コンサートの記(876) ガエタノ・デスピノーサ指揮 京都市交響楽団特別演奏会「第九」コンサート 2024
2024年12月28日 京都コンサートホールにて
午後2時30分から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団特別演奏会「第九」コンサートを聴く。指揮はガエタノ・デスピノーサ。
コロナの時期には海外渡航が制限されたということもあり、半年近くに渡って日本国内に留まって様々なオーケストラに客演したデスピノーサ。指揮者不足を補い、日本のクラシック楽壇に大いに貢献している。入国制限により来日不可となったラルフ・ワイケルトの代役として大阪フィルハーモニー交響楽団の年末の第九も指揮した。
イタリア・パレルモ出身。ヴァイオリン奏者としてキャリアをスタート。ザクセン州立歌劇場(ドレスデン国立歌劇場)のコンサートマスターとして活躍し、当時の音楽監督であったファビオ・ルイージの影響を受けて指揮者に転向。2012年から2017年までミラノ・ヴェルディ交響楽団首席客演指揮者を務めている。歌劇場のオーケストラ出身だけにオペラも得意としており、新国立劇場オペラパレスでの指揮も行っている。
独唱は、隠岐彩夏(ソプラノ)、藤木大地(カウンターテナー)、城宏憲(テノール)、大西宇宙(おおにし・たかおき。バリトン)。合唱は京響コーラス(合唱指導:小玉洋子、津幡泰子、小林峻)。
今日のコンサートマスターは泉原隆志。ヴィオラの客演首席には湯浅江美子、チェロの客演首席には水野優也が入る。ヴァイオリン両翼の古典配置での演奏だが、ソリストと合唱団はステージ上に設けられたひな壇状の台の上で歌うため、ティンパニは舞台上手端に設置され、そのすぐ横にトランペットが来る。
ステージにまず京響コーラスのメンバーが登場し、次いで京響の団員が現れる。独唱者4人は第2楽章演奏終了後に下手からステージに上がった。
デスピノーサは譜面台を置かず、暗譜での指揮である。頭の中に入っているのはベーレンライター版の総譜だと思われる。
弦楽が音の末尾を切るなど、H.I.P.を援用した演奏。アポロ的な造形美が印象的である。京響の明るめの音色もプラスに働いている。
第2楽章では最後の音をかなり弱めに弾かせたのが特徴。またモダンティンパニを使用しているが、この楽章のみ先端が木製のバチを使って硬めの音で強打させていた(ティンパニ:中山航介)。
第3楽章は比較的速めのテンポを採用。ロマンティシズムよりも旋律の美しさを優先させた演奏である。
通常はアルトの歌手が歌うパートを今回はカウンターテナーの藤木大地が担うが、音楽的には特に問題はない。女声の方がやはり美しいとは思うが、たまにならこうした試みも良いだろう。定評のある藤木の歌唱だけに音楽性は高い。
端正な演奏を繰り広げるデスピノーサだが、たまに毒を忍ばせるのが印象的。美演ではあるが、綺麗事には留めない。第4楽章では裁きの天使・ケルビムの象徴であるトロンボーンを通常よりかなり強めに吹かせており、人間が試される段階に来ていることを象徴しているかのようだった。
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