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2025年1月23日 (木)

これまでに観た映画より(366) 周防正行監督作品「舞妓はレディ」

2014年9月30日 新京極のMOVIX京都にて

午後3時5分から、MOVIX京都で、日本映画「舞妓はレディ」を観る。周防正行監督作品。待望の周防監督によるミュージカル映画である。京都の花街を舞台にした作品の構想は、「シコふんじゃった。」や「Shall We ダンス?」より前から持っていたそうだが、どうしても作りたいというほどではなく、「オーディションで、気に入った子が見つからなかったらやらない」とも思っていたそうだが、上白石萌音(かみしらいし・もね)を見て、「いけそうだ」と確信し、説明ゼリフも音楽で処理すれば何とかなるということでミュージカル映画となった。ちなみに周防正行監督にミュージカル映画を撮るよう進言したのは故・淀川長治である。淀川長治は、「Shall We ダンス?」を観て、周防に「あなたなら日本製のミュージカルが撮れる」と太鼓判を押したそうだが、その後、周防がプロデュース業に専念してしまったということもあって、淀川長治は周防監督のミュージカル映画を観ることなく他界している。

周防監督は、花街のセットを作ることを条件としたそうで、主人公が働く下八軒という架空の花街は、全てセットで出来ている。京都の名所でも勿論、撮影が行われていて、京大学として出てくるのは京都府府庁舎旧本館、その他に随心院が実名で舞台となっているが、随心院に巨大な三門はなく、三門だけは知恩院のものが映っている。元・立誠小学校や平安神宮神苑の泰平閣でも撮影が行われている。


出演:上白石萌音、長谷川博己(はせがわ・ひろき)、田畑智子、草刈民代、渡辺えり、竹中直人、濱田岳、高嶋政宏、小日向文世、妻夫木聡、田口浩正、徳井優、渡辺大、松井珠理奈(SKE48)、武藤十夢(むとう・とむ。AKB48)、彦摩呂、高野長英、草村礼子、津川雅彦、岸部一徳、富司純子ほか。音楽:周防義和(周防正行の従兄弟)。


架空の花街である下八軒(京都で一番北にある花街・上七軒のもじりである)が舞台。下八軒では、舞妓が不足しているという状態が続いたままである。百春(田畑智子)は、もうすぐ30歳なのに、下に舞妓がいないということで舞妓に据え置きのままであり、芸妓になれないことに不満を抱いていた。百春は密かに実名で「舞妓さん便り」というブログを書いている。下八軒の置屋券お茶屋・万寿楽(ばんすらく)に西郷春子という女の子(上白石萌音)が訪ねてくる。春子は、鹿児島弁と津軽弁の混ざった奇妙な言葉で、舞妓になりたいと訴える。万寿楽の女将である小島千春(富司純子)は、春子を追い返すが、花街の言葉を探求するというフィールドワークのために下八軒に通い詰めいている、京大学の言語学者、京野法嗣(きょうの・のりつぐ。長谷川博己)は、鹿児島弁と津軽弁を操る春子に興味を示し、千春に自分が後見人になるから春子を舞妓見習いとして欲しいと頼み込む。そして京大学の研究室で、春子に美しい京言葉を話すための指導を行う。下八軒の男衆(おとこす)である、青木富夫(竹中直人。ちなみに竹中直人は、周防組では毎回のように「青木」という苗字で登場する)は雪深い津軽にある春子の家を訪ねる。春子の両親(「それでもボクはやってない」の加瀬亮と瀬戸朝香が写真のみで出演している)は春子が幼い頃に他界しており、春子は津軽出身の祖父と薩摩出身の祖母に育てられたため、津軽弁も鹿児島弁もネイティブとして喋ることが出来るのだ(ただこの部分に春子の描かれない影を見いだせない人は映画以前に人間がわかっていないと思う)。

鹿児島弁と津軽弁がなかなか抜けず、言葉だけでなく、舞や謡にも苦労する春子であったが……。


ミュージカル映画「マイ・フェア・レディ」を意識したタイトルであり、「マイ・フェア・レディ」の名ナンバーの一つである「スペインの雨は主に平野に降る」が、「京都の雨はたいがい盆地に降るんやろか」というパロディとして使われている。

京都の花街の映画は、五花街(北から、上七軒、先斗町、祇園東、祇園甲部、宮川町)のどれかに協力を得て撮影を行うのであるが、今回はセットを組み、どこの街でもない花街というファンタージーとして描かれる。ただ、祇園祭や、をけら詣りが出てくるので、少なくとも上七軒は名前は掛かっているが地理的には違う(ただし上白石萌音は上七軒に泊まり込みで役作りを行っている)。下八軒は京都タワーが見える場所でもある。ただ、大阪国際空港は実際は伊丹にあるのだが、通天閣がバックにあるため、やはり全てが実在のものとは違うパラレルワールドである。

竹中直人と渡辺えりが「Shall We ダンス?」の時の格好で出てきたり(当時の渡辺えりは、渡辺えり子という名前)、妻夫木聡が赤木裕一郎(赤木圭一郎と石原裕次郎を混ぜた名前)という名前のスターとして出ていたりと遊び心満載の映画である。

花街の影の部分も当然ながら描かれるが、周防監督は基本的に笑いの人であるため、陰湿なものになることはない。


私は、日本シナリオ作家協会が出している月刊誌「シナリオ」を読んでいて、今日の映画である「舞妓はレディ」も脚本(採録シナリオとあったため、見たものと聴いたセリフを文字としてページに落としたものであり、周防監督の決定稿であるが、周防監督自身が書いたものではないものである)を読んでから出掛けたのであるが、京都の花街には遊びに行ったことはないがよく通っている場所であるため、画面を通して伝わってくるものはやはり本来の花街とは異質のものだということがわかる。この映画は脚本を読まずに観に出かけた方が良かったようである。

音楽はとても良くて楽しめる。帰りに河原町にある清水屋で「舞妓はレディ」のサウンドトラックを購入した。

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