことを覚えている。
今回も、オープニングテーマはシリーズドラマの時と同じ舘ひろし作曲のフュージョン風のものが用いられており、エンディングテーマとして第2シリーズのエンディングだった舘ひろしの「翼拡げて」の2024年版が流れる。
さて、元刑事の「セクシー大下」こと大下勇次(柴田恭兵)と「ダンディー鷹山」こと鷹山敏樹(舘ひろし)の二人は、横浜港署捜査課を定年退職し、二人でニュージーランドに渡って探偵事務所を開いていたが、自己防衛のためにやむを得なかったとはいえ、盛大なやらかしを行ってしまい、ニュージーランドの探偵免許を剥奪され、横浜に戻って「タカ&ユージ探偵事務所」を開くことになる。交通課にいた真山薫(浅野温子。ドラマのラストカットは必ず彼女であった)は二人を追ってニュージーランドに行くが、今は行方不明だそうである。映画は観客のために、鷹山と大下が横浜港の埠頭でこれまでの経緯を説明する場面から始まる。
時が経ち、若手刑事だった町田透(仲村トオル)も高層ビル化された横浜港署の捜査課長になっている。ちなみに透の「とろい動物」というあだ名は現場で柴田恭兵がつけたもので、「飯を食べるのが遅かった」というのがその理由である。仲村トオルは人と食事をすると早い方なのだが、柴田と舘は異様に早いらしい。
透の部下は更に若く、エースといえるのは女性捜査員の早瀬梨花(西野七瀬)だ。若い女性刑事がエースというのも時代の流れを感じさせる。
鷹山は港で、ある女に目がとまる。ステラ・リーという女(吉瀬美智子)で、横浜の裏社会に通じる劉飛龍(リュウ・フェイロン。岸谷五朗)と共に車に乗り込んだ。
横浜の新興会社、ハイドニックが業績を上げている。若手社長の海堂巧(早乙女太一)の父親は、「あぶ刑事」ファンにはお馴染みの暴力団・銀星会の会長であり、大下と鷹山に殺害されていた。巧は二人に恨みを持っている。海堂は、「横浜は(東京特別区を除く)都市としての人口が日本一なのに、生産力は(人口2位の)大阪市の3分の2に過ぎない」として、これを覆すべくカジノの誘致を進め、劉と繋がる。横浜市は大阪市より人口は約100万人多いが、大阪市は面積が主要都市の中では最も狭く、周辺の都市の人口を合わせると横浜よりも上になる。また横浜は昼間人口より夜間人口の方が多く、産業都市でもあるが、ベッドタウンの要素の方がより強い街でもある。
タカ&ユージ探偵事務所に最初の依頼人が訪れる。永峰彩夏という若い女性(土屋太鳳)で、失踪した母親の夏子を探して欲しいという依頼だった。ホームページを見て来たという。夏子は以前、横浜のクラブでシンガーをしていたが、鷹山とも大下とも関係を持っており、二人とも彩夏が「自分の娘なのではないか」と色めき立つ。
かつて港署の「落としの中さん」と呼ばれ、今は情報屋をしている田中(ベンガル)に話を聞く鷹山だったが、現在の夏子の情報は得られない。
探偵として捜査に出る二人。横浜港署まで出向いてかつての後輩である透にも情報を求める。透がお偉いさんになっても、二人との関係は余り変わらないのが微笑ましい。透は二人が「あぶない」ことをしないよう、早瀬に監視命令を出す。
横浜では最近、殺人事件が多発しており、その背後に海堂がいるのではないかという疑惑が浮上する。透は神奈川県警が動いていないことを不審に思うが、海堂は政治家など多くの権力者の弱みを握っており、うかつに手が出せない。
やがて鷹山は夏子を見つけ出す……。
激しいアクションと銃撃が売りの「あぶない刑事」。二人とも年を取り、探偵という設定ということでどうなるのかと思ったが、柴田恭兵は草野球にのめり込んでいるためか、走るシーンでも疲れた素振りを見せることはない。銃撃に関してはある裏技が使われる。
柴田恭兵も舘ひろしもプライベートでは白髪にしているが、今回は役作りのため、「白髪だけど染めてはいます」ということが分かる髪で登場。老いても格好良さを失わないのは流石俳優である。
岸谷五朗は、大河ドラマ「光る君へ」でも中国語を喋るシーンがあったが、同じ中央大学出身である上川隆也とは違い、外国語のセリフを話すのは得意ではないようである(ただし「光る君へ」ではそこそこ上手く喋れたのに、「もっと下手にして下さい」と言われたとのこと)。今回は中国人役だけにもう少し頑張って欲しかった。
若手女優のイメージだった土屋太鳳ももう29歳(映画上での設定は24歳)。今は女優の旬の時期も延びており、松本まりかのように30代でブレークする女優がいたり、40代でもヒロインになれたりするが、「あぶない刑事」第1シリーズの頃は、浅野温子がーー彼女は既婚者で子持ちということもあったがーー20代後半でもう「そこそこベテラン」であった。女優が花盛りなのは20代までという空気があり(作家の村上龍が「20代以外は女ではない」と平気で言っていた時代である)、今とは大分事情が異なっていた。
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