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2025年1月17日 (金)

これまでに観た映画より(364) コンサート映画「Ryuichi Sakamoto|Playing the Orchestra 2014」

2025年1月15日 新京極のMOVIX京都にて

MOVIX京都で、コンサート映画「Ryuichi Sakamoto|Playing the Orchestra 2014」を観る。WOWOWの制作で、WOWOWやYouTubeLiveで流れたものと同一内容である。ただ映画館で観ると迫力がある。来場者にはオリジナルステッカーが配られた。

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2014年4月4日、東京・溜池のサントリーホールでの公演の収録。オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団で、コンサートマスターは三浦章宏である。

2013年にも、東京と大阪で「Playing the Orchestra」公演を行っている坂本龍一。オーケストラはやはり東京フィルハーモニー交響楽団。ただこの時は栗田博文が指揮者を務めており、「八重のテーマ」とアンコール曲の「Aqua」のみ坂本自身が指揮を行っている。坂本自身は出来に引っかかりを覚えたようで、翌年に自身の指揮による「Playing the Orchestra」公演を行うことを決めたようである。
なお、私自身は「Playing the Orchestra 2013」は、大阪・中之島のフェスティバルホールで聴いており、それが新しくなったフェスティバルホールでの初コンサート体験であった。だが、2014には行っていない。行っておけば良かったのかも知れないが。

坂本龍一は指揮とピアノを担当。指揮だけの時もあれば弾き振りを行う場面もある。ピアノの蓋を取り、鍵盤が客席側に来る弾き振りの時のスタイルでの演奏。弦楽はドイツ式の現代配置である。
東京フィルハーモニー交響楽団は通常のフル編成のオーケストラの約倍の楽団員を抱えているため、坂本龍一も「昨年の公演にも参加してくれた方もいれば初めての方もいる」と紹介していた。

曲目は、「Still Life」、「Kizuna」、「Kizuna World」、「Aqua」、「Bibo no Aozora(美貌の青空)」、「Castalia」、「Ichimei-No Way Out」、「Ichimei-Small Happiness~Reminiscence」、「Bolerish」、「Happy End」、「The Last Emperor」、「Ballet Mèchanique」(編曲:藤倉大)、「Anger-from untitled 01」、「Little Buddha」。アンコール曲目「Yae no Sakura(八重の桜)」メインテーマ、「The Sheltering Sky」、「Merry Christmas Mr.Lawrence(戦場のメリークリスマス)」

「The Last Emperor」の後半と、「Merry Christmas Mr.Lawrence」の後半以外はノンタクトでの指揮である。坂本は左利きだが、指揮棒は右手に持つ。

マイクを手にトークを入れながらの進行。坂本は指揮の訓練は受けていないため、本職の指揮者に比べると細部の詰めが甘いのが分かるが、自作自演であるため、作曲者としての坂本龍一が望む音が分かるという利点もある。

「Ichimei」は、市川海老蔵(現・十三代目市川團十郎白猿)主演の映画の音楽だが、レコーディング初日が2011年3月11日だったそうで、東京のスタジオも揺れたそうだが、坂本は録音機材などが倒れないよう支えていたという話をしていた。

「Bolerish」は、ブライアン・デ・パルマ監督の映画のための音楽であるが、デ・パルマ監督から、「ラヴェルの『ボレロ』に限りなく近い音楽を作ってくれないかと言われ、それをやったら作曲家として終わる」と思ったものの、結局、似せた音楽を書くことになったようである。ラヴェル財団からは本気で訴えられそうになったそうだ。「古今東西、映画監督というのはわがままな人種で」と坂本は放す。別に本物のラヴェルの「ボレロ」を使っても良かったような気がするのだが。ラヴェルの「ボレロ」は今は著作権がグチャグチャなようだが。

「Ballet Mèchanique」は、「藤倉大君というロンドン在住のまだ三十代の現代音楽の作曲家なのですが」「子どもの頃からYMOや僕の音楽を聴いて育ったそうで」自分から編曲を申し出たそうである。
この「Ballet Mèchanique」は、坂本本人のアルバムにも入っているが、元々は岡田有希子に「WONDER TRIP LOVER」として提供されたもので、その後に中谷美紀に「クロニック・ラヴ」として再度提供されている。歌詞は全て異なる。セールス的には連続ドラマ「ケイゾク」の主題歌となった「クロニック・ラヴ」が一番売れたかも知れない。

「Little Buddha」は、ベルナルト・ベルトルッチ監督の同名映画のメインテーマであるが、何度も駄目出しされて、書き換えるたびにカンツォーネっぽくなっていったことを坂本が以前、インタビューで述べていた。「彼(ベルトルッチ監督)は自分が音楽監督だと思っているから」とも付け加えている。ベルトルッチとは、「ラストエンペラー」、「シェルタリング・スカイ」、「リトル・ブッダ」の3作品で組んでいるが、最初の「ラストエンペラー」も「1週間で書いてくれ」と言われ、それは無理なので2週間にして貰ったが、中国音楽のLPセットを聴いた後で作曲に取りかかり、不眠不休で間に合わせたそうである。オーケストレーションまでは手が回らなかったので他の人に任せている。

「八重の桜」は同名のNHK大河ドラマのテーマ音楽であるが、オリジナル・サウンドトラックにはなぜか指揮者の名前がクレジットされていない。指揮をしたのは尾高忠明である。

「戦場のメリークリスマス」の次にといっても過言ではないほどの人気曲である「シェルタリング・スカイ」であるが、個人的な思い出のある曲で、高校2年の時の芸術選択の音楽の授業でピアノの発表会があり、私は作曲されたばかりの「シェルタリング・スカイ」(ピアノ譜はなかったが、エレクトーンの雑誌に大まかな譜面が載っており、細部は適当にアレンジした)を弾いて学年1位になっている。ピアノを独学で弾き出してから間もない頃のことである。

説明不要の「戦場のメリークリスマス」。1989年のクリスマスイブ、テレビ朝日系の深夜枠で、坂本龍一がピアノで自作曲を弾くというミニコンサートのような番組をやっていた。それを録画して見たのが、「ピアノをやってみたいなあ」と思ったきっかけである。

 

演奏の出来としては、坂本がピアノに徹した2013の方が上かも知れない。曲目も2013の方が受けが良さそうである。ただ歴史的価値としては、自身で全曲指揮を行った2014の方が貴重であるとも思える。

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