これまでに観た映画より(354) 河合優実主演「ナミビアの砂漠」
2024年11月18日 京都シネマにて
京都シネマで、「ナミビアの砂漠」を観る。山中瑶子第1回長編監督作品。出演:河合優実、金子大地、寛一郎(かんいちろう)、新谷(しんたに)ゆずみ、中島歩(男性)、唐田えりか、渋谷采郁(しぶたに・あやか)、澁谷麻美(しぶや・あさみ)、倉田萌衣(くらた・もえ)、伊島空(いじま・くう。男性)、堀部圭亮、渡辺真起子ほか。名前が読めない人と男だか女だか分からない人が多い。
カンヌ国際映画祭国際映画批評家連盟賞受賞作品である。
映画界では名を知られていたが、一般にはほぼ無名に近かった河合優実であるが、今年はテレビドラマに立て続けに出演してブレイク。2024年に最も知名度を挙げた女優となった。
また、何の情報も入れずに観たため、いきなり唐田えりかが出てきてビックリする。映画ではすでに出演OKとなっているようだ。ただテレビの地上波ではまだ自粛状態のようである(BSには出ているらしい)。彼女も千葉県出身の女優で、顔は割と好きな方であるが、性格的には余り近づきたくないタイプである。この人は若いのに計算高さが顔に出てしまっている。
先に書いておくが、下系の話や場面が多く出てくるので、その手の映画が苦手な人は避けた方がいい作品である。また嘔吐シーンなども出てくるので、そういった場面が苦手な人も観ない方が良いと思われる。
変わった趣向の映画で、主人公のカナ(河合優実。苗字はミヤマであるが、どのような字なのかは分からない。「三山」などの場合は全国的な苗字、「深山」の場合は千葉県固有の苗字である)が最初から出てくるのだが、このカナが何者なのかがなかなか分からない。学生時代の女友達のイチカ(新谷ゆづみ)と会い、かつての同級生のチアキが自殺したという話を聞かされるのだが、この話はその後のどこにも繋がっておらず、やはりカナの詳しい事情は分からない。次第にカナが複数の男性と付き合い、そのうちの一人と同棲していることが分かってくる。年齢はかなり後の方になって21歳であることが明かされる。タイトルも話が大分進んでから表示される。変わった映画である。カナは同棲相手を乗り換えている。
ストーリーらしいストーリーはなく、ナミビアの砂漠が舞台になることもない。砂漠はカナ達の荒涼とした心象風景のことだと思われる。先行きが見通せない作品でもある。
カナが脱毛エステのスタッフとして働いていることが分かる。この手のスタッフで正社員というのはほぼないのでアルバイトと思われたが、遅く出掛けて早く帰ってくる、また簡単にクビになるため、やはりアルバイトであることが分かる。口調は丁寧だが、心は全くこもっておらず、好きで仕事にしている訳でもないようだ。男にもてるので割と気楽に過ごしているようである。
ただ、このカナ、かなり暴力的な性格で、彼氏としょっちゅう殴り合いの喧嘩になる。出来ることなら近づきたくないタイプである。
ワンカットの長回しが多いのが特徴。リハーサルを何度も重ねて演劇的に撮影していることが察せられる。暴力シーンもワンカメラワンシーンかカメラ2台で撮られることが多いが、かなり危ない動きや場面も見られるので、何度もリハーサルは重ねているものと思われる。ただそのために、段取りが良すぎて吉本新喜劇の喧嘩の場面に見えてしまったりもする。
カナが階段を転がり落ちるシーンがあるのだが、あれは河合優実が実際に落ちているのだろうか。普通ならスタントマンを使うところだが。男優ならスタントマン並みのアクションをこなす人もいるが、河合優実の運動神経については何の情報もないので今のところはよく分からない。
河合優実は、かなり個性的な女優である。何といっても影が濃く、同じタイプの日本人女優を思い浮かべることがほとんど出来ない。歌手兼俳優の人でも中森明菜や山口百恵まで遡らないと見当たらない。薄幸が似合う若手女優はいる。メジャーどころだけでも福原遥や浜辺美波は薄幸な役がピッタリくる。ただ河合優実は薄幸ともまた違う。顔も声も可愛い系なのだが、何か暗いものを引き摺っているような感じである。他にいないタイプ(古川琴音はちょっと似てるかな)なので、今後も次々に仕事は舞い込むものと思われる。
悪い映画ではないと思う。謎を残したままストーリーが展開していき、最後は中国語の「听不懂(聞き取って理解することが出来ない)」=「分からない」を使って暗喩的に終わる。
ただ、まともな人が余り出てこないということもあり、もう一度観たいかというと「もういいかな」とも思う。
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