コンサートの記(907) 東京バレエ団×九州交響楽団 チャイコフスキー バレエ「眠れる森の美女」@びわ湖ホール
2025年6月14日 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール大ホールにて
午後2時から、びわ湖ホール大ホールで、東京バレエ団の「眠れる森の美女」を観る。演奏を、福岡市からはるばる遠征してきた九州交響楽団が務めるということでも話題の公演。
びわ湖ホールで管弦楽を伴う舞台公演を行う際には、京都市交響楽団がよくピットに入るが、京響は明日、ロームシアター京都メインホールで本番がある。同じくびわ湖ホールのピットの入ることが多い日本センチュリー交響楽団も今日はロームシアター京都メインホールで本番。大阪フィルハーモニー交響楽団は今日も定期演奏会開催。大阪交響楽団も17日に公演予定ということで、関西のオーケストラの日程が詰まっているということもあるが、九州交響楽団も関西にマーケットとしての可能性を見出していると思われることから、思惑が一致したのだと思われる。
チャイコフスキーの三大バレエの一つに数えられる「眠れる森の美女」。ただ三大バレエの中では上演される機会は最も少ない。録音も一番少ないはずである。有名曲が少ないということもあるが、「眠れる森の美女」なので、ヒロインのオーロラ姫が長時間眠っている必要があり、見せ場が限られるということもある。第3幕はそれを補うように結婚を祝う舞踏会が延々と続き、「眠れる森の美女」をまとめたシャルル・ペローの他の童話の主人公、長靴をはいた猫や赤ずきんちゃんと狼なども登場して賑やかであるが、ストーリー自体は第2幕で終わっているということでもある。
今日はプロローグ付の上演で、上演時間は2度の休憩を含め約3時間である。
指揮は井田勝大(いだ・かつひろ)。東京学芸大学音楽科を経て同大学院修了。まずオペラの指揮者として研鑽を積み、その後、バレエの指揮者として国内外の多くの団体で指揮台を任されている。バレエデビューが熊川哲也のKバレエカンパニーの「白鳥の湖」であったことから、現在では、K-COMPANY TOKYO及びシアターオーケストラトウキョウの音楽監督を務めている。バレエとコンサートを約半々で振っているようだ。今日はノンタクトでの指揮。
原振付:マリウス・プティパ、新演出・振付:斎藤友佳理。舞台美術:エレーナ・キンクルスカヤ。衣装デザイン:ユーリア・ベルリャーエワ。
出演:安村圭太(国王フロレスタン14世)、奈良春夏(王妃)、沖香奈子(オーロラ姫)、宮川新大(デジレ王子)、鳥海創(カタラビュット、式典長)、柄本弾(悪の精カラボス)、榊優美枝(リラの精)ほか。
プロローグではオーロラ姫の誕生と、それを祝福する人々と精霊の洗礼式の踊りが繰り広げられる。だが、式に招かれなかった悪の精カラボスが王宮に押しかけ、姫が糸紬に刺されて16歳で死ぬだろうと予言する。
時は一気に飛び、今日で16歳になるオーロラ姫が現れて、第1幕開始。王宮では誕生日を祝うパーティーが行われている。4人の王子が、オーロラ姫に求婚。だが宴席に怪しげな客が紛れ込んでいる。悪の精カラボスとその弟子(もしくは分身)である。弟子もしくは分身から花束を受け取ったオーロラ姫は、その中に仕込まれていた糸紬に指を刺されて倒れてしまう。リラの精が、死から一段弱めた眠りへとオーロラ姫を誘い、王宮の人々もみな眠りに落ちる。
第2幕の前半は、それから100年後のデジレ王子の物語。何しろヒロイン達が全員眠ってしまっているので一人で何とかするしかない。森で狩りに興じるデジレ王子だが、やがてリラの精に導かれ、王宮へ。全員が眠っているので何事かと戸惑う王子だったが、オーロラ姫の美しさに惹かれて口づけする。こうして眠りから覚めたオーロラ姫と宮廷の人々。オーロラ姫は恩義に報いてデジレ王子と結婚することに決める。
そして第3幕の結婚式の場となる。
舞台美術をロシア人が手掛けているだけあって、王宮風の雰囲気など見ごたえのあるセットとなっている。
九州交響楽団は、甘い音による立体的な音響が見事。ブラスにも威力がある。九州地方にフルサイズのプロのオーケストラは九州交響楽団しかないため、オペラやバレエの公演となると九州交響楽団が起用される機会が多くなることが予想され、ピットにも慣れているのだろう。バレエ指揮経験豊富な井田の音楽づくりも神経が細部まで行き渡ったものであった。
東京バレエ団の踊りも可憐さと堅実さがあり、洒落た味わいにも富んだものであった。
チャイコフスキーの音楽も長靴をはいた猫が登場した時には猫の鳴き声を真似た旋律になるなど、ユーモアのセンスがある。また第2幕で交響曲第5番の第2楽章に似た旋律が現れるなど(両作品は同時期に書かれている)、単なる転用なのか両作品に繋がりがあるのか微妙なところである。
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