コンサートの記(909) 沖澤のどか指揮京都市交響楽団第701回定期演奏会
2015年6月19日 京都コンサートホールにて
午後2時30分から、京都コンサートホールで京都市交響楽団の第701回定期演奏会を聴く。今日の指揮者は、常任指揮者の沖澤のどか。
今日のコンサートマスターは泉原隆志、フォアシュピーラーに尾﨑平。今日のヴィオラの客演首席は大阪フィルハーモニー交響楽団の一樂もゆる。京都市交響楽団チェロ奏者の一樂恒(いちらく・ひさし)の奥さんで、今日は夫婦共演になる。
曲目は、G.レンツのヴァイオリン協奏曲「...to beam in distant heavens...」(日本初演。ヴァイオリン独奏:アラベラ・美歩・シュタインバッハー)、タイユフェールの小組曲、ラヴェルの組曲「マ・メール・ロワ」、デュカスの交響詩「魔法使いの弟子」
前半に現代音楽、後半にフランスものが並ぶ。沖澤のどかは現代音楽を積極的に演奏しており、またフランスものは得意としている。
G.レンツのヴァイオリン協奏曲「...to beam in distant heavens,,,」。溶暗してスタート。まずハンマーによる一撃で開始。照明が光度を増して行く。バッハの「シャコンヌ」を模したような旋律がソロで奏でられるが、奏者は舞台上におらず、袖で弾いているようである。3階席の後方にはバンダが設置されており、それとのやり取りもある。
ソロヴァイオリンの音色がスピーカーから聞こえるようになると、アラベラ・美歩・シュタインバッハーがステージ上に現れ、タブロイド譜を見ながら演奏を始まる。
神秘的な作風であり、サンダーマシーン、カウベルなど特殊な打楽器が打ち鳴らされるが(それでいながらティンパニは編成に加えられていない)。ヴァイオリンの超絶技巧と、オーケストラの迫力が聴きどころとなる。沖澤は時折指揮棒を持った右手一本による指揮を見せ、なかなか格好良い。
ジョルジュ・レンツは、1965年、ルクセンブルク生まれの作曲家。1990年にオーストラリアのシドニーに移住し、当地で活躍している。このヴァイオリン協奏曲は、2023年4月28日、アラベラ・美歩・シュタインバッハーの独奏によりシドニーで初演されている。
現代楽曲風であるが、難解になりすぎず、スケールの大きな作品である。アラベラ・美歩・シュタインバッハーの独奏も初演者だけに自信に溢れたものであった。
演奏の終了は再びの溶暗によって告げられる。
アラベラ・美歩・シュタインバッハーのアンコール演奏は、クライスラーのレチタティーヴォとスケルツォカプリース。
憂いと愉悦に満ちた楽曲を的確に演奏してみせる。
後半。タイユフェールの小組曲。フランス六人組の紅一点として、女性作曲家の中では知名度は高めのタイユフェール。ただ、作品が演奏される機会は多くない。
パリの街を自転車で駆け抜けていくような、あるいはメリーゴーランドに乗って中空を走る気分のようなご機嫌な曲である。エスプリ・クルトワ全開。
沖澤の指揮する京響は前半とは打って変わって、乳白色の軽みを帯びたような洒落た音に変わる。どうやってこのような響きを生み出しているのかは不明だが、ヴァイオリンなどはハーモニーの作り方を変えているようである。
ラヴェルの組曲「マ・メール・ロワ」も繊細にして浮遊感のある音で高雅な絵巻を作り上げていく。泉原隆志のヴァイオリンソロも美しい。
なお、終曲である第5曲の前にトラブルがあったようで、沖澤と泉原が何か話している。泉原が「行きましょう」という態度を示して終曲の演奏に突入したが、どうやら記録用ビデオのエラー音が鳴っていたようである。私の席からは聞こえなかった。
デュカスの交響詩「魔法使いの弟子」。デュカスは自分に厳しい人で寡作。破棄してしまった作品も多いとされる。ある日、友人がデュカスを訪ねた時、「破棄しようと思っている曲がある」と見せたところ、友人から、「こんな素晴らしい曲を捨てたりしたら駄目だよ」と言われ、初演することにする。それは「ラ・ペリ」という代表作となる作品であった。
「魔法使いのお弟子」は、ディズニーアニメ映画「ファンタジア」でミッキーマウスが魔法使いの弟子を演じていることで有名だが(そのためにアニメ映像の著作権はまだ切れていない)、そうでなくても描写力はかなり高く交響詩として優れた作品である。
沖澤は京響からイメージ喚起力豊かな音を引き出し、爽快な演奏となった。
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