これまでに観た映画より(341) 「関心領域 THE ZONE OF INTEREST」
2024年5月27日 京都シネマにて
京都シネマで、アメリカ・イギリス・ポーランド合作映画「関心領域 THE ZONE OF INTEREST」を観る。監督・脚本:ジョナサン・グレイザー。出演:クリスティアン・フリーデル、ザンドラ・ヒュラーほか。音楽:ミカ・レヴィ。原作:マーティン・エイミス。音響:ジョニー・バーン&ターン・ウィラーズ。ドイツ語作品である。
第76回カンヌ国際映画祭グランプリ、英国アカデミー賞非英語作品賞、ロサンゼルス映画評論家協会賞作品賞・監督賞・主演賞・音響賞、トロント映画批評家協会賞作品賞・監督賞、米アカデミー賞国際長編映画賞(元・外国語映画賞)・音響賞などを受賞している。
ドイツ占領下のポーランド領アウシュヴィッツにあった強制収容所の隣に住んでいたナチス親衛隊中尉一家、ヘス家の日常を描いた作品である。アウシュヴィッツ強制収容所の直接的な描写は一切ないが、遠くからなんとも言えない声や音がヘス家の中まで響いてきて、目に見えない惨劇を連想させる。音響のための映画とも言えるだろう。
アウシュヴィッツ強制収容所との対比を出すために、意図的に何気ない日常が中心に描かれており、隣で何が起こっているのかについては、登場人物の多くが関心を持たない。ドラマとしては面白いものとは言えないだろうが(実際、いびきが響いていた)、それが狙いであると思われる。実際にアウシュヴィッツで撮られた映像は理想郷をカメラに収めたかのように美しい。
主人公のルドルフ・ヘス(クリスティアン・フリーデル)は、アウシュヴィッツ強制収容所の隣に住み、収容所の所長をしているが、近く異動になる予定である。出世であるが、単身赴任する必要があり、妻子がアウシュヴィッツの家で暮らすことが出来るよう取り計らってくれるように頼んでいる。ヒムラー、アイヒマン、ヒトラーなどのナチスを代表する人物達の名前が登場するが、彼らが画面に登場することはない。なお、ルドルフ・ヘスは実在の人物で、アウシュヴィッツ強制収容所の所長をしていた頃の告白遺録『アウシュヴィッツ収容所』を遺しており貴重な史料となっているようである。
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