これまでに観た映画より(349) 「つぎとまります」
2024年10月28日 京都シネマにて
日本映画「つぎとまります」を観る。客席数が一番多いシネマ1での上映である。京都府亀岡市を舞台としたご当地映画であり、公開直後は京都シネマに人が押し寄せたようで、公式ホームページに「ご入場いただけない場合がある」旨が記されていたが、日が経つにつれて集客数も落ち着いたものになってきたようだ。
京都市立芸術大学美術学部出身の若手クリエイター、片岡れいこ監督作品。これが長編映画3作目である。脚本:青木万央。文化庁「関西元気圏」参加事業となっている。上映時間70分の中編。
主演:秋田汐梨。出演:川合智己、三島ゆり子、渋谷哲平、梶浦梶子、黒川英二、清井咲希、佐渡山順久、三木葉南、森下稜稀、三浦康彦、宮島寶男、黒巌大五郎ほか。
主演の秋田汐梨を始め、京都出身者が多いようで、綺麗な京言葉が話される。
保津川美南(ほづがわ・みなみ。秋田汐梨)は、新卒で本命の京阪京都バス亀岡営業所を受ける。「日本一のバスの運転手」になることが夢で、すでに大型自動車免許も取得している。
亀岡生まれの美南だが、現在は両親の転居先である広島暮らし。だが、バスの運転手になるならどうしても生まれ故郷の亀岡市が良いと、亀岡まで面接を受けに来たのだ。
ちなみに面接の場面で、おそろしくセリフ回しの拙い重役役の人が出演しているが、おそらく俳優ではなく、本物の京阪京都バスの重役さんなのだと思われる。
内定を貰い、研修を受けることになる美南。まずは無人のバスを運転して感覚を養う。指導するのは千代川ヒカル(梶浦梶子)だ。最も古いタイプのバス(三菱ふそうエアロスター。通称「3500」。1998年式)で訓練を行うことになった美南。ある日、見覚えのあるバス運転手を見掛ける。美南が関西に住んでいた頃、大阪府能勢町の引っ越し先から亀岡の小学校までバス通学する必要があり、その時に運転していたバスの運転手、沓掛(川合智己)だった。ちなみに沓掛は以前、京都市立芸術大学のキャンパスがあった場所の地名である。
バスの路線を覚えるのに苦労する美南。自分でも「頭良くないからなあ」と嘆くが、自分の足で歩いたり走ったりして路線を覚えることにする。ただこの行為も先輩からは「変わっている」と言われる。
続いて、実際に客を乗せての研修。先輩運転手で15年目のベテランである湯野花男(黒川英二)が補佐としてつく。バス好きの広田広道(三浦康彦)や元バスガールの鹿谷マチ子(三島ゆり子)が常連客となる。余談であるが、バスガールを主人公にした映画に石井聰亙監督の「ユメノ銀河」という作品がある。夢野久作の「少女地獄」を原作とする映画で、とても良い出来なのだが、主演女優がその後、盛大なやらかしをしてしまったため、観る機会は少ないかも知れない。
難所を湯野の代理ドライバーで交わすシーンなどもあるが、美南も徐々に成長していく。
正直、上手い俳優は出ていないし(セリフはちゃんと言えているが、間などが一流の俳優などと比べると拙い)、ストーリー展開も、人物設定も、台詞回しも、カメラワークもありきたりで、優れた映画とは呼べないかも知れない。ただ京都のローカル映画と考えれば、これはこれで味があり、愛着の持てる作品となっている。少なくとも京都市民である私は好感を持った。おそらく千葉市民のままだったら全く評価しないだろうが。
これが映画初主演となる秋田汐梨は、美人と言うよりもどちらかというと親しみの持てる顔立ちで、ドラマや舞台での主演経験もすでにあり、事務所も強いところで、多くを望まなければ結構良いところまで行けそうな力はあるように感じる。
亀岡の新名所であるサンガスタジアム by KYOCERAなども登場し、京都サンガF.C.のunder15の選手達が客役で出るなど、つい最近生まれた亀岡らしさも盛り込まれており、京都府民にはお薦め出来る映画である。
なお、土居志央梨が永瀬正敏とW主演した「二人ノ世界」が「虎に翼」の好評を受けてだと思われるが再上映されることになり、現在、予告編が流れているのだが、上映終了後に、若い女性二人組が、「よね! よね! よねさんや!」と興奮気味に語ってた(土居志央梨の「虎に翼」での役名が山田よね)。
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