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2025年1月14日 (火)

コンサートの記(879) 平野一郎 弦楽四重奏曲「二十四氣」京都公演@大江能楽堂

2024年12月10日 京都市役所そばの大江能楽堂にて

午後7時から、押小路通柳馬場東入ル(京都市役所のそば)にある大江能楽堂で、平野一郎の弦楽四重奏曲「二十四氣」の演奏を聴く。二十四節気を音楽で描いた作品。演奏は石上真由子(いしがみ・まゆこ。第1ヴァイオリン)、對馬佳祐(つしま・けいすけ。第2ヴァイオリン)、安達真理(ヴィオラ)、西谷牧人(にしや・まきと。チェロ)。全員、タブレット譜を使っての演奏であった。

能楽堂での演奏ということで色々と制約がある。まずファンヒーターは音が大きいというので本番中は切られるため、寒い中で鑑賞しなくてはいけない。客席もパイプ椅子や座布団などで、コンサートホールほど快適ではない。音響設計もされていないが、能楽堂は響くように出来ている上に空間も小さめなので、弦楽四重奏の演奏には特に支障はない。

弦楽四重奏で、四季よりも細分化された二十四氣を描くという試み。24の部分からなるが、24回全てで切るわけにはいかないので、春夏秋冬の4つの楽章で構成されるようになっている。
作曲者の平野一郎のプレトークに続いて演奏がある。能舞台の上には白足袋でしか上がってはいけない(他の履き物で上がってしまうと、板を張り替える必要があるため、膨大な金額を請求されることになる)ので、全員、白足袋での登場である。白足袋で演奏するクラシックの演奏家を見るのは珍しい。

 

平野一郎は、京都府宮津市生まれ(「丹後國宮津生」と表記されている)の作曲家。京都市立芸術大学と同大学大学院で作曲を専攻。2001年から京都を拠点に作曲活動を開始している。
プレトークで、平野は二十四節気は中国由来だが、すでに日本独自のものになっていることや、調べ(調)などについての説明を行う。

 

「二十四氣」であるが、現代曲だけあって、ちょっととっつきにくいところがある。繊細な響きに始まり、風の流れや鳥の鳴き声が模され、ピッチカートが鼓の音のように響く。弦楽器の木の部分を叩いて能の太鼓のような響きを生んだり、ヴァイオリンが龍笛のような音を出す場面もある。旋律らしい旋律は余り出てこないが、ヴィオラが古雅な趣のあるメロディーを奏でる部分もある(チェロのピッチカートで一度中断される)。ヴァイオリンであるが、秋に入ってからようやくメロディーらしきものを奏でるようになる。
秋には楽器が虫の音を模す場面もある。チェロが「チンチロリン」(松虫)、ヴァイオリンが「スイーッチョン」(ウマオイ)の鳴き声を模す。
冬の季節に入ると、奏者達が歌いながら奏でるようになり、足踏みを鳴らす。面白いのは四人のうちヴィオラの安達真理のみ左足で音を鳴らしていたこと。どちらの足で出しても音は大して変わらないが、おそらく左足が利き足なのだろう。
演奏時間約70分という大作。豊かなメロディーがある訳ではないので、聴いていて気分が高揚したりすることはないが、日本的な作品であることは確かだ。四人の奏者の息も合っていた。

演奏終了後に、安達真理がお馴染みの満面の笑みを見せる。彼女の笑みは見る者を幸せにする。

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